きょうは何の日?

Pocket
LINEで送る

スポンサードリンク

■きょう、6月8日は、反右派闘争50年記念です。で、その原稿を三日前ぐらいから、デスクさまに売り込んでいたのですが、時期がサミットと重なったこともあって、しくしく、結局ボツになってしまいました。いや、いいんですけどね。反右派闘争50周年ってたって、だから?みたいなもんでしょう。同じ民主とか人権なら、天安門関連記事の方が喜ばれるみたいだし。

■ただ、私としては、反右派というのは、今の中国のすべての厄災の始まりような気がしてすごく気になるのです。たぶん、反右派闘争のとき、もっとも攻撃を受けた「筆頭右派」の章伯鈞氏の末娘、章詒和さんが書いた「最後の貴族」という回顧録が、ものすごく印象に残っているからでしょう。私もともとチャイナ・スクール出身ではありませんので、中国近代史は、さほど詳しくありません。ですので、同書で紹介されている章伯鈞氏はじめ、中国知識人たちが、本当に情熱的なまでに、多党政治の実現と言論の自由を望んで、討論し、共産党に、毛沢東に、蒋介石の強権政治とはちがう、新しい中国を期待し、そして無惨に裏切られた、そのあまりに激しいプロセスに、よみながら、ふるえるような気持ちになりました。

■というわけで、反右派闘争で迫害された55万人以上の知識人の無念をいたんで、ここでボツ原稿を救済いたします。


■反右派闘争から50年
中国の厄災のはじまり
「謝罪と賠償を」
章詒和さんに聞く

 ■55万人の犠牲者、失脚者を出した毛沢東氏の知識人・文化人狩り「反右派闘争」開始から8日でちょうど50周年。民主諸党派による民主同盟第一副主席で「筆頭右派」として最も激しい攻撃を受けた章伯鈞氏ら5人の名誉はいまだ回復されていない。今年、当時の被害者、遺族らは相次いで共産党中央に謝罪と賠償を求める手紙を出したが、当局からは何の反応もなく、国内メディアにも報道統制がしかれている。章伯鈞氏の末娘で手紙の署名者のひとりでもある章詒和さん(65)にその胸のうちを聞いた。(北京 福島香織)

 ■「私は共産党から与えられる名誉回復などいらない」
 章さんはそういって唇を引き結んだ。筆頭右派を父親に持ったことで、文化大革命時代は自らも11年間、反革命罪で投獄され過酷な強制労働に従事させられた運命は、そのたおやかな姿からは想像できないが、まなざしに、闘っていた人特有の凜とした厳しさが漂う。

 ■「ただ、あの闘争により、中国は一党独裁を打ち立て、言論の自由を失い、大躍進、文化大革命が起きてしまった。すべての厄災の源。そのことについて党は正式に謝罪しなければならない。幸運にも今まで生きている生存者はみな70歳をすぎており、精神的物質的賠償を求めるのは当然だ」と署名の理由を語る。

 ■「反右派闘争」は1957年6月8日、人民日報社説「これはなぜだ?」から正式に始まった政治運動。58年はじめまでその嵐は吹き荒れ当時、芽生えかけていた言論の自由、民主化、多党政治への希望を完膚無きまでに打ち砕いた。

 ■1956年、政治批判を歓迎する大衆運動「百花斉放、百家争鳴」を呼びかける毛沢東氏に応じ、知識人たちは言論の自由を信じて率直な意見を発表しはじめた。共産党政権に蒋介石・国民政府の腐敗・強権政治とは違う民主的な政治を期待していた。章伯鈞氏は、共産党の独裁を防ぐ「政治設計院」の必要性を熱く訴えたが、それら真摯な意見は数ヶ月後「黒五類」(悪の五タイプ)のひとつ、ブルジョア右派の罪状の証拠となった。

 ■章さんは思春期に闘争前夜の父親と盟友らの情熱と希望あふれる討論やに耳を傾け、闘争後の生活の激変、憧れの人の裏切り、投獄、強制労働など、希望と絶望を多感な時期に一気に経験した。監獄内で他の女性政治犯の毛沢東批判などの言動を密告したことでその女性を死にいたらしめ、激しい後悔にさいなまれたこともあった。

 ■こういった自らの経験と父親とその盟友らの記憶を還暦を期に雑誌などに発表開始、03年12月には国内で「往事並不如煙(往事は煙のようなものではない)」の題でまとめて出版されたが、これは政治的に敏感な部分をすべて削除されたうえ、最終的には禁書となった。同書は04年完全版が「最後の貴族」の題で香港で出版され、年内にも日本で翻訳出版される見込みだ。

 ■章さんは今年1月も国家新聞出版総署の副署長から「右派」と批判され、昨年出版された「伶人往事」の禁書も言い渡されたが、インターネット上の公開書簡で大反論。民主同盟中央機関紙・光明日報の社長でもあった父が夢みた言論の自由のために、香港誌などで果敢な執筆活動を続けている。

