中国報道のあした 続番外編

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 ■中国報道について、じぶんなりにまとめてみようと、思いたったはずなのに、なんか横道にそれています。ちょっと、報道がらみのこねた。 

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 ■中国の新聞では昔から、「外国の中国報道はピントがはずれている!けしからん」といった海外報道批判はあったけれど、最近そのニュアンスが変わってきた気がする。吃緊の記事で面白かったのは、8月8日の国際時事週刊紙「環球時報」。産経新聞への愛にあふれていて、何度も読み返してしまった。愛の感じた所に?をつけながら、簡単に要約(ちょっとつぶやき風)してみると…。

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(要約はじめ)?

「中国報道は、事実と乖離しすぎのものも」(みだし)(署名なし)
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 ■いつのころからか、外国メディアの中国報道がやたら増えた。ニュースに「中国」の名がのるだけで、読者の関心を引くからだ。しかし、報道内容は中国人が聞けば、奇怪で、実際とぜんぜん違う感じてしまう。中国脅威論とか、中国が鉄鋼を消費しすぎだから外国でマンホールを盗んで中国で売ろうとする犯罪が増えているとか、なんか悪いことがあるとぜんぶ中国のせいにされてしまうみたいだ…。

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 ■たとえば日本の石原慎太郎東京知事は一貫して中国に対し非友好的でまるで幻想小説を書くように、いいたいほうだいだ。7日付産経新聞(名指し?)の「いかに備えるか」(注・『日本よ』)の文章では、北朝鮮が日本を軍事攻撃しようとする背後に常に中国の存在があるとか、日本は中国の覇権主義に組み込まれうるとか、日本は眠れる獅子で核武装すべきだ、なんて言っているし…。

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 ■さらには「中国経済発展は早いだけで質が悪く、バブル崩壊は遅くとも五輪後にやってくる、そのときは中国は内部分裂をさけるため軍事的冒険主義に走るだろう、我々には準備の時間があまり多くない」だとか。

 ■(中略)石原は中国に来たことないくせに、よく言うよ。心根が曲がっているとしかおもえない。

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 ■それに石原の言っていることはぜんぜん新鮮味ない。あの米国華僑(注・ゴードン・チャン)の本と同じ内容で、すで西側メディアがさんざん報道した。あの本は中国が五年もたない、といっているけど、もう五年たって、今じゃ笑い話になっているじゃないか。(中略、朝鮮日報、インド速報への批判があり、またまた産経新聞が名指し?)

 ■日本で発行部数が非常に多い「産経新聞」(それはほめすぎ?)の古森義久記者について有名な笑い話(古森さん有名?)がある。古森がある講演の場で、「日本のODAで創られた北京の地下鉄2号線が開通したが、記者(古森)が一時間以上建国門駅で待っても客がこなかった」「日本の国民の税金を使って利用者のいない地下鉄をつくるとは、日本政府は何をやっているんだ」って怒ったんだ。北京人なら地下鉄がいつも混んでいることを知っているのにね。

 ■最近、米国メディアが、ロサンゼルス上空の大気汚染物質の四分の一が中国から飛んできているたものだと、報道したけれども、これも国家環境保護総局は事実じゃない、と公式に発表した。こんなふうに、中国関係の海外報道ってどうしてデタラメが多いんだろ?

 ■中国国際問題研究所の専門家がいうには、西側のいくつかの国は中国の発展に脅威を抱いて、中国が自分たちの国際地位を争うライバルになるんじゃないかと思っているだ。こういった中国に関するデタラメ報道は三種類ほどに分類できる。①中国の発展は持続せずに、政治変改や経済崩壊がおきる②中国が軍拡に走る③中国は法治のないアウトロー国家だとかいって非難する。

 ■これは西側諸国が中国の発展に心の準備ができてなくて、怖がっていることが反映されているらしい。でなければ、冷戦思想を未だ持っていて社会主義国の中国を敵視しているかのどっちかだね。まあ、中国の発展が早すぎて西側国家がついていけないんだから、こういうデタラメ報道はこれからもあるだろう

 ■でも、清華大学国際問題研究所の閻学通先生はこうも言っている。「どの国も周辺に自分たちより強大な国が出現したら嫌だ」と。だから「中国はこの現実を受け入れなきゃ」と。「(国際的)反対世論の中に自己の発展を見つけなきゃ」と。「中国は(デタラメ言っている)人を批判せず、自分がどうすればいいか考えればいいんだ」と。

