化粧は大人になってから?

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 ■おお、上海ででかい花火があがりましたね。SKⅡ騒ぎは、じつは水面下の政治闘争から人々の目をそらす、煙幕だったか?あるいは、実はP&Gと上海閥はなにかふか~い関係があった(根拠なし)?この話題は、すでに紙面で詳報しているもようなので、今回は女性として結構関心ある、SKⅡ問題について。

 

 

 

 ■化粧とは成熟した女性の文化

  お子さま中国人に

  高級ブランド化粧品は十年早い!

 

 ■中国のSKⅡバッシングが、まだ続いている。はっきりいって異様である。香港の検査機関は25日までに、フランスのクリスチャン・ディオールやロレアル・ランコム、米国のエスティ・ローダー、クリニークの世界四大ブランドにもクロムやネオジムが微量含まれていると発表している。うちディオールやエスティ・ローダーのファンデーションのクロム含有量はSKⅡより多かった。これらクロム類は製造過程上、避けられない残留物、として普通に使用している分には安全、との判断が下されている。

 ■それなのに、中国ではSKⅡに続いて四大ブランドまで、と怒りの「けしからん」の大合唱だ。ちなみに、エスティーローダーのネオジムが検出されたファンデーションは日本製だった、と指摘しているから、やはり日本製化粧品が一番ターゲットになっているようだ。

 

 ■で、中国メディアはこう指摘する。「問題のある化粧品はすべて輸入品だから、中国の基準どおりに造られていない」。なに?だから、みんな中国製化粧品を使いましょう、ってキャンペーンに変わってゆくのか?

 

 ■わかった、わかった、もう君たち、そんな似合わない高級ブランド化粧品をつかわなくていいよ。中国市場開拓に必死な外資系化粧品企業には申し訳ないけど、やはり今の中国人には、ハルビンあたりの国営企業がつくっている美白クリームくらいが値段的にも手頃でしょう。中国の品質基準どおり、クロムは入っていないしね(ほんとう?)。でも、水銀かヒ素が混じっているかもしれないよ。と、普段冷静な私も、ちょっと嫌みのひとつでも言い返したくなるような報道である。


 ■この問題の本質はおそらく三つに分類される。五月下旬から始まった日本の検疫強化への対抗および報復措置(当局の思惑)。そして、市場を圧倒している外資系化粧品(化粧品に限らないけど)タタキ(企業の思惑)。そして搾取構造に苦しめられている低所得層のうさばらし(民意)。

 

 ■さらに、それにめざとく反応した独立系新聞が、煽動報道しまくったので、返品騒動はおきるわ、暴れてP&G上海本社の玄関ガラスを割るわ、調子にのってハッカーがP&Gホームページを攻撃するわ、中国ではありがちの集団ヒステリーが発生したのだ。

 

 ■中国では企業バッシング報道が載れば必ず新聞は売れる。それは中国社会の貧しき者(失業者に一時休業者、出稼ぎ農民ら)の不満の圧力が高いからだ。特権階級と企業(外資企業も含む)が結託して、出稼ぎ者を安い賃金でこき使い、搾取し、その金で私腹を肥やす。その不満や恨みを、企業バッシングや汚職高官の批判記事を読みながらはらすのだ。

 ■ただ、汚職記事は、一応厳しい報道統制がしかれ、新華社発表前には好き勝手書けない。だから企業バッシングがネタとして一番都合がいい、というわけだ。党の喉舌に甘んじるメディアも情けないが、庶民の不満を新聞をうらんがために無責任にあおる独立系新聞の「ジャーナリズム意識」というのも、まだまだ、である。とほほ。

 ■だからこそ、今回の騒動では、外資系ブランド企業のかたがたに特に肝に銘じてほしいことがある。一般市民の中に根強くある、高級品ブランドや外資系企業、あるいはそれを愛用する高所得層に対するねたみやコンプレックスは、普通の人が想像するよりもずっと大きな潜在的企業リスクなのだと。それを見越してのリスクマネージメントというのを、やはり常ひごろから意識しておくことが大切なのではないだろうか。(と、私ごときがあらためて言う必要もないか)

 

 ■SKⅡ非難を声高にさけび、怒りにまかせてガラスをぶち割ったり、店員の胸ぐらをつかんだり、ニセSKⅡの空瓶をもってきて定価の返金を要求したり、企業ホームページをハッカー攻撃するようなちんぴらまがいの行為は、一本600元の高級化粧品を愛用するリッチピープルの仕業ではない。報道写真などからさっするに、ここぞと騒いでいるのは、普段、SKⅡを使っているような金持ちを恨み、妬んでいる貧しき人々のようである。