 ■「私は、民主同盟5000余人の記念碑をたてたい。そしてそれを右派碑と呼ぶ。石碑の裏には反右派闘争の歴史を克明にきざみます」。章さんの「右派」と語る声に誇りが滲む。〝右派〟はもはや黒五類ではなく、民主と自由のために闘った栄光の証なのだ、と。

(以上)

 ■いろいろ、書きたいことはあるのですが、本日はタイムリミット。10日まで締め切りラッシュです。反右派については、次の次くらい、EXの「中国を読む」あたりで、取りあげるかもしれません。「最後の貴族」は、福岡の出版社・中国書店から出るようです。この出版にあわせて、章さんのことは、いつか新聞でご紹介できるでしょう。そのときは、5回くらいのロングインタビューにしようっと。この人こそ、苦難と裏切りにみちた激動を気高く生き抜いてきた「最後の貴族」だなあ、と思うのです。中国で出会った女性の中で、ピか一にすばらしい一人です。

 
今年4月撮影。

「きょうは何の日?」への26件のフィードバック

  1. 百花製法は、毛沢東のワナであり、権力闘争の具とか聞きましたけど、そうですか?
    しかし、民主的、報道の自由の日本で、あんまりそういう感じがしませんね。李登輝元総統の今回の来日でも、報道を自粛したそうです。
    私はときどき、日本人全体が引き篭もりだと思います。特にマスコミはヒッキーそのものです。親にはタイドでかいのに、他人様にはまるでヨワイという。まあ、自分自身というものがないんでしょう。
     
    http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1181235716/
    http://www.ettoday.com/2007/06/07/301-2108516.htm 

  2. 反右派闘争ですか~抗日みたいなもんかwww
    そういえば、知り合いから中国土産をもらいました。
    「茶香金柑」と書いてあり、キンカンを煮詰めたお菓子でした・・・とは言え日頃からここが常連のわたくし目は恐々と口に運んでます(笑

  3. ユン・チアン女史著マオの邦訳版を読みましたが「百花斉放の罠」の章は全千頁超の中でたった16pでした。
    あまり今につながることは書けなかったのでしょうか。
    近代史の貴重なドキュメンタリーも「ピか一にすばらしい一人」とのひととなりも楽しみにしています。

  4. 反右派闘争といえば、学生時代に劉賓雁さんの作品や当時の新聞記事を読みました。かつて民主化の高まりと、それに続く言論統制が、中国ではある期間を置いて繰り返されてきたわけですが、いまのところ、その動きがあまり目立ちませんね。
    先日、『全日制普通高級中学教科書(必修)中国近代現代史』(人民教育出版社歴史室)を購入しましたが、単純に抗日戦争期の記事のページ量と、反右派闘争・大躍進・文革期の解説のページ量を比べると、民衆の鬱積したエネルギー(?)を巧みに「反日」という一点に誘導しようという、ある意図を感じずにはいられません。

  5. 「歴史と台湾問題を適切に処理することが、日中関係を維持する政治的基礎だ」
     この発言に、胡錦濤のケツの穴の小ささを見よ。あれだけ大きな国土を独裁支配している男が、小さな台湾の李登輝の言動に怯えているのだ。
     中国に李登輝クラスの大物が現われる日はないのだろうか。

  6. 私の義父(83歳)も元国民党員だった為、労改に入れられたそうですが詳しい事は一切話しません。
    亡くなった奥さんとは離婚の形をとり難を逃れたそうです(後縁)。
    言葉通じないので書いての会話ですが終わった後は必ず燃やしてしまいます。
    当時の柵を引きずっている人はまだまだ多く残っています。

  7. はじめまして!今日のエントリーはヤケに漢字が多いなあと、取りあえず
    スーと流して降りてみたら「やややや!この画像は、ひょっとして筆者:
    福島香織さまかあ?!」と、期待半分その他半分で(苦笑)眺めましたが、
    今日のエントリーの主役:章詒和さんでしたか…。そういえば、今や中国が
    バブルの絶頂期だそうですが、間もなくやって来る(らしい)どっか?ん!と
    いう「大きな泡の弾ける様」を、ライブで見られるそうですね。報告待ち遠しい
    今日この頃です。

  8. 福島記者
    > 同じ民主とか人権なら、天安門関連記事の方が喜ばれるみたいだし。
    …でしょうね?♪ しかし、多くの社会主義国家や団体が通過して来た「粛正」の構図を理解するには、非常に興味深いテーマと考えます。
    併せ技で特集記事化できないものですかね? 例えば中共指導者層で失脚する人が出た場合とかに、「粛正の方程式」とかお題を掲げて章詒和女史の著書から引用とかしたりなんかして…香港の民主活動家紹介なんぞもいいかな?

