中国報道のあした5

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  ■今後5年の国家文化発展計画綱要

  報道統制強化と娯楽充実で愚民化?

  でもそれで、コンテンツ産業振興って

  無理でしょ。

  愚民に文化は創造できない

 

 

 ■中国共産党および国務院(内閣)は13日に十一次五カ年計画(2006~2010)時期の国家文化発展計画綱要を公布した。これは今後五年の間の文化政策方針を48項目にわたってまとめたものだが、よくよく読めば、報道統制とイデオロギー管理強化をもりこんだかなりキツーイ内容である。紙面化した記事ではちょっとしか紹介できなかったので、ここで改めて、この綱要が何を意味するか考えたい。

 

 ■柱は3本だと思う。
①新聞・メディア規制・管理強化を通じての世論統制、イデオロギー管理強化

②農民への娯楽の充実

③映画、テレビ、ゲーム、アニメなどの国産コンテンツ産業振興。

 知的財産権保護とか、道徳文化向上とかごちゃごちゃもっともらしく書いてあるが、結局狙いは、新聞メディアのコントロール強化を通じて、国民の中にくすぶっている不満をいかに抑え、目をそらさせるか、という点にしぼっているみたいだ。

 ■今の中国は「小康社会(飢えないていどのそこそこのくらし)」が実現されたが、衣食たりると、いろいろモノを考えはじめ、自由を求めはじめる。で、そういう余計なことを人民に考えさせないために必要なのが、娯楽の充実なのだ。愚民政策の要は、いつの時代もパンとサーカスである。

 ■で、綱要だが、48項目もあってやたら長いので、まず一番気になる新聞メディアに関する部分だけ要約してみたい。


 ■「正確に世論を導くことを首位におき、新聞メディア建設を強化する。主流世論の積極的かつ健全な向上のために基礎固めし発展させる」

 「宣伝を主とし、世論を正確に導き、新聞宣伝の吸引力、感染力をたゆまず強化する」

 「党の主張を全面的に宣伝し、正確に群衆の願望を反映させ、その影響力を拡大する」

 「会議や指導者の同行の報道にあるような典型的な宣伝は改善し、重大テーマの宣伝報道を強化し、突発事件報道をより効果的に報道し、世論監督をうまくする」

 ■「(新聞メディアの)管理制度建設を強化する。業界の自律性を強め、有償報道(企業などから金をもらって宣伝記事を書くようなこと)を効果的に制止し、虚偽報道、低俗で不良な広告を制止する」。
 「党と人民の喉舌の性質を確保しつつ、(メディアの)体制を刷新し、収入分配と社会保障制度改革を推進する」

 「新聞集団改革を継続してうまくやり、大党報(人民日報など主要紙)の市場シェアを拡大させる

 「子紙・雑誌(人民日報社が出している独立採算性の京華時報など)の管理を強化し、子紙・雑誌を党の新聞、党の雑誌としての補足的役割につかう」

 「都市報・雑誌のコントロールと管理を強化し、新聞・雑誌の品位をあげる」

 ■「人民日報、求是雑誌、光明日報、経済日報など(の党報)の吸引力と影響力を増強させ、核心的競争力を向上させる」

 「新華社は国家通信社と世界的通信社としての影響力を発揮し、マルチメディア型データベースと経済ニュース基盤の建設を加速し、国内ニュース市場の占有率を確保し、海外ユーザーを開拓する」

 ■「新聞ネット建設を重点的に推進し、通信、ブログ、ニュースサイトサービスなどの領域を開拓し、全方位的な情報発信技術を調整し、ネットニュース事業の発展格式を完成させる」「ネットニュースサイトの健全な発展を促進し、法整備を完成させ、業界の自律と大衆の監督メカニズムを強化する。ネット情報の転載、非ニュースサイトの情報発信に規範を設け、市場メカニズムを構築する」