 

 ■このバッシングの合唱は、SKⅡの品質そのものに向かっているのではなく、上流階級のステイタス・ブランドとそれを愛用する金持ちに向かっているのだ、と私は理解している。それは昨年の四月に発生した日貨排斥をスローガンにした反日デモと同じ構造だ。だから、またもや当局のコントロール不能の反日暴動に発展するのではないかと、ずっとひやひやしている。

 

 ■私は、中国当局の報復行動ともいえる検疫強化について、文句を言うつもりはない。5月下旬、日本が中国産農産品への検疫を強化し、これに対抗するため中国も日本製品・食品に対する検疫を強化した。これは結構どこの国もすることで、正直、両国の消費者にとって、プラスになることではないか。こうやって検疫を強化しあって、より高品質の商品をお互いの国民に提供しあえばいいのだ。SKⅡにどうでもいいようなレベルのクロムの存在まで突き詰めた中国検査検疫当局の執念というか努力は、ほめてやってもいいくらいだ。

 

 ■しかし、消費者に、その検査結果や情報を冷静に分析する能力がまだない。いちおう、中国報道でも細かくみれば、海外では問題ない、とされて騒いでいるのは中国だけ、ということはわかるし、中国化粧品と比べてどうなのか、という疑問もわくはず。

 

 ■私は化粧品の品質にもともと懐疑的である。たいていの高級ブランド化粧品にクロム、ネオジムなど体にあまりよくないものも、微量ながら入っていいることは事実で、いやそれくらい大丈夫なのよ、と思うかどうかは消費者の判断である。総合的に情報収集して、いろいろ疑問をもって、いろいろ使ってみた自分の経験などから、A製品よりはB製品がいいとか、自分で判断するのである。

 

 ■そういう判断ができないというなら、それは消費者としては成熟していない証拠ではないだろうか。だから、今回大騒ぎしている中国人にいいたい。やっぱり、化粧は大人になってから。
 

「化粧は大人になってから?」への31件のフィードバック

  1. 突然のコメント、失礼致します。
    ものすごい参考になり、また
    説得力のある文章でした。
    ありがとうございます。

  2. 福島さん。見事な解説。
    「南方都市報」の記者も、「北京趣聞博客」見てるんじゃないですか(笑)。

  3. はじめまして、こんばんは。
    なるほどと膝を打つ解説、ありがとうございます。
    それにしたってこの一件、かなりの数の日本女性を敵に回したんじゃないでしょうか。
    私はさほど詳しくはないのですが、日本女性のコスメフリークっぷりには凄ものがあります。
    クリスチャンディオール、ランコム・・・ファンが大勢います。そしてなにより中国製の化粧品にいいものなんて、聞いたことがないのです。
    これから先、中国はどうしたいと思っているんでしょう。少なくとも、私も中国大嫌い度が大幅アップしました。

  4. 今年の1月だったか、アメリカの国務副長官のロバート・ゼーリックが来日したさい、たまたま横浜税関で輸入肉のなかから骨付きのTボーンが見つかって大騒ぎになった。
    ゼーリックは私の想像では小泉総理に、「頭ごなしに」日中関係の改善は日米関係にとっても死活的に重要であるといいにきたのだと思うが、Tボーン騒ぎで逆に平謝りになってしまい、そのまま北京へ行ってしまった。
    なんとタイミングの悪い(良い?)ときに、違反牛肉が見つかるのかと不思議なぐらいだが、福島記者の鋭い分析記事を読んで、天真爛漫なのは日本人だけのような気がしてきた。
    普通の国になるということは、「美しい国」から大分距離がありそうです。

  5. 今日は辛口?ですねぇ。
    中国の新聞でもちゃんと読めばいろんなことがわかると思うんですが、なかなか・・・・。中国人の学生たちにはいつも「新聞も教師も信じるな!もちろん私のことも信じるな(笑)!自分で考えろ!」って言ってますが、方法がわからないのでしょうね。
    >当局の執念というか努力は、ほめてやってもいいくらいだ。
    わたしもほめちゃおうかな。ここまでやる国、笑えてきます。ここまでやるから笑い事じゃないか・・・・。
    今回のこれは、完全に国内向けなのでしょうか?
    外国製品のイメージダウン&ガス抜き
    日本をはじめとする外国には「嫌がらせ」であることをまったく取り繕っていない感じがします・・・・

