更新を没原稿でごまかす。

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■周正毅という上海の元・大富豪がきょう、贈賄、横領なので懲役16年の判決をうけた、と新華社が報じた。誰も総局にいないし、私が書くか、と思い、デスクに「原稿、いりますか?」と連絡。で、いるというもんだから、書いて送ろうとしたら、出稿直前に他の記者がもう書いて送っているから、いらない、と。というわけで、没になった記事はブログに貼り付けておこう。

■上海一の大富豪、またもやブタ箱に逆戻り!
でも、江一族はセーフなのだ!
と私が言った訳ではありません。香港の人権団体がそういっているんですって。

■中国国営新華社通信によると、上海市第2中級人民法院(地裁)は30日、上海一の富豪と呼ばれたこともある実業家、周正毅被告に贈賄など計5件の罪で懲役16年と罰金335万元の一審判決を言い渡した。周被告は、国家公務員に対し127万元余り相当の贈り物や40万元の現金をわいろとして贈ったほか、増値税をめぐる架空領収書12億元分の発行、株価操作を行ったほか、国家公務員に20万元を渡して、ぐるになって2億元以上の公金(英雄集団株式会社の資金)を横領を指示した。

■周被告は2003年5月に発覚した中国銀行香港法人の劉金宝元総裁による不正融資事件などにかかわったとして逮捕され、04年6月に株価操作などで懲役3年の比較的軽い実刑判決を受け06年5月に出所。しかし、同10月に再逮捕されていた。
 
■香港の人権団体・中国人権民主化運動情報センターによると、周被告は、目下汚職で刑事責任を追及されている陳良宇・元上海市委書記とその実弟との癒着がささやかれている。(記事はここまでの予定だったが、ブログに書くときはさらに詳細に続きをかこう)

■同センターによると、実は今回の裁判では、「上海農村信用合作社」という金融機関からの不正融資23億元の問題を追及できるかどうかが、ポイントだった。この「上海農村信用合作社(上海農信社)」は、周正毅氏だけでなく、江●●氏の息子の江★★氏の「財布」がわりに利用されてきた金融機関。つまり、今回の裁判で、上海農信社の不正融資が有罪判決になれば、上海農信社の過去の不正融資事件にも捜査の手が入り、江一族にも影響が及ぶ可能性大だったのだ。結果からいえば、判決文に上海農信社の名前は入らず、江一族はセーフ。これは今の胡錦濤政権の力不足というか、江一族に対する影響力の限界を示した判決といえる。江さん、まだまだ元気なのだ。

■周正毅、江★★の両氏は、2003年ごろまでに上海農信社から約50億元を不正融資してもらっていた。うち江氏の経営する上海聯和投資有限公司などの名義による融資は2・4億元。ちなみにこの50億元の融資は焦げ付いてしまい、時の上海市党委書記だった陳良宇氏が上海財政から補填したと疑われている。上海市は2005年5月に上海農信社に出資して、上海農村商業銀行に改組することで、この焦げ付き問題をうやむやにしたそうだ。ちなみに上海農信社の当時の責任者・鄭炳麟は2004年に退職後、ゆくえしれず、海外にこっそり逃がされたといわれている。周正毅が牢獄に入り、これで一応、江一族を脅かす人物は娑婆にはいなくなった?あとの心配は、陳良宇がどこまでぶちまけるか、である。

■周正毅氏のことを、誰やねん、そいつ、と思う方もいらっしゃるので、ちょっとおさらいしておこう。彼は改革開放の波にのって農民から身を起こし、日本に留学して、毛はえ薬などの販売などで小銭をため、90年代後半には飲食業と株と土地開発で急速に成り上がった上海一の大富豪。2000年「フォーブス」の長者番付11位にランクされたこともある。しかし、その蓄財の方法は、経営する飲食店で市の権力者とコネをつくり、株のインサイダー取引と土地使用権の不正取得による特権的土地開発によるものだった。特に黄菊(故人)、陳良宇ら上海閥とのパイプは非常に太く、たとえば強制立ち退き裁判問題に発展した、上海市静安区の再開発事業は、陳良宇の実弟の陳良軍の口利きでその土地使用権を取得したものだったし、このプロジェクトの批准は黄菊氏も当事者だったという。

■ちなみにこの静安区再開発は、強制立ち退きを迫られた市民と良心的弁護士がタッグを組んで抵抗、温家宝首相に公開書簡を送るなどしてアピールしたため、最初の周正毅事件(中国銀行香港法人の劉金宝元総裁がからむ不正融資事件)が2003年5月に明るみになった。劉金宝氏は周正毅との関係があいまいなまま、05年に執行猶予付き死刑という厳しい判決を言い渡され服役中。執行猶予付き死刑というのは、死刑までに2年間の服役があり、その服役態度がよければ死刑をチャラにして無期懲役刑に切り替わるという中国独特の刑罰。たいてい20年くらいで出てくる。周正毅自身は、当時の上海閥の影響力のおかげで、資本金虚偽報告と株価操作という軽い罪で懲役3年の判決を受け、昨年5月に出所していた。

