第17回党大会前のちっさな花火!その2

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 ■北朝鮮の「大きい花火」の余韻が続く一方で、中国の第17回党大会を前にした「ちっさい花火」は激しく連発で打ち上げられている。賈慶林氏をターゲットにした汚職取締りラッシュに続いて、今度は黄菊副首相の名前が表沙汰になってしまった。
 

 ■中国人権民主化情報センターによれば、党中央規律検査委員会は、黄菊氏の妻、余慧文夫人(上海慈善基金会副会長)と弟の黄昔・元上海浦東開発集団副総裁の汚職調査に昨年一月から乗り出しているとか。このセンターが発する情報は中国記者や中央の党員らがネタもとだから、精度は相当高いと見られている。
 

 ■黄菊氏の疑惑は、03年5月に明るみになった上海の大富豪、周正毅氏(元上海農凱集団総裁)と中国銀行香港支社の劉金宝・元総裁の不正融資事件で一時期とりざたされた。が、当時、まだまだ影響力のあった江沢民前総書記をトップとした「上海閥」の力で押さえ込んだのだった。

 

 

 ■結局、周正毅氏は株価操作と資本金虚偽報告という生ぬるい罪で懲役三年(すでに刑期を終えて出獄)。劉金宝氏は周氏との関わりをあいまいにしたまま、汚職・収賄の罪で執行猶予付き死刑の判決を05年に受けた。また周氏による上海市静安区の一等地の土地再開発で強制移転を迫られた住民を弁護し、周氏と劉金宝氏の癒着を最初に告発していた人権派弁護士、鄭恩寵氏は「国家機密窃取」というよく分からない罪で03年、懲役3年の判決を受け、投獄された。
 

 

 ■ところが、この鄭恩寵氏が6月5日、刑期を終えて出獄して、黄菊ファミリーの周辺はにわかに不穏な空気が漂いはじめた。獄中で辛酸をなめつくし、もはや恐いもののなくなった彼は出獄するやいな、黄菊夫人、弟の汚職、収賄の具体的な例を香港や海外メディアにしゃべりまくり、妻はネット上の公開書で胡錦濤国家主席、温家宝首相にむけて告発した。たとえば、周正毅氏はSARS対策という美名のもと、黄菊夫人の実質支配する慈善団体、上海慈善基金会に2000万元(約3億円)寄付し、一等地の再開発の利権を得た、とか。


 ■ネット上とはいえ、こんなに具体的な内容が面ざたになっては、当局としても知らぬ存ぜぬでは行くまい、と思われていたところへ、7月22日付の中国紙「21世紀経済報導」が、上海市労働社会保障局の祝均一局長が双規(中国共産党の内部調査)を受けていると報道した。この人は、上海慈善基金会名誉会長で投資会社の主席の張栄坤氏から30億元の金を受け取った疑惑があり、この張栄坤氏が黄菊の弟が上海浦東開発集団副総裁時代に同集団にやはり30億元投資したとされる。つまり黄菊ファミリー汚職疑惑の鍵となる人物だ。それに続いて今回、黄菊夫人と弟への取り調べ開始の情報が明るみになったのだった。

 

 ■黄菊副首相は今年一月ごろから重病(膵臓がん)とささやかれ春の全人代も欠席した。健康に問題があったことは当局も公式に確認ずみで、このまま病気を理由にフェードアウトするのか、に見えたのだが、今回の連発花火をみるに、そうは問屋が卸さない、ということなのだろうか。6月5日に突如、北京市で開かれた中国科学院、工程院の総会に顔を出したりして、目立っちゃったから、警戒されたのだろうか。

 

 ■いずれにしても、黄菊氏は外堀はうめられた、という印象だ。本人にまで捜査の手が及ぶかはまだわからないが(すでに取り調べが始まっているとの噂もあるが)、いろいろ不穏な噂が飛び交う賈慶林氏ともども政治局常務委員の地位を維持するのは無理そうだ。

 ■ちなみに香港誌「開放」(7月4日号)では、来年の第17回党大会で現在9人いる政治局常務委員は7人に減り、賈慶林、黄菊、呉官正、羅干の4氏が引退、かわりに、胡錦濤国家主席(総書記)の後継者と目されている李克強氏と、曽慶紅・国家副主席の女婿の周永康・国務委員が政治局常務委員入りする、といった予測が展開されている。

 

 ■しっかし、汚職も権力闘争も中国の政治文化とはいえ、息の長い攻防を続けているものだ。この既得権益を守るためのエネルギーを、もっと人民の暮らしのために役立てれば、中国共産党ももっと愛されるのではないか、と遠くから眺める外国人は思うのだった。

鄭恩寵氏の妻の公開書簡

http://www.dajiyuan.com/gb/6/6/15/n1351387.htm

 

 

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「第17回党大会前のちっさな花火!その2」への3件のフィードバック

  1. <<汚職も権力闘争も中国の政治文化>> えー?これでボツ原稿ですか。もったいない。今、日本人が本当に読みたいのはこういった記事なんですがねー。 へんに端折った見出し優先の他社配信記事よりも、ずっと待たれていると思いますが。 
    またのUPを期待してます。

  2. いやー、産経の中国総局の特派員の皆様は大変ですね。そういえば昔柴田記者追放事件というのがありました。
    もっともデスクももっと苦労しておられるのでしょう。グーグルになるべきか、ならざるべきか。大中国は欧米のマスコミなら苦虫をかみつぶしてでも我慢するんでしょうが、「歴史を鑑」みとしない小日本は許さないということでしょうか。

  3. nhac-toyotaさま、weirdo31さま、
    読んでくださってありがとうございます。
    これはデスクによるボツではなく、同僚とネタがかぶったから使えなくなった原稿なんです。まあ、憶測が中心の話なので、新聞では使いずらいですよね。

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