  6. これは特大ホームランですね。
    正論のカラーページに特集組んでペーパーとして残して欲しいです。もちろん、京浜東北線の中吊りは赤バックの太い文字で。
    ブランド名とメーカーについてはあまり知識が無いのですが、“サッスーン家”の製品はバッシングの対象に含まれてるんでしょうかね。アヘン戦争で大儲けした血脈はシャンプー&リンスで有名ですが、ヘロイン精製技術をベトナム戦争当時の支那政権に指導してやったからしっかりリストから外されてるのでしょうか。

  7. ちょっと前に上海の同僚に「SKⅡってどう?」と突然聞かれたのを思い出します。
    当時は「SKⅡ=桃井かおり」だったので、「うーん、若いあなたには必要ないんじゃない?」と答えておきました。「でも、すごく人気なんでしょう?」と、かなり欲しそうでした。
    SKⅡは、P&Gでも日本発コスメで一番のヒットだそうですね。外資に勤めているものとして日本発のヒットにうれしい思いをしていましたが、こういう形で中国人のターゲットになるとは。。。欧米企業内で嫌な形の日本バッシング(日中の争いを俺たちに負わせるな、的な)が起こるのが心配です。

  8. 中共政府の意図がよくわからないですね。日本たたきというより世界に広がってるし。技術は吸収したので、もう外資はいらない、出てけということかな?
    よくわかるのは、内外を問わず、どんな企業でも難癖をつけて叩けるということで、日本企業はすみやかに撤退するべき、追加投資などもってのほか。
    あとは、役人だけでなくジャーナリストにも常日頃から接待しておけということでしょうか。
    ところで資生堂の名前が出てきませんが、今回は無関係?

  9. 櫻井 結 さま:読んでくださってありがとうございます、ブログ拝見しました。お美しいですね。お肌などぴかぴか。化粧品選びには十分気をつけて、神様から与えられた美しさを大切に、イザンヌオーディションがんばってください。

  10. sakuratou さま:いつもお立ち寄りありがとうございます。中国報道のあしたを信じてはいるものの、こういうノリの報道をみるとまだまだだねぇ、と思っちゃいますね。南方都市報記者がもし、このブログ見ているんなら「応援しているんだから、しっかりしてくれ」といいたいです。

  11. ヌュー さま:私、その昔文化部生活班記者をしており、化粧品の取材もたいがいいたしました。SKⅡもランコムもディオールもエスティ・ローダーも、クリニークも全部自分のお肌で経験ずみ。もちろん、中国の漢方クリームなども。で、意外かと思うのですが、中国の漢方クリームの中には、結構いいかも、と思うものがあります。宣伝になるので、ここでは名前をだしませんが。
     化粧品というのは、けっこうヘンなものが入っていて、100%安全なんてものはほとんどないと思いますが、その中で、自分の肌にあうものを、捜して選んでゆくのも女性の楽しみであり、文化なんですよね。

  12. weirdo31 さま:現象のうらに、誰かさんのおもわく、というものは必ずありますよね、それが外交であるかぎり。

  13. nhatnhan625さま:いや、中国、やればできるんじゃん、と思いました。その検査検疫能力をぜひぜひ、自国商品に使ってほしいです。

  14. nhac-toyota さま:サッスーンはまだ、名前があがっていませんね。中国の市場は決して小さくない気がしますが。

  15. goldenpig1000 さま:欧米企業の対応が、気になるところですね。エスティ・ローダーは、問題のファンデーションは中国市場に出していない、としています。

  16. koku さま:今回問題になった化粧品はみな外国産の輸入高級化粧品でした。やはり、中国で製造し中国現地に雇用と税金をもたらしている資生堂は、OKなのかも?ひょっとしたら、資生堂がシェアをのばすきっかけになるやもしれません。政府の意図はやはり、対日報復措置だと思います。これをなぜか、香港が火消しにかかっています。4大ブランドの検査を民間の検査機関に委託し、クロム含有はSKⅡだけじゃない、これは製造工程で自然に含まれるもので問題ないと火消し報道しにかかっているのは、香港有線テレビでした。これは香港メディアの良心か?あるいは、高級化粧品輸入については香港が中継地になっているとか、なにか利権がからんでいるのかも(根拠なし、調べてません)。

  17. このような事をきっかけに、チャイナ・リスクに日本企業が目覚めてくれれば幸いだと思うのですが、欲に目が眩んでいると難しいかも知れませんね。
    有るがままの姿を見る事からしか、友好など有り得ないと、何時も思っているのですが。
    何時も記事を楽しみにしています。
    これからも、女性の目だからこそ、見える部分にも期待しています。