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 ■上海復旦大学の沈丁力先生はこういっている。外国メディアの中国報道はデタラメかもしれないけど、重視しなくちゃいけない、と。なぜなら、その昔、ジャクソン米大統領はこう言っているんだ。「あなたを批判する人はあなたの最もよい友人だ」(それって、産経新聞は最も良い中国の友人って意味ね?)外国メディアの中国報道は、僕らをより注意深くさせ、誤りを犯さないようにさせてくれるんだ。(引用おわり)
 

 ■超意訳だが、中国がすごく外国メディアの報道に敏感になっていることは伝わる。すごく産経新聞の報道を気にして、参考にしてくれていることもわかった。高すぎるプライドがじゃまして、素直になれず、「中国の発展が速すぎるから、みんなをびびらしちゃうんだよな」と孤高を装いつつ、本当は。国際社会で尊敬される国になりたい?という本音がにじんでいるように感じたけれど、そういう解釈でいいのかな。

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ちなみに色分けは、が、産経新聞への愛、が建前というかプライド、が本音、ということで。

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 ■こう解釈すると、これは中国当局の外国メディアに対する考え方の変化がうかがえる当局の意向を受けた記事、ということになるのだが、私は別の見方も出来ると思う。

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 ■環球時報は、人民日報系の国際時事週刊紙だが、人民日報とちがって、市場の嗜好を反映し部数を伸ばしてきた新聞。これまで日本批判、産経批判が比較的多いことで知られているが、これは、日本バッシングは中国で唯一過激に書ける批判記事で、批判記事(不満の発露)を求める読者の嗜好に従った結果と分析されている(日中コミュニケーションフォーラムでの劉志明・中国社会科学院教授らの講演参照)

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 ■その環球時報が、外国メディア批判(産経新聞批判)を装いながら、読者に「外国メディアの中国批判記事は(デタラメでも)重視すべき」と訴えかけている。

 ■実は、まがりなりにもジャーナリズム精神をもつ新聞記者たちにとって、自分たちの書けない祖国の悪い部分を暴いたり批判したりする記事を外国メディアが書いているということは、けっこう忸怩たる思いがある。実際に以前、中国人記者から「君たちは中国の批判記事が自由にかけていいね。本当は僕らも書きたいんだよ」と、と言われたことが一度ならずある。

 ■この環球時報の記事は、祖国の政治や社会を改善してゆくきっかけになる批判記事を自分たちの手で書きたいと思う一方、それを報道統制で書けない記者たちが、外国の中国批判記事を利用して巧妙に読者にメッセージを訴えている、というのは深読みしすぎだろうか。

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 ■いずれにしろ、産経新聞の中国報道が、中国当局やメディアの注目を受け、大いに参考にされていることは、間違いない。こんなにあからさまなラブコールを送られては、北京特派員としては日本の読者のためだけでなく、中国当局や中国メディアの明日のためにも、がんばらなきゃ、と思うのであった。

「中国報道のあした 続番外編」への16件のフィードバック

  1. 中華報道機関ツンデレ説ですか?
    日本の各新聞にも大衆迎合的な記事はままありますが、中華では当局による圧力も考えなければ記事を読み解けないのは本当に面白いとおもいます。
    講釈ありがとうございました。

  2. 福島さんの中共事情の読みに敬意を表します♪
    でも『こんなにあからさまなラブコール』って、笑えるというか悲しいというか…
    しかし一党独裁で言論・報道統制が敷かれた社会というのが具体的にどういう意味を持つのか、それを極力日本人に伝えるのに適切な表現ですね1
    拍手っ ♥

  3. 福島香織さま おはようございます
    支那から悪し様に言われるのがマトモな日本人。
    故に、石原都知事や産経新聞はマトモなのであります、ハイ。
    故人曰く、”逆もまた真なり”と。
    でもこの際、”日本で非常に発行部数が多い産経”とか、”有名な古森記者”というのは、素直にいただいておこうではありませんか???
    ”親中派・香織”の色使いは、赤・青・緑のどれにする?
    福島さんのブログ、いつも楽しみにしています。
    パソコン別検閲、犬の断末魔、南京事件映画の予想、今日の続閑話休題…なかなか他では知りえないコラムです。
    これからもよろしく。