■同センターによれば、2003年5月に劉金宝・中国銀行香港法人総裁が拘束されたあとの5月26日の夜、周正毅氏は江★★とカラオケ・クラブで面会したという。このときの周の携帯電話は盗聴されており、周と江の会話は当局に録音されていた。江がカラオケクラブを去ったあと、周はその場で拘束されたという。ちなみに、2回目の周正毅逮捕(昨年10月)は、周氏が中米のベリーズに高飛びする直前に身柄を押さえられたそうだ。彼はベリーズのパスポートをもっていたから、うまくいけば、第2の頼昌星になれたのにね。

■ところで、周氏の懲役16年の判決は重いのか軽いのか?比較のために例をあげると、今年8月17日に安徽省巣湖市中級法院が、6000万元の増値税をめぐる架空領収書を発行したビジネスマン・鄭天宝被告に出した判決は執行猶予付き死刑だった。劉金宝・元中国銀行香港法人総裁が、執行猶予付き死刑の判決を受け、全財産没収の上、ウワサでは暗殺をほのめかされて脅され、家人にまで監視の目が光っていることなどもあわせて考えると、周氏への対応は、第一回目の判決といい、今回といい、やはり比較的軽いと言わざるを得ない。周氏がこれまでやってきた上海閥への献身がよほど大きかったのか、あるいは彼が握っている指導者たちの秘密がよほど深いのか。周正毅氏にはぜひ、獄中で暗殺に会わないよう気をつけてもらい、無事に出所した暁には、回顧録の出版についてご相談させてほしい。産経新聞出版がきっとベストセラー作家にしてさしあげるだろう?

 

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「更新を没原稿でごまかす。」への22件のフィードバック

  1. 福島さん こんにちは。お疲れさまです。
    新聞掲載記事を書かれるときと、Blogを書かれるとき,
    福島さんのキャラに変化は起こるのでしょうか?
    記事とは関係ないですが、ふと,そんなことを思ってしまいました。

  2. 農民から身を起こして上海1の富豪になったこと自体が日本なら今太閤とでも呼ばれるのでしょうね。さらに政治的なスキャンダルがからむとこの人の回顧録は売れますゾ。しかし,今の中国には似たような例がゴロゴロあるかもしれません。
     日本では新潟の某政治家くらいでしょうか。
     いや、今話題の××洋行のオーナーもお役人と組んでdいい思いをなさったようです。最近は日本人でもシナ的な方が増えてきたようです。私はこういうのを「チャイナる」ということを提案します。

  3. 福島記者
    サイン本届きました。 男前なクリスマスプレゼント本当に有り難うございます。
    しかし、中国の印刷所は顧客の封筒に自社名刷り込むのね。 こないだみかん箱で国際郵便小包を華の国に送って無事届いたのですが、中国国内だとなんか規制でもあるのかな? それともマスコミの親書は「郵政管制局」の完全管理下にあるのか?
    封筒一つで異国情緒が愉しめるのも華の国ならではですかね?
    > 執行猶予付き死刑というのは、死刑までに2年間の服役があり、その服役態度がよければ死刑をチャラにして無期懲役刑に切り替わるという中国独特の刑罰。たいてい20年くらい…
    そういえば「SAPIO」の今週号で「死刑特集」やってましたな…まあ、服役態度の認定を行う獄吏次第でチャラなら、漢帝国時代から受け継がれた伝統か?(百万銭で免罪だったそうな…払えなかった司馬遷は宮刑で死刑回避…) 現代中国に於いては「泣いて馬謖を斬る」逸話は好まれないのですかね?

  4. 福島香織様
    里帰りした際「危ない中国点撃!」を書店で買い求めました。内容はブログと同じですが、ブログの『永久保存版』として時々本棚からとり出しでは読んでいます。
    それにしても胡さん大変ですね。何年も前に引退した筈の江氏が全人代でナンバー2の席にふんぞりかえって権力を手放そうとしないし。軍部は軍部で独立王国を誇示して、いくらあっても足りない予算を食いつぶすし。
    小泉さん首相を辞めて、どれくらい影響力があるのでしょうか。1年生議員よりはあるでしょうが。