  9. To kokuさん
    章伯鈞氏は、そう思ったようですね。「ヘビを穴からおびき出す」ためと。実際、結果的にはそうなった。ただ、これは諸説あるので、断定的には書けないのですが。

  10. To bitterさん
     中国報道の明日について、取材している身としては、ああ、こうやって、言論の自由は死んでいったのか、と胸がつまりました。

  11. To liewさん
     ありがとうございます。今年一年、反右派闘争記念ですから、もういちど練り直してきます。

  12. To tokegawaさん
     今の状況が以前にまして深刻なのは、知識人たちに地位と金を与えるシステムを確立したことでしょうか。迫害をおそれずに、発言する知識人はもうほとんどいなくなりました。知識人ですら、真実を語るより、口をつぐんで、豊かさを追うことに一生懸命です。そして、すりこみ教育で日本=悪と教え込まれたお馬鹿な青年たちが、籠の中でぎゃあぎゃあさわぐくらいしかできない。あれは、鳴き声、人の言葉ではありませんね。
     

  13. To ブリオッシュ或いは出べその親方さん
     中国に〝李登輝〝が登場する日、うーん、夢でしょうか。

  14. To shanghai407さん
     「中国人は歴史を語らないものだ」と、昔、ある中国人から言われました。激動の時代に、どのような体験をしたのか、こちらも、多少は想像つくので、なかなか踏み込めない領域です。ただ、語らねば、書かねば、この国でなかったことにされてしまう。今なお続くそんな怒り、無念が、かさぶたをはがすように、傷みをこらえながら、語り書くときがあるのだと思います。貴重な歴史の記憶、お義父さまが自ら語ってくださるときは、ぜひ聞き漏らさないように、と思います。

  15. To ニッポニア・ニッポンさん
     ありがとうございます。中国株式市場の時価総額って、実質的には東証一部の18%くらいの規模のうえ、外国の資金がほとんど入っていないので、海外の経済には直接的に影響ないんですよね。「世界同時株安」っていうのは、偶然というか、連想売りというか、心理的なもんらしいです。というわけで、まさしく、対岸の火事というか、高見の見物というかワクワクです。当局としては、国有銀行の金が、このばくち市場に投入されていなければ、暴落しようが、あまり国内経済にも影響ない、とみているようです。暴落して底のとき、政府資金で、わっと買って、また上がれば丸儲けですし。国が胴元の賭場みたいなもんですね。

  16. To 憂国無罪さん
     日本はバブルが崩壊したら、経済が地盤沈下、世の中が元気なくなりましたが、中国でバブルが崩壊したら、自暴自棄になった方々が元気よく大暴れするかもしれません。

  17. To 一閑さん
     章さんの本の話、禁書の裏話などは、ちゃんとまとめたいですね。

  18. >当局からは何の反応もなく、国内メディアにも報道統制がしかれている。
    まあ中共からすれば反右派闘争を否定すれば政権の正統性が失われかねないから当然の姿勢でしょう。しかし中共が崩壊すれば、後世の史書には焚書抗儒などと記されることになるでしょうね。

  19. やはり、いろんなウラワザ使ってる?(笑)。
    《ところで、面白いものがあります。ここにURLを入れると、現時点でそのサイトが支那で見られるかどうかチェックできます。色々なサイトを試すより、ブロガーの方は真っ先にご自分のサイトをチェックして下さい。》
    http://nishimura-voice.seesaa.net/article/44585766.html
    『ここにURLを入れると』
    http://www.greatfirewallofchina.org/test/
    ご紹介まで。

  20. 「最後の貴族」は是非読んでみたいですね。
    毛沢東が仕上げた中国は果たして毛沢東の望んだ国かは判りませんが、あれだけの多民族国家をまとめえるには共産国家しかないのかも。
    たまたま私の知り合いの中国人は日本に長くおりますが、「文化革命」では農村に行かされ苦労したそうです。
    勉強がしたかったのですが農業をやらされハンデは大きいといっていましたね。
    ただ日本で生活するともう戻るのは嫌みたいです。
    上海に妻子がおりマンションも買ったのですが、どうするかは思案中のようです。
    今の中国には魅力が無く、これから先の事を考えると日本の方がまだ自由と生活の豊かさが良く悩んでいます。
    食、職、遊びと日本では不便することが無くそこそこ稼げますからね。
    高いのは住宅くらいで後はいずれも日本が良いそうですよ。

  21. To paraisoさん
     公式メディアはだんまりですが、ネット検索すれば、中国国内でもやはり多少でてきます。先日、フリーランスの中国人カメラマンとごはんたべましたが、中国国内でも記者たちがんばっています。

  22. To ニッポニア・ニッポンさん
     いつも、いろいろ教えてくださってありがとうございます。

  23. To kyamagaさん
     ぜひ読んでください。格調高い文章で、京劇の名セリフとか古典の引用とかもあって、私のような浅学の身には、読み始めから本に入り込むのがなかなか大変でしたが、途中から章伯鈞氏とか儲安平氏とか羅隆基氏とか当時の知識人たちの、言論の自由や民主への燃えるような思いとか、(けっこうハンサムだったらしい)羅氏に対する、少女・章詒和さんのほのかににじむ憧憬とか、単に歴史ものとか回顧録にとどまらない味わいが、ぐぐっと読後にひろがります。

shanghai407 にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">