中国で物権法ができたら??その2番外

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 ■今回は、物権法大論争に裏にある路線闘争について紹介しようと思ったのだけれど、ちょっと寄り道。 4日に行われた全人代(国会に相当)の前触れ会見で、物権法についても、全人代側の見解がでたので先に紹介しておく。全人代事務局次長の姜恩柱氏は、記者の質問にこんなふうに答えていた。

 ■CCTV記者の質問: 物権法のように7回も審議を経た法律は前代未聞。なぜそんなに物権法はもめるのか?共通認識を得るのはまだ困難では?この法律は人民にどんな影響が出るのか?

姜恩柱: 七回も審議したのは確かに我が国の立法史上の記録を塗り替えた。物権法がこんなに審議を必要としたのは三つの理由がある。

 ①この法律は財産関係の基本法律であり、各階層の錯綜した利益と関係あり、社会主義基本経済制度堅持と最広大人民群衆の切実な利益保護などとも関連のある重大問題で、政治性、政策性も非常に強く、社会各界が非常に注目しているため、高度に重視しなければならなかった。

 ②各方面から多くの意見を求め真摯に研究する必要があり、特に、いかに全面的に正確に社会主義基本経済制度を体現、保護すべきか、いかに国有財産保護力を強化すべきか、いかに国家、集団、個人の物権の平等保護原則を実施すべきか、いかに正確に、現段階の農村における党の基本政策を体現するか、いかに大衆の生活中のもっとも関心のある重大問題の規範を実現出来るか、繰り返し、研究論証する必要があった。

 ③全人代常務委は立法の質量を重視している。審議プロセスで、全文を公布(第3次草案)し、一万以上の意見が寄せられた。百回以上の座談会がひらかられた。常務委員会、人代、専門学者、大衆の知恵を集結し、共通認識を得るのには一定のプロセスは必要だった。

 目下、各方面は物権法草案の基本原則と主要規定について、認識の一致の趨勢にあり、草案はすでに成熟し、先の全人代常務委会議で全人代に提出ことが決まった。この大会の審議で草案はさらに完成すると信じている。

 物権法は、私人の所有権、業主の建築物区分所有(マンションとか)、
土地請負経営権、宅地使用権などの保護を規定。彼らの財の創造力を刺激し、社会の調和を推進する。例えば、物権法では住宅建設用地の使用権は満期後、自動的に継続されることになり、満期後の心配をする必要がなくなった。また、物権法は不動産党規費を面積、価格に比例してはならず、人民の不動産登記時の負担を減少する。また我が国の物権担保制度(質入れ)をさらに完成させ、当事者の書面協議をえて、企業、個人商店、農業生産経営者が、現有あるいは将来有する生産設備、原材料、半製品、産品、建築中の建築物、船舶、飛行機を抵当にしていいし、抵当に見合う基金割り当てを受け取っててよい。(土地使用権担保には触れていないみたいだね)

 新華社記者: ネット上で、憲法における社会主義公共財産の神聖不可侵の規定と公民の合法私有財産の不可侵の規定は同じではなく、前者は神聖、後者は神聖という記述がない。これは物権法草案の平等保護原則が憲法と合致しないということでは?

 姜: 物権法草案は各種利益関係におよび、意見を求めるプロセスでそういう意見が出てくるのは正常なことだ。しかし、違憲という意見は偏りがあると思う。まず、憲法の公共財産の神聖不可侵規定は、民法、経済法、行政法、刑法の共同任務である。物権法は民法の角度から、現実生活の国有財産の深刻な侵害に対し、五つの方面から国有財産保護を強化している。

 ①法律が規定する国家所有財産は即ち、全民所有であり、草案で規定するいずれの国有財産も、帰属を不明確にし国有財産の流失をもたらすことを防止する。
 ②法による国家所有の不動産と動産は、いかなる単位(公的機関、組織)、個人も所有権を取得することができない。
 ③国家所有の財産は法律保護を受け、いかなる単位、個人による占有、奪取、個人分配、破壊などを禁止する。
 ④企業改革、合弁分立、企業売買などのプロセスで、低価格譲渡、内輪での山分け、かってな担保あるいは他の方式での国有資産損失には、法的責任を追わねばならない。
 ⑤国有資産監督管理職責の機関と職員は、職権乱用、怠慢による国有資産損失について法的責任を負わねばならない。

 こういった草案の規定は十分、社会主義公共財産保護の憲法精神を体現し、重要な現実的意義を備えている。

 ■模範解答、というところでしょうか。やはり、まだ土地の質入れは、明確にはふれていないようだ。だが明確に禁止する文言もいれていないのでは?反対派の学者は、これが農村の土地(使用権)私有化が進むと主張しているが。

 ■ところで、物権法とは別のところで、興味深い動きがある。3日に開幕した中国人民政治協商会議全国委員会会議で、戸籍制度改正に関する献策が、公安省にだされ、公安省がこれを承諾した、というのだ。いよいよ、戸籍法制定に照準が合わされてきた。以前のエントリーで触れたが、物権法に絡む土地制度改革、つまり農地(使用権)の私有化は、土地法と戸籍制度の改正が伴うはず。戸籍法制定を言い出した、ということは、胡錦濤政権は、社会主義新農村建設の方向性として、集団化ではなく、土地私有化に舵取りをとる心づもりではないか、という気がしてきた。ただ、この戸籍法改正も、ものすごい反発が予想される。

 ■前回エントリーでのコメントにもあったが、下部構造が上部構造を決定するという方式で、

経済実体の変化→
社会制度の改革→今ココ
政治制度の変革、

と、胡錦濤政権は改革推進を考えているのかもしれない。ただ、胡耀邦の悲劇を目の当たりにしている彼は、ものすご~~く慎重で、あ、ヤバイと思うと急激に左旋回したりするのか??胡錦濤政権のスローガン、社会主義的和諧社会、という文言に含まれている深意を見極めるには、もう少し観察が必要だ。

 

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「中国で物権法ができたら??その2番外」への1件のフィードバック

  1.  こういうのがすらすら書けるとは、退職したらきっとどっかの大学の先生になれますよ。
    >【中国を読む】「物権法」で農民救えるか
    にもあるけど、「全文は公開されていない」ってのがすごいね。

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