芸術はムダなのか。ならば私はムダを愛す。

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■毎日、ブログ更新するのってやっぱり大変だな。とりあえず更新、ひとりごとみたいなエントリーがふえてしまうがお許しを。

 

■というのも、私は時間の使い方が下手なのだ。ちゃんと会社勤めして、豊かな友達づきあいもあって、本まで書いて出版してしまう立派な記者がたくさんいらっしゃるなかで、私は記者時代、本当になにもかも中途半端だった。効率的な時間配分が自分でできないタイプ。かといって仕事をいっぱいいっぱいしましたと胸をはれるか、というとそうでもない。今は仕事辞めているからブログぐらい毎日更新できるだろう、と思っていたら、なんかあっという間に一日がすぎていたりする。

 

■よく考えてみると、私の一日はムダが多い。動きにロスが多い。最初からきっちり調べてから電車にのれば一回の乗り換えで目的地につくところに、行きあたりばったりで3回くらい電車を乗り換えてしまう。

 

■かとおもえば、朝目覚ましがなったときに、すぐ起きればいいものを、布団の中で、さあ起きてあれとこれとそれをして…とシミュレーションしているうちに1時間がぐらいたってしまったり。すぐ起き上って考えながら行動すれば、1時間たったときには全部完了しているじゃん。

 

■特売で安くなった大根を一本買ったら、半分もたべないうちにしわしわになって捨てるはめになった。少々割高でも半分に切ったやつを買えばムダがすくなかった!と落ち込んでみるけど、考えてみれば50円の節約の話なんだから、そこで自分に腹立てたり気分を落ち込ませたりすること自体がエネルギーのムダ。

 

 

 ■私の生活を事業仕訳けしたら、あれもムダ、これもムダととなって、お前が生きているのもムダ、という結論になりかねないなあ。

 

■きのう、大阪の10年来の友人のハーベストコンサーツ代表の木田好子さんが上京してきたので、品川でお昼を食べた。そのとき、彼女が憂い顔で「事業仕訳けで、あれもムダ、これもムダってやっているでしょう。クラシック業界なんて、目の敵にされるわよね」とため息をついていた。

 

■ちょうどその前日、ピアニストの中村紘子さんら芸術家が緊急記者会見をひらき事業仕訳けで文化予算の縮減に抗議していたのを思いだした。「子どものための優れた舞台芸術体験事業」が廃止されることになったが、これ本当にムダなのだろうか。

 

 

■ガキにプロのオーケストラきかせたり、伝統芸能みせたりしても、わかるわけないんだから、ムダだ!とか思われているんだろうか。それとも、これがオペラ好きの変人といわれた小泉元首相がはじめた事業だから、きっとムダなんだろうと思われたのか。奥様がタカラジェンヌという鳩山首相が芸術を愛していないわけがないはずだが、ひょっとして庶民には芸術のような腹の足しにならぬものは必要なかろうと思っているのだろうか。

 

 

■国からの各地域のオーケストラに出される助成金がカットされていく方向らしい。もちろん地方財政だって豊かじゃないから、最初にカットするのはオケとか劇団とか、そういう芸術系の助成金になってくる。私は面識ない方だが、こんなブログもあった。日本のオケ、あやうし。ちなみに伝統芸能も厳しいらしい。こんなブログも。

 

■もっとも、芸術方面の予算がカットされて芸術家らが涙目になっているのは日本だけではない。アメリカやヨーロッパも結構大変らしい。木田さんによれば「ジュリアード音楽院なんかも、合衆国の経済があんな状態なので、お金がなくて大変で、今は韓国からの大口寄付でなんとか運営がなりたっている。だからジュリアードじゃなくて、コリアードって呼ばれているのよ」という。

 

■クラシック、オーケストラ、オペラというと、とにかくお金持ちの教養と娯楽という感じで、この厳しい時代にそんなものに予算をさけるわけがない、という意見もあるだろう。

 

■でも、たとえば木田さんは、できるだけ多くの人がクラシックに親しんでほしいと、安価なクラシックコンサートをほとんど手弁当でプロデュースし続けてきた。ホールの借り賃が安い土曜の朝なら安価なコンサートが開けるという発想ではじめた朝の光のクラシックシリーズはもう48回も続けている。マイクは使わないから音響代割り引けとか、調律師は自前で用意するから調律師代負けろとか、しぶる大阪市側と交渉して、きわめて庶民的な値段でクラシックコンサートを提供している。

 

 