 ■新聞メディアについては、ざっとこんな感じである。目新しいのは、都市報の規制・管理強化を明確に表現している点だろう。都市報というのは、大衆の購読料と広告料で経営がまかなわれ、党からは一切の経済的支援を得ていない完全独立採算性の新聞である。具体的には南方日報報業集団の南方都市報、南方週末などだ。人民日報など党報は、全国の中央、地方政府機関が公費で購読しているが、都市報は読者が自分でお金を出して買う新聞。だから党の顔色より、読者の嗜好を向いた紙面作りをしている。

 ■「中国報道のあした2、3」で紹介したメディアの意識変化は、こうした都市報からおきたムーブメントだ。つっぱりすぎて、たびたび党中央宣伝部の怒りを買い、記者や編集者が拘束されたりもするのだが、それでもあきらめることなく都市報は報道の自由を求めている。今回、このきっつーい内容の綱要からうかがえるのは、今新聞メディア市場を席巻しているのは、ジャーナリズム意識にめざめはじめた都市報など新興新聞であり、党の喉舌の党報の部数はおちこみ、もはやその影響力が風前のともしび、という実情への、党中央の危機感だ。

 ■10日発布された新華社の外国通信社在中国配信記事管理弁法にしろ、13日のこの国家文化発展計画綱要にしろ、当局はあからさまな報道統制強化に走っているが、中国メディアの変化の潮流はもうはじまっている。これから、統制強化の力と自由を求める力のせめぎ合いは、いっそう激しく熱くなるだろうと思うと、メディアの動きからは目が離せない。

 

 ■さて、力ずくの統制で、大衆の支持の強い都市報などへの圧力がつよまって、都市報が、大衆の期待するような、一般市民の代弁者たりえなくなってくれば、きっと人々の不満やフラストレーションが溜まってくるだろう。

 

 ■だからなのか綱要は、公共文化事業・サービスへの投入強化を打ち出している。農村の「読書難、観劇難、映画鑑賞難、テレビラジオ視聴難」を基本的に解決し、都市と同様の文化権益を与える、というのだ。大衆に娯楽を、である。このあたりの、詳細は次のエントリーにしたい。(パワーぎれ)

 

「中国報道のあした5」への6件のフィードバック

  1. う~ん、朝から読み応えたっぷりでした。(早く仕事に行けと遠くから声が・・・)庶民の不満はさらに溜まって、大きな地すべりの基礎となっていくのでしょうね。
    追加記事に期待します。
    高速道路半額時間帯に追われる労働者は、帰ってきてから再々読いたしますです。

  2. 福島様
    中国がどこへ向かおうとしているのかが垣間見えるエントリーですね。最終的には現在の体制が崩壊へ向かう序曲・・・というより第1楽章か第2楽章に入ってきたような気がします。
    すでに一部でメディアの意識変化がおきている以上、力ずくで押さえ込むことは不可能ではないでしょうか?
    今朝のキリスト教弾圧を報じた福島様の記事も興味深く拝読しました。
    共産党王朝の断末魔の叫びのようにも感じます。
    「中国は『1984年』より酷い 言論封殺国家なり」はぜひ拝読したいと思います。毎月「正論」は確実に買っているのですが、「諸君」は買ったり買わなかったりです。
    これからはもうちょっと目次を精査するようにしなければ・・・。

  3. こんにちは。
    福島さん、有意義な情報をいつも有難うございます。
    日本産の美味しい物食べてパワーを蓄えて下さい。次回を楽しみにしています。

  4. nhac-toyotaさま:お仕事いってらっしゃいませ。今朝、続きをアップしました。ご笑覧ください。

  5. 小龍景光さま:私も力づくでおさえるには、もう無理な状況のように感じます。毛沢東が力ずくの思想統制を続けられたのは、やはり当時の中国が鎖国状況だったからでしょう。今の中国はこういう乱暴な政策を実行するには、国際化しすぎているのです。

  6. くぼたさま:いつも読んでくださってありがとうございます。きのうの夜は、名古屋出身のオーナーが経営する日本料理屋で、さんまの一夜干しをいただきました。中国ではさんまを食べる習慣がないので、きっと日本で水揚げされたものだと、信じているのですが。目黒のさんまだったりして。

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