  5. キャラは同じですが、デスクの目がひかりますので、はっちゃけ具合にブレーキがかかります。

  6. To 無駄話さん
     似たような話はごろごろありますが、改革開放の波にのって80~90年代に成り上がった大富豪が10人いれば7人はすでに監獄の中か海外に逃げいている状況です。

  7. To 一閑さん
    >そういえば「SAPIO」の今週号で「死刑特集」やってましたな…まあ、服役態度の認定を行う獄吏次第でチャラなら、漢帝国時代から受け継がれた伝統か?(百万銭で免罪だったそうな…払えなかった司馬遷は宮刑で死刑回避…) 現代中国に於いては「泣いて馬謖を斬る」逸話は好まれないのですかね?
    私の友人で拉致監禁傷害罪で2年服役して出所したビジネスマンがいますが、彼の話では、監獄ライフが充実しているかいなかは、カネをもっているかどうかで決まるそうです。彼はニューヨークの不動産をうって、弁護士を通じて裁判官を買収し、12年の罪を1審判決を2審で2年に縮めました。監獄の中では市場経済が発達し、たばこや酒、缶詰などの加工食品が売買されていたそうです。カネがあれば、獄吏を買収して、たばこなどの嗜好品を獄内に持ち込み、それを使って商売ができますし、シャワーの回数なども取引できるとか。周正毅氏も、全財産没収にはなっていないし、相応の隠し財産はあるだろうし、それなりに快適な監獄ライフが約束されていることでしょう。

  8. To mapotofuさん
     なんのかんのいって、小泉首相は、歴史に名を残しましたね。中国人の隠れファンも実はおおいんですよ。日本通の某高級官僚の娘さんや奥さんも、小泉さんを格好いいといっていました。ある中国人公務員は「他有種」といっていました。どういう意味かよくわからないんですが、ほめ言葉らしいです。能力がある(ただし、それゆえ恐るべき人物)というニュアンスらしい。彼のよいところは、その気になったら宰相に返り咲けるだけの力をもちながら、そういう権力への未練を一切見せないところですね。感心、感心。

  9. 福島記者
    >…カネがあれば、獄吏を買収して、たばこなどの嗜好品を獄内に持ち込み、それを使って商売…
    ナマの発言だけに唖然とさせられますな…しかし、拉致監禁傷害罪って…任侠系か?
    華の国は「プロレタリア革命(笑)」への道を着実に歩んでると考えます♪

  10. 福島さん、こんにちは
     ブログとコメントを拝見させて頂きました、素顔の中国を紹介できて、お疲れ様です。
     僕は中国人にとって、耳に痛い記事が沢山あるが、日本国民に事実を伝えて記者の本領だと思う、汚いことを綺麗に偽って書く必要がない、頑張ってください。
     中国の現状を日本の新聞は経済を中心に報道する傾向があまり強すぎる気がする、人権侵害、法輪功修練者迫害、汚職、弁護士迫害、民主団体弾圧、刑務所内虐待、直訴する人達の悲惨な生活、都市再開発に関する住居の強制撤去などなど、ほとんど報道されていない。真実をもっと伝えてほしい。
     話しはちょっと変わるが、ブログのコメントについて:
     コメントをいろいろ見たけど、他人事、嘲笑するのが結構あったが、僕はひとつ聞きたいことある、共産党独裁政権が今の中国の万悪の源は日本国民も分かって頂けたと思う。しかし、共産党が中国の政権を握らせたのは日本であることを忘れてはいけないと思う。少しでも、中国の民主化に協力してほしい、ただ、嘲笑するだけなら、日本の民主主義、国民性が疑われることになると思う、耳に痛いかもしれないが、どうか考えてくさい。
     初めてコメントを書いたが、間違いところがあったら、ざひご訂正よろしくお願いします。ありがとうございます。 

  11. 昨日署名本が届きました。ありがとうございます。
    早くも続編期待してますが、くれぐれも身辺に気をつけてください。

  12. こんにちわ!、何時も興味深く、ブログでも紙上でも福島さんの記事読んでます。
    未だに法治国家ではなく、独裁政権の上層部に依る人治国家ですね!。
    ほんの20年位前までは契約に関する法律も無かったのです。私の知人も当時、納期遅れや契約商品と違う物を送りつけられて苦労してました。
    最近は日本からも随分投資資金が中国へ入ってますが、いつか突然に役人さん達の都合で、小さな事柄に難癖をつけて、営業停止処分され設備は全部没収なんてことも起こるのではないかと、ハラハラしながら日本企業の進出を見ています。
    過去には沢山こんな事がありました。
    年間10%以上の経済成長を続けているのですから、経済・社会の変化に法律制定が追いつかないのでしょう。日本でも同様の事象が起こっていますが、
    進化する中国社会の実態と法律整備速度の乖離なども知りたいです。
    ともかく「水・空気・・・カップラーメン」に至るまで毒入りには気を付けて
    頑張ってください。

