テロ警戒、戒厳令五輪!③

Pocket
LINEで送る

スポンサードリンク

■柔道の谷亮子選手が日本に最初のメダルをもたらし、日本も五輪ムードにわいてきたかな。しかし、現地の北京では、五輪の祭典ムードとは裏腹に、鼓楼という人気観光地で五輪観戦の米国人旅行者が中国の地方からの陳情者?(香港筋による未確認情報)によって殺害され、自殺するという事件が発生。戒厳令五輪!といいながら、いろいろ、ザルな北京公安当局である。このほか、ニュージーランドのテレビ局リポーターが取材中、中国人に椅子をなげつけられた?とか。

■さらに10日午前2時半ごろには新疆ウイグル自治区のクチャ県で、警察や政府の建物をねらった数件の爆破事件があり、セキュリティーガード1人が死亡。警官2人と市民2人が負傷。爆破犯8人が逃亡中射殺され、2人が自爆、2人逮捕され、3人が逃亡中。爆破犯は少なくとも15人で車で近づいて、液体ガスタンクやパイプなどでつくった手製爆弾を車を公安施設や政府の商工委員会施設などになげつけた。警察は朝になって、逃げた爆破犯が市場の隅に隠れているのを発見。手製爆弾をなげて抵抗してきたので銃撃で対応したという。。新華社などが報じている。爆発は全部で12回とみられ、商店なども被害にあっている。爆発していない時限装置付き爆発物も数十みつかった。

■先日の国境警備隊をダンプと手榴弾でおそった2人組といい、ウイグル族不満分子VS警察・武装警察の戦いはなんか、地方やくざの抗争みたいな様相だ。こういう事態がつづくと、五輪後は、ひょっとすると公安当局の幹部が大量に、更迭されるかもしれない…。

■さて、北京の治安状況だが、先日、日中関係筋と雑談したところ、「五輪で治安はよくなっているはずだが、結局厳しいのは外国人管理であったり、メディアの活動や人権・民主化活動、宗教家に対する管理であったりで、〝管理〟というものが厳しくなったにすぎない」という意見だった。街には、赤いシャツや赤い腕章の治安ボランティア(居民委員会メンバーら)があふれており(公安当局発表では140万人もいるそうだ)、胡同の奥まで目を光らせている、というが、私の観察したところでは、彼らは目の前で、刃物を振り回す人をみかけても、それを取り押さえようとはしないだろう(できない、そういう訓練を受けているようには見えない)。

■北京は人が多いが、路上で強盗にあって頭から血を流して倒れていても、あまり通報したり、介抱したりしない。(あつまって、なんだなんだと野次馬にはなるが)。今年春節、北京在住の日本人女性が、市内の表通りで強盗にあって、ケガをして助けをもとめても、誰も助けてくれないという事件があった。これは日本にもいえることだが、社会全体の防犯意識はむしろ低くなっているのではないか。

■米国人旅行者殺害事件の犯行動機はまだ、わからないが、昨年に発生した天安門広場で白人女性が中国の地方出身者に殺害された事件では、逮捕された犯人は「社会に対する不満」を動機にあげていた。今年3月に西安で発生したオーストラリア観光バスジャック事件も、社会不満が背景にあったと、みられている。地方では、毎日どこかで暴動や官民衝突が発生しているが、それらは報道統制により報じられず、外国メディアは、そのウワサを聞いてもウラをとるのは苦労する。だが、外国人が被害にあえば、かくしておくわけにはいかないし、国際社会の注目もあつめて目立つ。だから、最近は、社会不満を訴えるために、外国人を狙う傾向があるのではなかろうか。そういう見方をいう人もいた。

■毒ギョーザ事件は、天洋食品が農薬混入現場の可能性が高いが、その背景にあるのがリストラなどに対する工場労働者の不満だとしたら、やはりその不満のはけ口のターゲットとして、日本人が狙われた食品テロ、という言い方もできるかもしれない。まだ、事件の真相ははっきりしていないので、これはあくまでもヨタ話としてきいてほしい。

■かつて、中国では外国人に対する犯罪は、中国人に対するものより厳しい処罰があたえられたので、外国人は比較的安全、守られている、といわれていた。とくに北京のように、いたるところに監視の目があり、武装警察などが配置されている場所では、外国人が安心してくらせる、といわれていた。しかし、昨今の犯罪は単に、物取りや個人的報復ではなく、社会に対する不満を訴える方法にすりかわってきている気がする(新聞の3面記事を読んでいてそう感じる)。