■助成金が縮減される理由に、そういう芸術公演のたぐいは、自助努力でもっと効率的な運営ができる、という判断があるが、世の中、金になる芸術だけではない。金はかかるのに金にならない芸術はいっぱいあるが、それらはムダなのか。超一流の一席のチケットが何万円、何十万もして興業すれば成功間違いなしの世界的歌手やオケはムダじゃないが、助成金がなけりゃコンサートを開けないレベルの地方のオケはムダなのか。でも庶民はそういうオケのチケットを買う。

 

■別にクラシックだけでなく、すべての芸術について経済効率だけで判断すれば、およそムダな存在だ。経済状況がわるくなれば、個人の芸術にむける消費も減る。そういう時期こそ国家や地方行政ら公的機関が芸術・文化をささえないと、失われるものも多いのだろう。本当に失っても、いいとみんな思っているのだろうか。子供手当ではした金を一人頭ずつくばるより、クラシックや伝統芸能や舞台芸術の楽しみに望めば手を伸ばせる環境を子供たちに残してやることにお金を使う方が、ムダなのだろうか。ソフトパワーがこれからの日本にとって大事だ、とかいっているけれど、伝統芸能やクラシックはそういうソフトパワーに入らないのだろうか。アニメや漫画やJポップのように金になるサブカルチャー以外はムダなのだろうか。

 

 

 

 

■声楽を勉強していたのに、それじゃあ食っていけないと、けっきょく何の関係もない仕事をやってきた友人が、こういったことがある。「歌を仕事にすることができなくても、歌があればどんないやな仕事も苦痛でなくなる。悲しいことがあっても、しんどいことがあっても、おなかすいても、歌を歌っていたら幸せになる。君はかわいそうだねぇ~、歌が歌えないから(私は音痴だ)。僕は歌が歌えるから幸せだ~」。そのとき、私は、アリのように昼夜なく働く下っ端新聞記者だったので、おまえはキリギリスかっ、と内心つっこんでいた。

 

■しかし、私がいくつかのトラブルのさなか、本当に落ち込んでダメになっていたとき、「君は歌が歌えないから、自分で自分の不幸から脱出できない。だからかわりに僕が歌ってやるか」と、夜中にえんえん2時間ぐらい、シューベルトの歌曲とイタリアオペラのアリアとか、私でも知っているような有名どころを歌いつづけてくれたことがある。(ご近所迷惑…)

私はそのとき、芸術というもの、それが最高に洗練された一流のものでなくとも、普通の暮らしの中にその気配があるだけで、豊かになったり幸せになったりする人の心の不思議をつくづく思った。

 

■この世の中からムダを徹底的にはぶけば、豊かになるのか。たしかに日本の貧困率はOECD諸国のなかの4位と高いし、贅沢をいってられないのだが、心が貧しくなっては意味がない。私はもはや納税者じゃないから、税金の使い道とかあれこれ、偉そうに言えない立場となったが、多少の税金をつかってもキリギリスを養っておけば、くじけそうになったとき身近に芸術の喜びを見つけることができて救われるかもしれないよ。ムダの中に豊かさが潜んでいることもあるのだと、ムダな時間が以前より増えた今、特にそう思う。私はムダを愛す。

 

 

 

 

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「芸術はムダなのか。ならば私はムダを愛す。」への16件のフィードバック

  1. こんばんは。
    産経辞められていたのですね(気づくの遅いって)
    「危ない中国・点撃」は秘蔵書にします(^ω^)

  2. 福島様
    あなたはまだ納税者ですよ。税金は前年の収入に対してかかってきますから。失業してから巨額の住民税(といっても数十万円かな?)を払うのは本当につらいです。
    ところで、仙谷由人行政刷新担当相は何度も「文化大革命が始まっている」と言明しています。この人物は文革をプラスに評価しているのでしょうか。いまどきめったに見られない珍種ですね。
    民主党は今後貧乏人を扇動して、金持ちとか科学者とか芸術家とか新聞記者とか評論家とか、ムダな人種に三角帽子をかぶせて市中を引き回すかもしれませんね。
    ご用心ください。

  3. 香織師匠
    > 君はかわいそうだねぇ~、歌が歌えないから(私は音痴だ)
    意外な一面を発見…♪ てっきり宴会カラオケでマイク離さん系かと思ってた…(笑)
    でも聞いて楽しめるなら全くの音痴ではないと思います。
    > 別にクラシックだけでなく、すべての芸術について経済効率だけで判断すれば、およそムダな存在だ…
    もしその考え方が主流になると、余暇や娯楽そのものがムダという思想に行っちゃいかねないなぁ。 自称快楽追求主義者の私めには耐えられない世界だ♪
    富裕層がまさにパトロンとなって学術・文化・芸術を支え、中間層も微力ながら寸志を出してそれを補強する様な形態が本来望ましいのでしょうが、国策として所得格差是正や増税をブチ挙げる一方、景気対策には消極的な現状はそっち方面からの「糧道」を断つ様なもんでもあるわけで「キリギリスの冬」はいっそう過酷になりかねないですね。
    それでいて経済効率追求の結果、愚にもつかないバラエティ番組と再放送で貴重な公共の電波帯域を”無駄遣い”しているTVメディアには電波使用料下げという援助を与えようとしている現政権のやりかたはホンマに気に入りません…しかも大資産家の首相一族が相続税逃れやってる現状って何なんだろう…幹事長は中国ツアーに御執心のようだし…♪