  4. 福島香織様、今日も楽しく拝見しました。古森義久・元支局長が転勤されたあと、今、中国側が最も気にしている記者は『福島香織』に間違いないと信じています。きっと、中国側からのアプローチがすごいんだろうなぁと思ってしまいました。

  5. 鋭い洞察、いつも楽しみにしています。
    う~ん、これを呼んだ支那当局、工作員達はどんな次なる一手を考えるんでしょうねぇ。

  6. 福島 様 こんばんは。
    新聞の記事もブログも楽しく拝見しております。
    「北京あたふた」8月7日付…見出しだけで中身が想像つく位ピッタリでした。
    ≫市民の盛り上がりは今ひとつ。
    ≫「五輪は市民生活には何もいいことない」といった辛辣な書き込みが目立っている。
    昨年扱った中国人窃盗団の若者達に北京五輪の話しを向けたところ、彼ら口を揃えて「そんなの私達国民には関係ない」といって笑っていたのを思い出しました。
    それにしても、公害ばかりかSARS、医師の誤診やら薬の副作用…もひどいようでうっかり病気も出来ませんね。
    健康にはくれぐれも気をつけられて…中国関連の記事が読みたくて産経新聞を購読しているようなものですョ。

  7. 今回の記事も良かったですよ! なんか いつもと同じフォントなのに ちょっと丸文字に見えました(^-^)
    >>中国で発売された「江沢民文選」で明らかになった。
    記事とは関係ないのですが、この本は 政府とは無関係なんでしょうか? なぜこの時期に発売されたのか気になります。

  8. ゆーこさま:
    にゃんこさま:
    読んでくださってありがとうございます。当局の圧力をさける巧妙表現か、それとも当局の意向そのままなのか、中国報道にもいろいろあって、考えさせられます。

  9. 平成退屈男さま:
    正直「日本で発行部数がとても多い」という評価はほんと、意外でした。しかし日本語が読める中国人が一番よくクリックする日本の新聞サイトは、産経新聞サイト、というのは本当らしいです。なぜなら、「共産党の悪口がいっぱい書いてあるから」。これからも、おもしろこねた拾っていきますから、お立ち寄りください。

  10. aqua2020 さま:
    いえいえ、私など、当局からは歯牙にもかけられていません。ブログがせいぜいアクセス禁止になったくらいです。ハニートラップ、かも~ん、と心待ちにしているんですが、相手にしてもらえるほど、深い情報もっていないし。

  11. nhac-toyotaさま:ありがとうございます。洞察なんてものでなく、妄想に近いかも。ひとつの記事の読み方、程度で楽しんでください。

  12. YAMATOさま:
    五輪まで二年が切ってしまいました。環境五輪、人文五輪、科学技術五輪、といろいろスローガンが掲げられていますが、市民の中には「規制五輪」「汚職五輪」を心配する声は結構強いですね。きっと開催の暁の新聞の見出しは「五輪成功」でしょうが、誰のためのどんな成功になるか、たのしみです。

  13. hiro さま:江沢民文選、上中下三冊のぶあつーい本で、まだ全部読んでません。今の出版時期はねらったんでしょうか。ただ当局が今、一番腐心しているのは、靖国問題で中国に当局のコントロールを超える反応がでないように、のりきることみたいです。ある、「愛国青年」が言っていましたが、「靖国」問題をエスカレートさせようという動きは、日本への不満というより、現政権への不満が背景とのこと。政府の意向をうけたというよりは、現政権への反対勢力の意向を受けた今の時期の出版という風には考えられるかも。

  14. 福島さん、先日南方日報では、新華社の記者が産経さんに「日本の右翼世論を代表する新聞」との称号を与えていましたよ。TBさせて頂きます。
    しかし、中国の新聞は国内の政治批判が書けない分、海外の政治批判はやりたい放題ですね。知人の中国人は小泉さんのプライベートのスキャンダルについて、私よりもよく知っています。

  15. この記事、読みました。人民日報あたりを中道とすると、日本のほとんどの世論は右翼世論になってしまいますので、これは「日本の世論を代表する新聞」という意味だと受け取り、大変光栄に思いました。

  16.  検閲があるから真実をデタラメだといいながら報道するしかないが、とにかく報道しようとする中国の記者たちには、きっと権力に対する反骨精神があるのだ。
     彼らはそれがデタラメではないことを知ってるんだ、と思いたいですね。?

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