■今日はiza編集局から依頼された新年企画「2007年の中国予想」をアップしようと思ったのだが、明日付け新聞ように出稿予定にあげて、記者会見までいって質問して書いた記事が情報欄扱い(つまりミニ記事)になったので、かわいそうなボツ原稿を先にアップすることにした。
以下転載
【北京=福島香織】中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)常務委員会は29日、これまで外資企業が優遇されてきた法人税の税率を国内企業と統一して25%にする「企業所得税法」の最終草案を採択した。同草案は来年春の全人代で審議され、可決されれば08年1月1日から施行されるみこみ。10年以上におよび中国経済の牽引(けんいん)力となっていた外資優遇政策が転換されていくことになる。
これまでの税制では、国内地場企業が33%なのに対し、外資企業は15-24%の税率で、さらに黒字になってからの最初の2年は免税、その後3年は税率半減という「2免3減」という措置がとられていた。このほか業種別、開発区ごとの優遇措置があり、日系企業の税率は多くが10%台だ。
これが改正後は25%に統一され「2免3減」措置もなくなる。一方、ハイテク、省エネ、環境保護企業への優遇措置は拡大される。税率の完全統一までには5年の移行期間がもうけられた。報道ベースではこの税制改正により、国内企業からの税収は1340億元減少し、外資企業からは410億元の増収で合計すれば930億元の減収になる。
海外からの対中投資に影響するとの懸念から地方や商務省からの抵抗も強った国内外資法人税の統一だが、対中投資ブームのピークがすぎたこと、国内企業や国民から外資優遇政策への不満が高まっていること、その不公平感が国内企業の脱税を誘発していることなどから、改正の必要性を求める声の方が大きくなっていた。日系企業の多くは冷静で「コスト安ではなく国内市場の潜在力に魅力を感じて進出する企業にとっては外資優遇策の解消によって対中戦略に変更はない」(大手自動車メーカー)「国際的にみても、税率はまだ低い方で中国進出のメリットは大きい」(日系商社)という。
転載おわり
■企業所得税のネタは、日系企業利益にからむ関心事で必要だと思ったのだが、どうもデスクの受けがよろしくない。そういえば、今年の春の全人代のときに書いた税制改革ネタもボツだったなあ。
■しかし、さらに考えれば、中国の法人税改革の情報や背景など、中国に進出したり、進出しようとする企業はとうに調べて研究して対策をたてている。新聞記事程度の情報なんて、そんな人たちにとっては参考にもならな。また、はっきりいって中国に進出しよう、という企業関係者以外、中国の法人税改革など関心ないか。そういう点で、こんな原稿は、新聞に大きく載せる必要ない、ミニニュースでいい、というデスクの判断はやはり正しいのだ。
■そもそも、こういう公式発表記事は経済専門記者を擁する共同通信などがしっかり書き配信し、それが数時間後にネットで誰でも見れる時代。英語が読める人は、ロイターやAPのネット上の転載がすぐに読めるし、中国語が理解できれば全人代常務委員会の記者会見記録が直接読める。その情報を必要としている読者にとっては、新聞などに頼らずに、すきなだけ情報が集められる時代なのだ。
■では新聞に載せる必要とされるニュース、記事とはなんだろうか。
①公式情報でない情報。現地でみたり聞いたりしたこと、自分だけが知っている情報、オフレコの匿名情報。
②そのニュースを必要としていない人にこそ関心をもってもらうような書き方の記事。
■例えば、法人税改正も、中国企業の脱税テクや税金に対する認識の違いなど(例えば、税金なんて所詮、大部分が役人の懐に入ってしまうと庶民は思っている。だから脱税は当然と思っている)なんてエピソードをまくらにもってくれば、法人税改正に関心を持っていない、ごく普通の読者も興味をもって読んでくれるかもしれない。でも、そういう書き方にすると、紙幅がものすごく必要で、普通のニュース記事の枠には入らない。それって雑誌原稿の書き方だ。そんなものは、行数制限のないブログでかけ、ということになる。