  4. 個人的には政府が保護すべきなのは「文化遺産」だと思っています。歴史的存在としての芸術の保護。クラシックが日本に定着しないとしたら、それは日本でのクラシックのあり方がどこか歪んでいるからでしょうし(キリスト教が一定数以上定着しないのと同じ理由だと思うけど)、裾野の狭い芸術は、その芸術自体に力が無いとしか思えないんですよね。
    たぶん今の衰退しつつある日本の芸術や文化にはエロティックな部分が消えてしまっているんじゃないでしょうか?政府の保護を受けるためにはお上品じゃなきゃ駄目でしょう?絵画で裸婦像見てもグッと来るものがないしw、クラシック系でやはり艶のある楽曲ってないっしょ?歌舞伎も爺が娘役やっているから駄目なんですよw
    その点で若い人の既存の枠にとらわれないアーティストとしての表現力には期待しています。

  5. 私は少し違うことも含め、2つ考えています。
    かつては福島さんのように考えたものですが。
    細かく書くと長くなるのでさわりだけ。
    ひとつは、学術や芸術への色眼鏡をなくしてゆくことです。
    「わかんない」と主張する人の半分は、わからないのではなく、「わかろうとしていない」のですね、実は。これは産経さんが問題提起されている教育の在り方の件ともつながっていますね。教育は学校教育に限りません、念のため。
    このあたりは福島さんのご意見に近いかなと思います。
    いまひとつは、現代日本の「悪しき平等主義」をどうにかすることです。
    現代日本では「とんでもない大金持ち」や「少々の債務ではへこたれない殿様」が生まれにくくなっていますね(総理大臣の資産を指折りの大金持ちだというのは日本の中だけですね)。
    西洋でいうところの「下々の者」(我々)に暖かいのは、ある意味では素敵なことなのですが、歪んだ税制などにより、金持ちも貧乏人もともにより一層、資産の保全に苦しむ流れとなっています。
    そもそも、芸術やある種のエンターテイメント、一部の公共施設などは、本来、「大きなお金を動かせる人」が支えてきたもので、現代日本のように何もかも「政府が支えた」例は、共産圏のほかはわずかではないでしょうか。
    ということで、「大きなお金を動かせる人」が枯渇してしまっており、その再生が必要なのではないかと考えています。

  6. ひとりごとみたいなエントリーがふえてしまうがお許しを。

    ブログとはウェブログ、ウェブ日記です。正直なひとりごとが一番です。
    誰とは言いませんが、都合の良いことだけを集めてひとりよがりの作文を書き綴り、どうだ俺はエライダローと胸をはってるG3の真似などすることはありません。ああいうのは読んでもつまらないものです。

  7.  先の日曜日、韓国人歌手のクリスマスコンサートを企画しました。入場無料で出血サービスでしたが、ご来場の皆さんから大好評でとてもうれしかったです。次の日曜日は私自身が参加する第九の演奏会があります。歌を忘れてかなりや状態になっていましたが、この師走は忙しいです。
     私にも会社を辞めて浪人状態の時期があり、その時はコンサートに行きまくったことを懐かしく思い出します。人は日々の糧に事欠いてもなんとか生きようとしますが、希望が無くなっては自殺する人もいます。仕分け作業でこのような、将来への希望や、投資というものまで辞めてしまうのはどうかと思います。
    Hermes

  8. 無駄といえばお金を稼ぐ国立漫画喫茶も廃止されていますよ。
    私なら、大々的に(入場料を取って)一大観光地兼権利保護の拠点に使いますね。
    外国の子供も日本のアニメは大好きですから子連れ観光客を呼び寄せる大きな武器だと思います。
    著作権では少なくともディズニーのライオンキングなんて手塚治虫のジャングル大帝のパクリでしかありません。
    このような所から外貨を稼ぐべきですね。(笑)
    人生なんて無駄の塊ですよ。
    無駄だからこそ意味があるのではないでしょうか?
    (お!我ながら禅宗の坊主みたいな台詞だな)