■中国人が地方で暴動や爆破事件を起こしても、あまりにも頻繁なので、いまひとつ話題性が持続しないが、さすがに外国人が巻き込まれると、外交問題に発展しかねない。そういう意味で、これからの中国は、外国人にとっても決して安全とはいえなくなってくるのではないだろうか。

■中国は、五輪の治安維持という名目のために、地方の陳情者を強制収容し、故郷に強制送還してきた。少数民族や人権活動家や弁護士ら市民は軟禁措置をとり、デモを起こしそうな不満分子は北京を五輪期間中離れるように警告。ときには問答無用に拉致して、脅しをかけてきた。しかし、そういう方法は人権問題になったり、庶民の当局に対する恨みを深くしたりして、本当の治安向上にはつながらないのではないか。治安悪化、社会不安定化の最大の理由が、社会不満、当局に対する不満であるなら、犯罪は犯罪として取り締まりつつ、その不満を緩和する根本的な政策改善を行わねばならないのではないだろうか。

■その方法のひとつは、きちんと不満を言葉で表明する機会を不満分子に与える、つまり言論、報道の自由ではないかと、私は思う。米国人旅行者殺害事件のせいで、「ほら、やはり地方からきた中国人はあぶない」と短絡的に考えたり、新疆の事件で「ウイグル族はあぶない」と考えたりして、彼らにたいする不用意な差別意識と弾圧肯定が外国人にまで広がらないことを願う。

「テロ警戒、戒厳令五輪!③」への22件のフィードバック

  1. 福島さん、お疲れ様です。今のところ日本のオリンピック熱は低いままだと思います。
    中国と北京オリンピックに対してはネガティブなイメージが積み重なっているのが一因だと思います。単に話題になりにくいんですね。好きの反対で無関心、というのがおおかたの態度でしょう。
    ただ、個人的には一番の原因は単純にメダルを掲げたヒーローが、まだいないという事だ思います。亮子さんは偉大なアスリートですが、彼女の戦績からして日本に火をつけるには金メダルでないと無理であったろうと思います。
    前回の水泳の北島さんのような選手が現れれば好転するかもしれませんね…。
    しかし中国は押さえ込みに失敗しましたね。運も悪かった。グルジアの開戦、アメリカ人の殺害、そのほか。でも、数千~数万人規模の蜂起はまだ無いし、選手に対する直接の危害もありません。一勝一敗という感じでしょうか。毎日ちいさな問題が起こり続けているので、日本人がこのオリンピックを美しい記憶としてとどめる事に対するハードルは日々上がっている感じですね。
    ともあれ、競技はみれないかもしれないけど、福島さんにとっては今が総決算のはず。記事も毎回たのしく読ませていただいております。がんばってください。

  2. 殺人といえば、つい三週間程前にカナダ人女性モデルがハイライズの自宅アパートに尾行して来た男に殺されていますね。この件は金が目当てだったようですが。この女性は上海に来てすぐだったようです。

  3. 福島香織様、毎日お疲れさまです。
    中国国内には漢族・ウイグル族・チベット族・各少数民族の中に中央政府に対して不満を持つ人々が居ます。漢族は永年「宗教は悪」だと教育されて無宗教になり、ウイグル族はイスラム教徒・チベット族は仏教徒が殆どでしょう。
    此処に自ずと弾圧抑圧に対する反抗爆発の仕方も宗教に依って違って来るでしょう。一つ言える事は中国人(漢族)は古代から人命尊重の習慣は無かった、それに加えて無宗教になってしまったから余計に扱いにくい。
    世界の人々はウイグル族、チベット族や弾圧されてる民工などを非難したり不用意に差別するよりも弾圧抑圧してる側を非難するでしょうから、その点は心配無用だと思います。
    其れよりも最近、福島さんの文章の歯切れが悪くなりました。私は四〇年以上の産経教信者で勿論福島ファンでもありますが、失礼ながらメディアの報道を100%
    信じたことはありません。「ヨタ話しとして」「裏を取ってない」「だろう」「?」等文末に不要です。堂々とご自分の所存を書いてください。
    もうすぐ「サヨナラ中国」ですが最後までご健康とご活躍を祈ります。

  4. 福島香織さん、いつも中国関連の情報をご提供いただきありがとうございます。毎回、興味深く拝見させていただいています。
    >今年春節、北京在住の日本人女性が、市内の表通りで強盗にあって、ケガをして助けをもとめても、誰も助けてくれないという事件があった。これは日本にもいえることだが、社会全体の防犯意識はむしろ低くなっているのではないか。
     