  13. 久しぶりにコメントさせていただきます。
    汚職・収賄・・・・お家芸ですけれども、当局の信用性のなさもお家芸。
    ぐっちゃぐっちゃに見えるのは私だけでしょうか。

  14.  福島さん、署名本をありがとうございます、感激です。 一気に読みたいのですが、なにぶん僕は、気が小さいので刺激的な内容に圧倒されない様に、読ませて戴きます。 今後も、ジャーナリストとして臆することなく、大胆な記事や本の出版の御健闘を願ってやみません。

  15. エントリーと無関係な話で申し訳ありません。
    最近、スーパーの食品売り場で不思議な光景を見掛けます。中国産が見あたらないんです。別に中国産を買おうと思っているわけではありませんが、あれほどあふれかえっていた中国産が忽然と姿を消したことがとても不思議です。一方で中国産食品の輸入量は減少していない、という情報もどこかで見たような気がします。
    すると、中国産食品はどこへ消えたのか?
    ミステリーですね。
    唯一可能な合理的推論は、大がかりな「中国ロンダリング」。
    流通経路の途中で中国産がいつのまにか国産に変身。
    これしかありませんね。

  16. To 一閑さん
     出張の間に乗っ取られた会社を取り返そうと、人に頼んで監禁してもらったそうです。本人は、相話し合うつもりだったようですが。商売上のトラブルを、警察とか弁護士とかを通して、法に従って解決しようという発想はないのかな~、とつくづく思います。

  17. To jackdanさん
     コメント、ありがとうございます。私も中国の共産党政権樹立には、日本も結果的に荷担したと思います。日本が手をださなかったら、中国は国民党政権になっていて、今頃は台湾みたいになっていたかもね。ですから、日本は中国のよりよい明日のために、積極的に協力すべきだと思います。一衣帯水の隣国だし、中国が安定してくれないと、日本も落ち着けません。
     民主化という概念は、定義が難しく、たとえば日本の民主主義が欧米のそれと同じであるかどうか、という疑問もあります。中国が民主化するにしても、いろんな方法論があり、実際内部ではいろいろ議論されているのでしょう。すくなくとも中国には普通の人々の民主的権利が法によって擁護される社会になってほしいと思います。それが国として安定する基本だと思うからです。私は中国のことを批判ばかりしている、とか反中記者とか思われているらしいですが、はっきりいって、好きですよ、この国。おく深いです。すきじゃないとそんな細かいところ見ていられません。
     中国経済の研究者でしられる小島麗逸先生に先日、お会いしたときおもしろいたとえを聞きました。「中国は、頭は良くて世界一を目指しているのに、体はメタボリで肥満体、足先は糖尿病の末期で壊疽になりかけている国」。
     そういう中国に「太り過ぎだ。このままだと足が壊疽になって立てなくなるぞ」と、ちょっとキツイ口調で注意すると、「デブだと侮辱された」と名誉毀損で訴えられる、私というか産経新聞の立場は、そんな感じでしょうか。
     でも、中国の足が壊疽でやられて立っていられなくなると、まっさきに影響を受けるのは一衣帯水の日本経済ですから、やはり、いやがられても、言わなきゃ、とも思うのです。

  18. To boyakijijiiさん
     例のカップラーメン、殺鼠剤が原因らしいです。何で混入したのか、なぞです。ちなみに、登校途中にカップラーメンをどうやって食べたか巷で疑問のようですが、農村の小売店では、カップ麺にちゃんとお湯までいれてくれるんですよ。安物のカップ麺は1元くらいなので、一緒に登校するとき、友達とわけあって食べたんでしょうね。殺鼠剤はお湯に入っていたのか、ラーメンの製造過程で混入していたのか?うーん。何の目的で?

  19. To bitterさん
     この国で、何が本当かうそか、見極めるのは本当に難しいです。新聞記事は客観的事実が大事だ、と教えられてきましたが、結局、私たちにできることは、事象をある角度でみた様子をお伝えするぐらいです。

  20. To thinkingさん
     ありがとうございます。そんなに、刺激的じゃないと思いますよ。タイトルだけですって。

  21. To stopchinaさん
     実際、中国野菜・農産物の対日輸出は急激に減っています。理由はポジティブリストが厳しすぎること、もうひとつは、対日輸出値段が低く抑えられすぎて、ロシアなど他の輸出国に流れていること。中国野菜・農産物の対日輸出が減ると、日本の外食・加工食品産業が大打撃を受けることになる、と日本側からも懸念の声がでていますね。安全と価格の安さのバランスの中で、日本の消費者がどういったレベルの食品を望むのか、もう一度冷静に考える必要があるのかもしれません。

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