  9. To s05694さん
     今は韓国がクラシック育成にすごい力をいれているんだってね。中国も韓国も経済や軍事とならんで、文化が国力のひとつの指標であるという考え方をよく耳にします。中国の文化発信など非常に戦略なもんです。

  10. 福島さま
    自分の好きなことがしたい、だから税金くださいっていうのはよくわかりません。それに、クラシックは西洋の文化であって、我々の文化ではないと思います。
    ムダとかの前に、クラシックの場合は、あちこちにオケがあって、日本の企業のように供給過剰なんではないですか。大阪もなんだか数が多くて、いろんな聞いたこともないオーケストラまであります。

  11. 正直に言うと、文中のリンクを見て初めて、日本の芸術が国からの助成金に「おんぶにだっこ」状態であることを知りました。
    私も芸術は大切だと思うのですが、芸術が大事であるということと、国からの補助に頼ることとは別ではないでしょうか。
    まあ、日本の古典芸能(能や狂言など)は補助の対象になってもいいかなと思うのですが、いわゆるクラシック音楽は日本が税金で賄う必要があるかどうか疑問です。
    国からの援助がなくても、ポンと資金を出してくれる篤志家がいればいいのですが、この国の人間は、何の芸もない「芸人」や音痴「アーティスト」に途方もない金を払うだけなので、それも望み薄かもしれません。

  12.  自分の私生活を明かしたりなんかするところは、ちょっとやっぱり有名人気取りみたいなとこ、あるんじゃないの。人はちょっと興味あるんじゃないのって。
     自分の欠点を云々したりなんかするところは、そんなのを超えた価値が自分にはあると思ってたりするんでしょ。
     それに友達多いって書くのも自慢だし。会社ぽんとやめちゃったり、やっぱ自信満々だな。大丈夫だよ。

  13. 福島様 コメントは初めてですが、貴女の記事は以前から購読しています。
    貴女の鋭い洞察、文章!!上手く表現できませんが感心してみておりました。ご活躍を期待しております。

  14. 福島さん、
    「事業仕分け」の一番の問題は、国家予算の無駄の大口のものはあの仕分けからはずされていたこと、そして仕分けで国民の目が小さな費目に行きそこで議論が起きることを民主党がもくろんでいることです。
    ここのクラシック音楽論議などは、まさに民主党の思う壺です。クラシックなど税金で補助してまで聞く必要もないと言う人から、オーケストラが破綻の危機に瀕することは日本の文化行政の終焉だという人まで、議論が百出するでしょう。
    でも、そんなことを議論させるのが民主党の狙いなのです。
    仕分け対象の音楽関係の予算は49億円、国民一人当たり40円ぐらいの話です。それに比べて今年の赤字国債の総額は60兆円、国民一人当たり50万円程度です。家計で50万円の借金をしてやりくりするとして40円のためにこれだけ大騒ぎするでしょうか?
    その反面、議員の定員削減や歳費、政党への国からの補助金の問題は裏に隠されたままです。私と同じ華人で、一番目立つ謝蓮舫に仕分けをやらせたのも国民の目をそこへ向けさせるためでしょう。
    また生活保護費は年間約2兆円、国民一人当たり2万円弱負担している勘定です。働いている人の給与より生活保護の方が金額が高いことがあるという馬鹿げた状態を放置して、働かない人たち(働けない人であればよいが)にカネをばら撒くことにどうして文句が出ないのでしょう。
    一人が2万円を負担する生活保護を1万9960円に減らして、残りの40円をクラシック音楽に回せばいいのですから、こういう針小棒大、枝葉末節なことで政府に踊らされるのはイヤです。
    趙秋瑾

  15. To ブリオッシュ或いは出べその親方さん
     私の知っているブログ書くひとって、みんな私生活書いているよ。けっこう面白い。

  16. 福島さんへ
    コメントありがとうございます。昨日の第九演奏会は、私個人のできとしてはとても合格点は出せませんが、皆さんとても感動されていました。テーマは「あなたの柔らかい翼のもと、すべての人々は兄弟になる」でした。満員御礼の大盛況で、合併5周年の市の記念行事としても成功だったようです。
    個人的には、最近韓国の人とはうまくやって行けそうな感じがしています。「人類は兄弟」というのは理念なのですが、北朝鮮や中国の自由のない政治体制のもとで仲良くできるわけがありません。鳩山首相の「友愛」ここのところをはき違えているようです。
    アメリカの普天間基地移設の判断をずるずると引き延ばし、天皇陛下と中国の習近平副主席の会見をセットしようとするなど、アメリカとの同盟を破棄して、中国の属国となる道を歩みたいように見えてなりません。本当に困ったものです。
    Hermes

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