    「日本にもいえる」と話されていますが、この部分に関しては、反日マスコミの印象操作の影響を受けすぎかと思います。
    6月8日に秋葉原で発生した事件ではトラックにはねられた人を助ける為に駆け寄り介抱していた人が後ろから刺されたりもしています。
    かなり前の話になりますが新大久保駅で線路に落ちた酔客を助けようとして日本人と韓国人の二人が線路に降り電車にはねられた事件がありましたが、このときも「助けようとしたのは韓国人だけで他の日本人は見ているだけだった」という印象操作がされました。
    具体的に「日本人は困った人間を助けない」という事実があるのならともかく、こういった悪しき印象操作を助長するような内容はどうかと思います。

  5. To かぼちゃ魔法師さん
     列車のトイレに女性が公然とつれこまれてレイプされても、誰も助けず、通報もしなかったといったニュースがありましたね。恋人同士だったとおもった、という言い訳もあったようですが。知人の話をきくと、トラブルに巻き込まれたくない、という日本人は増えているように感じます。勇気をもって助けたりする人が逆ギレされ刺されたりする事件もあり、昔ほど、日本人も見知らぬ人を助けることは少なくなっている傾向にあるのではないですか。もっとも、どの国にもどの時代にも、身の危険を顧みずに人を助けたり介抱したりする人は必ずいるものですが、全体の傾向として、ということで。

  6. 福島香織 さん
    >列車のトイレに女性が公然とつれこまれてレイプされても
    それは、現場にでもいないとどうともいえないです。
    しかし、男女共同参画なんかの言い分を聞いていると、女は女で自分でなんとかしろと言いたくなります。襲われた米人は男が死んでますよね。でも、誰も誉めません。死に損ですか、そういうことなら見ぬ振りがまかり通ります。
    最後なのですから、おとなしめで過して、無事日本へ帰られるよう、願ってます。。。と書くと、逆に反対方向へ走ってしまいそう? w 無事のご帰還を。

  7. 内柴正人さん柔道男子66キロ級優勝おめでとう。
    ちょっと恥ずかしげな、けれど一瞬見せた晴れやかな表情、よかったです。

  8. 日本には十分言論の自由がありますが、それでも秋葉原無差別殺人事件が発生しましたね。言論の自由だけでは、不十分でしょう。

  9. To 福島香織さん
    北京五輪真っ最中でおいそがしい中、わざわざ返信ありがとうございます。
    言葉のあやで書いたのかな?と思ったのでつい突っ込みを入れてしまいました。私自身はその意見に必ずしも同意をするものではありませんが、返信を読むに、新聞記者としての様々な情報を下にそういう意見に至ったと言う事は理解できました。
    もう少し書きたい事もありますが、あまりコメント欄を汚すのも気が引けますし、福島香織さんには北京五輪とはあまり関係ないコメントへの返信に時間を取ってもらうよりも、より多くの北京五輪中の中国情報を発信してもらったほうが嬉しいので、続きは自分のブログの方に書いておきます。
     
    http://d.hatena.ne.jp/p_wiz/20080810/p5

  10. To gujinさん
    やっちゃいました!と、笑顔。よかったです。日本人の谷選手への期待はあまりにも大きいのでしょうが、結婚して出産して現役でいることは、普通の仕事でも大変なこと。まして体を使うアスリートで五輪でメダルをとるって、すごいとしかいいようがありません。スポーツの世界は結果勝負で、厳しいことをいう人もいるかもしれませんが、女性からみれば、ものすごく勇気を与えてくれる銅ですね。

  11. 福島さん:
    こんばんは。
    お久しぶりです。忙しさ故になかなかブログを見にこれませんでした。
    開幕式当夜は私も外にいましたよ。
    恐らく福島さんが居た歩道橋とは反対側の路上にいました。
    警察やら保安官やらがひたすらエラソーで煩くて、最後にはちょっとした小競り合いになりましたが、結局警察の方が折れて(50mぐらい?)後ろに下がってたりしました。ざまみろ。
    まぁ近くに外国人らしき記者(アジア系だから日本か韓国?)がいてカメラを回していたためかもしれませんが、やっぱ理屈云々より、騒げば勝ちですね、中国では。
    開幕早々襲撃事件ばかりで、北京市民として胃が痛い思いをしています。
    ちなみに中国国内では特に報道制限されていませんでしたが(ネットにも新聞にものってたし)、
    アメリカ以外のメディアをざっと見てみてみれば、どうも生き生きしていますね、みなさん。スポーツ報道よりも。
    各国の記者(とその読者)の喜ぶ顔が目に浮かぶようです。
    内心では「いいぞもっとやれ、記事になる」とか思ってんるんじゃないでしょうか。
    何人も死者が出ているのに、まるでかつての「9.11」事件後の一部の中国人
    みたいですね。
    当時は同胞として大変恥ずかしく思いましたが、どこの国でも、やっぱ嫌いな国にはみんな容赦しないんだなぁと思いました。
    福島さんは9月に帰任だそうで、もうすぐ中国ネタが読めなくなるのはとても残念です。
    日本にかえっても、是非その愛すべき毒気と嫌味が散りばめられた文章でブログを続けてください。楽しみにしています。
    では長々と失礼しました。
    中国最後の夏を、十分、体に気を付けて過ごしてくださいね。