  18. kokuさん同様、資生堂の名前が出ないなぁ、と思っていました。 
    中国ビジネスに関わっているのですが、来日する中国の女性には日本本土製の資生堂化粧品を買って帰る方が少なくないですね。 中国製にはクロムが入っているからって訳でもないでしょうが…。(ところで、関係無いですが、半導体基盤、チップの製造プロセスにとって重金属は大敵で、もしクロムが検知されたら化粧品を汚染源と疑え、が常識です)
    昨年の反日デモ騒ぎの折、背後に中国チェーンストア協会(?)の動きが垣間見られる、そして同じく劣勢の欧米系同業者も一枚噛んでいる、との報道が有りましたね。 今回は、中国と資生堂が結託して…、とは安っぽい謀略説かな。
    貴方ならではの政治的背景についての突っ込んだ追跡報道を期待しています。

  19. 鋭い分析ですね。
    庶民の妬みまで思い至りませんでした。
    しかし中国は2000年の韓国とのニンニク戦争、携帯、ポリエチレンを輸入禁止
    2001年、日本のイグサへのセーフガードに対し
    自動車、携帯、空調機への特別関税、何と100%!
    2005年3月、日本のアサヒビールなど排斥運動
    2005年、韓国とキムチ戦争 キムチ輸入禁止など素晴らしいとも言える戦績です。
    新たにポカリスエットが槍玉にあがっているようです。
    当局も黙認しているようでどこまで行くのやら。
    1951年の日貨排斥が繰り返されるのかと思ってましたが人民のガス抜きとしてやっているのでしょうか?

  20. 世界最大のマーケットなどとはしゃいでいた、経済系新聞などはこれをどう見るのか?
    リスクと収益を天秤にかければ、まだ今はリスクが大きい国であることが、今回の件でよく判って、良い薬になったのではないかと思う
    現場での生の中国レポート、本当に参考になりました!!!

  21. 言論規制強化の中で独立系新聞が売れるネタと規制のかからないネタとして外資叩きを行ったのではという分析、非常に説得がありますね。
    資生堂ですが、22日の段階で名前が挙がっていたので、「もしやこれは?!」とワクワクしていた(失礼)のですが、今のところ資生堂は外れているようですね。
    ttp://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0609220009&cat=002CH

  22. 初めまして・・・
    すみません、中国のSKⅡの値段はどのくらいなのでしょう?日本でも高額でファンデーションが15000円位ですよね。最近、成金の中国人が増えて人気なのでしょうか?

  23. 中国の検査強化 日本標的の意図ありあり 北國新聞
     日本から輸入した化粧品から、使用禁止の重金属が検出されたと中国当局が指摘した「事件」の背景には、日本を標的とした、あからさまな意図が見て取れる。日本が食品の残留農薬に対する規制を強化した結果、中国の農産品輸出が激減していることへの報復措置であるのは明らかだろう。
    http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm

  24. oguogu2006 さま:楽しみにしてくださっているとのこと、励みになります。企業の方々は、きっと私などよりも、よっぽど中国の裏も表もご存じのことでしょう。リスクのないところに旨味もありませんものね。がんばってほしいものです。

  25. riceshowerさま:資生堂の謀略説は、ちょっとファンタジーだと思いますが、改革開放路線、外資牽引型経済を信奉していた上海閥の落日によって、ひょっとすると外資系企業は今より厳しい状況になるかもしれません。まず税金、今の優遇政策が徐々に変わり、国内企業保護の方針が強くなるかも。まあ、これも私の妄想ですから、話半分ということで。

  26. take8 さま:ガス抜きをねらって、かどうかはわかりませんが、結果的に庶民がエキサイトするのは不満の発散が目的ですね。ちなみに、インターネットの使用者らが書き込んでいるとみられる掲示板は以外に冷静なんですよ。つまり、高級化粧品を実際に使用している、金持ちたちは、やっぱり中国化粧品よりはいい、と思っているようです。

  27. sarah さま:わたしも中国経済バラ色説を根拠なくあおった某経済新聞の罪が問われる日がいずれくるような気がします。

  28. タソガレ さま:資生堂の戦略が優れていることは、業界の間では結構有名なようです。中国人のためにつくった商品です、というスタンスが、中国人の自尊心をくすぐっているそうです。

  29. damedakorea さま:化粧水が1本600元だったと思います。クリスチャンディオールの基礎化粧品もそのくらいだったと思います。中国のお金持ちは、すっごいお金持ちです。

  30. koku さま:ええ、報復措置としての検疫強化であることは、ほぼまちがいありません。これって、でも当たり前のことなんですね。で、消費者としては喜ばしいことです。もんだいは、その後の当局の説明とメディアの対応、消費者の反応の未熟さだと思います。

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