■いや、ブログをはじめて、読者からコメントをもらうようになったり、自分の書いた記事についてのブログエントリをみるようになって、新聞記事として何を書くか、何を送るか、考えるこむことが最近多くなった。昔は、ファクトをコンパクトに伝えるだけでよかった、と思われていたのだけれど、そうじゃなくなってきたのかあな、と。
やはり、基本は、淡々とした「ファクト」であって、ヘンな(過剰な)脚色や演出は不要ではないでしょうか。それぞれの記者さんが、“得意”分野で特色を出すこと(好きなこと、気分の乗っていくものが肝心)も必要ですが、何はともあれ、“伝えたい”という動機のないものには気分も乗っていかないのでは…。政治とか経済とかの大局からの視点も必要なのかもしれませんが、それと同時に、非常に至近で瑣末な身の丈サイズの、ごくごく日常の身の回りのできごとなどを写しとることも、意外とウケる、あるいは、受け取る側にとって、何がしかの大きな意味をもつこともあるかもしれません。
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/93623
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/61175/
たとえば、
『中国の日本たたきも始まったようだ。南京虐殺を主題にして、大陸内各所の展示を拡張し、米国では「アイリスチャン」の原作で映画を作り、日本人町では「南京の日」を実施するという。きっと内部の不安を「反日」に誘導する準備なのであろう。』
http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20061229/1167371472
って、本当なのかな? とか。淡々と現場の目の前の事実を拾っていくしかないのでは…。いくら面白くてウケるからといっても、「大紀元」みたいになるのもまたちょっとねえ…。
福島さん。
新聞社の中国報道は、社として中国(中国共産党体制)を是と見るか、非と見るかで大きく異なるのではないでしょうか。もちろん、産経さんは後者だと私は思っていますが。しかし、読者の立場からいうと記者の視点に共感を覚えるかどうかが重要ですね。記事に記者の“意思”が感じられるかどうか。
私は福島さんには、古森さん、黒田さんのような産経の名物記者になって頂きたいと願っております(笑)。
追記:小職一足先に中国を去りました。寒さ厳しい北京、くれぐれもお身体ご自愛下さい。
社内の人間ですがはじめまして。私も、何を書くべきか、何が求められているのか日々、悩みながら日常の仕事をしています。失礼しました。
とりあえず転載部分♪
シナーさんの外資ドーピング技(踏み倒しもセット)はある意味尊敬というか
外債発行嫌いの日本人には真似できん。
(清朝末期もあるいみ見事だったし、それ以前から…)
資本主義に向いているかは疑問点あり(「等価交換」ができない)だが
実態は「株式会社とは名前だけの大きな自営業」ばかりな日本よりも
「有限責任会社」の扱いは巧そうなんだよな。昔から思っていたけど。
デスク受けが良くないから読者にもウケない。と考えるデスクが取捨選択したから記事はウケたのか? 限られた紙面スペースに載せるべしと意図された記事に読者が飽きてきたから部数が伸びないんじゃないの?ウチでも家族からつい最近「サンケイ取れば?」と言われて、「ええ?ずっと◎◎じゃん」とびっくりしたケド、駅売り(すみませんがごくタマ)で買えばヨシと購読はしていない。私が新聞に求めるのはその程度のものです。政治屋の記者会見とか気になる部分はYoutubeなどで、できる限り全文を見たい、聞きたい、と探します。記者会見からメモを起こした阿比留さんの記事などは全部読みます。記者会見とかの全てを共有できないことはわかりますが、出来る限り全体を知りたいからです。紙に頼らない今世紀のジャーナリズムはもうスグそこにあります。“こねた”が日本のジャーナリズムを引っ張って、支那の報道を劇変させるくらいの期待を持って、コタツの上のPCからぬくぬくと応援しております。
おそらくデスクさんは、それは日経向きの記事で、産経の読者層には合わないと判断したのではないのでしょうか。
全人代だとどうしても政治向きの話のほうが面白く感じます。
新旧主席間の権力闘争の一貫として企業所得税法改正を捉えると受けもよくなるのでは?
>新旧主席間の権力闘争の一貫として企業所得税法改正を捉えると受けもよくなるのでは?