  12. 福島香織さん
    >日本人の谷選手への期待はあまりにも大きいのでしょうが
    いちいちの言葉につっかかるようで、まことに申し訳ないのですが、そういう「期待」を作ったのはマスコミでしょ。母でも金、なんでも金とあおりたててきたその結果です。
    それを過大な期待を持ちすぎだなどと、マスコミに属する人に言われたのでは、日本人として立つ瀬がないですね。
    サッカーもそうですが、マスコミって異様なバカ騒ぎが大好きすぎと思います。

  13. To iza0315さん
    >日本には十分言論の自由がありますが、それでも秋葉原無差別殺人事件が発生しましたね。言論の自由だけでは、不十分でしょう。
    日本には人殺しの自由があります。だってオウムの麻原グループ、大量殺人してもまだ楽しく生きていますし、秋葉原殺人犯人だって精神異常、ストレスなの理由で容赦されるかも、、、

  14. >毒ギョーザ事件は日本人が狙われた食品テロ
    これ、当たっていると思いますよ。 中国の経営者は、リストラ、給与等待遇向上不可の理由を、「日本のお客の要求が厳しいから」と言って逃げますもん、必ず。

  15. 福島様
    野口記者拘束の件。
    続報、お願いします。
    お身体に危害は?
    機材とか没収されたりしていませんでしょうか?
    心配です。

  16. 福島様
    そうじゃないかと思っていた国でやっぱりそうかの事件。残念。
    庶民はtvの前が一番安全なようですね。
    この際、外国人は全て引き上げて中国国民と取材スタッフだけのオリンピックが一番安全かも。
    勿論記者さんの安全は自己責任ということで。仕事にリスクはつき物です(^^;
    まあこれは冗談で、安全には本当にお気をつけください。
    それとそちらではグルジア紛争の事はどのように報道されているのでしょうか。中露の関係を考え、個人的に注目していますので。
    近頃産経ニュースの彼方此方で福島様の署名記事を見かけます。
    仕事ですし最後の夏とは思いますが御自愛のほどを(^^)

  17. to:田用食品
    日本語を勉強してから出直して来い。
    あっ、来なくていいから。(w

  18. 福島記者
    > 最近は、社会不満を訴えるために、外国人を狙う傾向があるのではなかろうか…
    「情報伝達手段」としての異邦人排斥かぁ…嘗ての「日貨排斥」から最近の「カルフール排斥」のようなな大衆暴動は一定の制御装置(=煽動する組織)があるだけにまだ安心であるが、不満の鬱積しまくった人民の矛先が「異邦人」に向かう事の危険性は大きいでしょうね。
    嘗ての北清事変では先に人民の暴動->外国人殺害から国家による列強への宣戦布告までエスカレートして行ったわけですが、現代の中共の軍事力は余りに「厄介」に過ぎますからねぇ…ガス抜きの手段はやはり反日なのか!?

  19. 「テロ」の基本は「不安」と「恐怖」を煽ることで、その対象が民衆であれば政権の治安能力への不信に繋がり、末端の治安担当者であれば彼らの士気低下に繋がります。これって当事者でもない諸外国の人間には想像しづらいですが、とても効率的で効果的です(テロを肯定している訳ではありません)。
    彼らの多くは、国際的に力を保有している外国政権からの支持を当てにしていません。むしろ現状の国際政治体制への不信感が根底にあります。資源や経済的な利権が絡まない限り、国際政治は動かない事を身に染みて知っているからです。日本のオーム真理教のように外国勢力に利用されたバーチャルテロもありますが、その多くには虐げられ、奪われ、見捨てられた人々が背景にあり、テロ組織の多くは彼らを利用しています。
    解決への道は「人権」を利用して政治的・経済的な成果を得ようとする大国の政権担当者や、その軍事力に任せテロ組織を撲滅するのではなく、地道な報道機関の努力や、教育を中心として、テロ頻発地域の人々が社会参加できる機会を提供するしかないのではないでしょうか?
    報道機関には、ただテロが発生した事実だけではなく、くどいくらいに常にその背景を伝えて行って欲しいと願っています。

福島香織 にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">