一貫じゃなくて一環です。恥ずかしい。
FEPに頼ってばっかりいるとやっぱりいけませんね。
反省
在香港です。
先日の台湾南部沖の地震で、当地のネット環境及び国際電話環境が著しく劣化してしまい、多大な影響が出ております。
現地発行の日経国際版、朝日国際版、読売衛星版の各紙、28日付紙面で1面とは言いませんが、少なくとも国際面あたりでその深刻な状況を伝えてくれるかと期待しましたが…。見果てぬ夢でした。
でも、現地支局は3紙とも本社へその混乱を伝える原稿を送り続けていたのを、私は知っています。必死で関係方面へ取材かけていたのも知っています。「現地発行なのに現地の読者に役立つ記事がボツになった…何のための『国際版』なのか…」。某紙支局長が悔しそうに言ってました。「必要とされる記事とは」、考えさせられますね。
福島様
パスカルの「人間は考える葦である」を思い出しました。中国の現場からありがとうございます。
私がジャーナリストに期待するものを考えてみました。
1、淡々と事実を検証して書かれている記事。
(共産党の宣伝の裏を書くほどの洞察が必要)
2、他社の記事の検証記事。(念頭にあるのは朝日や東京や中日などのプロパガンダ新聞社です)引っ掛けられるのがとても不快なので。
3、そのあたりから深化して、現在出回っている情報が、どれほどの実質的な価値があるのかという、時代背景や共産党などのプロパガンダをも包含した洞察。(これは社説の類になるのでしょう)
福島香織様
必要とされる記事とは、事実に関連して対象者とってなくてはならないこと、どうしてもしなければならない情報が書かれた文章ということで、対象者を“書かれる側”・“通信する媒体”・“読む側”、“漁夫的受益者”に分けて、其々の目的(意図・方針・目標)思案すれば解り易く、例えば「実際にあったこと;事実;ファクト(fact)」であっても、誰にも必要でない記事を書き続けると「マスゴミ工場/マスゴミノケーションファクトリー(mass GOMINOCATION factory)」になってしまうのではないでしょうか。
で、取敢えずは、「政権好い書」が、ウヨ系のコンサバには人気があり、サヨ系のコンサバには反発されて盛り上がるから、“通信する媒体”にとっては、売上の維持向上のために必要な記事ということになると、素人ながら私は推測しまします。
To ニッポニア・ニッポンさん
あけましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いします。
まず、伝えたい、という思いが大切、ということでしょうか。
To sakuratouさん
あけましておめでとうございます。北京は雪ですよ~。本年も当ブログをよろしくお願いいたします。
記事には気持ちをこめる、ということと冷静かつ客観的な報道というのは、けっして相反することではないですよね。記者の思いが感じられる原稿を心がけていきたいと思います。
To 阿比留瑠比さん
あけましておめでとうございます。今年も、ブログたのしみにしています。
当ブログも更新がんばりますので、ご笑覧ください。
To izu-chanさん
あけましておめでとうございます。今年も当ぶろぐ、よろしくご笑覧ください。
外資企業の優遇政策は五年の猶予があるから、あまりマイナス影響はないかもしれませんが、国内企業の33%からの減税は、けっこう中央財政には響くようです。それでも、あえてやるのは、やはり、外資ばっかり優遇されてもうけてやがる、という国内の不満をおさえる意味も大きいのかもしれません。昨年は外資バッシングがめだつ年でした。
To nhac-toyotaさん
もういちど、あけましておめでとうございます。紙に頼らぬジャーナリズムはもうすぐそこに。だからこそ、何をどう伝えるか、という記者の姿勢がとわれてくるのかも。がんばります。
To ゆーこさん
二度目のあけまして、おめでとうございます、です。
中国の場合、すべての事象が、政治、権力闘争で切れる要素がありますからね、そういう切り口だと、読者に興味を持ってもらえるのでしょうか。
To leslieyoshiさん
あけましておめでとうございます。本年も、当ブログをご笑覧くださいませ。
私の中では、災害報道は最もプライオリティの高いニュース、のはずです。広範囲で大勢の人が同じ原因で死傷し、同時にライフラインやインフラが寸断され、情報が滞りがちで、緊急の援助を必要とする、と思うからです。でも、海外の災害の場合、日本人が直接巻き込まれた、というのでなければ、よほど大きいケースでないかぎり、デスクの反応はにぶいですよね。中国は自然災害(人災も含む)がしょっちゅうなので、この程度の死者では記事にならない、と判断してしまう自分に、ときおり気づいて、ぎょっとします。
To kikuti-zinnさん
あけましておめでとうございます。当ブログを今年もよろしくおねがいいたします。
できるだけ、読者の期待に添える原稿を、と考えていますので、ご意見などありましたら、お願いします。
To banchanさん
あけましておめでとうございます。今年も当ブログの起こしをお待ちしております。
記事にはやはり、検証と洞察がもとめられているのでしょうか。
検証、洞察というのはそれなりの経験の蓄積が必要なので、簡単ではないですが、精進いたいします。
To mochizukiさん
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
新聞の売れ行きにつながる記事、というと政権よいしょ記事なのでしょうか??
福島香織様
新年おめでとうございます、本年もよろしくお願いいたします。
政権好い書と、政権悪い書のどちらがの記事が、新聞の売れ行きに繋がるか私には分りませんが、私の場合はどちらからでも政治の実相は読めるような気がします。
因みに、現在私は朝日新聞を購読しており、本年7月からは読売新聞契約していますが、産経新聞はここに十数年間一度も売り込みにきてくれません。
見方?味方?文脈からすると「味方」が正しいようです。
華人は「味方」を「同居人」ととるようですね。
光生館「簡約 現代中国語辞典」をひくと、「味」の項目に日本語の「味方」の意味は無かった。旺文社国語辞典をひくと、「味方」の項目に「一味(≒一派)」とあり、日本人ならああ、とわかる。「味」の字の項目にも六番目に「なかまのこと。」とある。
古い中国語に、仲間、という意味があったのでしょうね、味。