トラ年のおめでたい小ネタ。

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■中国でアートというと、外国人はポリティカルアートばかりを注目しがちだが、国内ではやっぱり伝統芸術・国画(花鳥画)の人気がつよい。特に、おめでたい絵とか縁起のいい絵なんていうのは好まれる。で、今年は寅年なので、虎の絵が人気という。最近、友達から「虎の絵ばかり描いて村おこししている村があるんだよ~」と聞いた。

 

 

■友達というのは北京の中央美術学院(中国芸術の最高学府、東京芸大みたいなもん)に留学して国画を学んで、中国を拠点に創作活動を始めようと、目下売り出し中の女流画家、安藤美香さん(通称みかえちゃん)。

 

■彼女は指導教授の国内屈指の国画家(私はあまりこの世界に詳しくないので名前を忘れてしまった)に師事し、たいそう将来を嘱望されているうえ、見目も麗しいので人民大会堂で開かれた画展にて、着物を着て鳩山由紀夫首相と温家宝首相と李明博大統領を中韓の女流画家と一緒にの案内をしたりして、業界の若手ではひとつ頭ぶんぬいた存在感のひとだ。

 

■彼女がたまたまNHKBS-1の「地球アゴラ」の企画で、その「虎の絵ばかり描いて村おこし」という河南省民権県画虎村に取材にいったのだ。で、そのときのことをいろいろ聞いていたら、私が北京特派員だったら、春節のネタ枯れの時の暇ネタに取材しそうなちょっと面白い話だった。ちなみに、みかえちゃんの出ている「地球アゴラ」の放送日はきょう24日の午後10時10分から放送。うまくそれまでにこのブログをみた人は、テレビもみてみて。

 

 

■みかえちゃんによると、村民1366人中700人以上が虎の絵を描く画家。この村では子供たちは中学校にもいかず、虎の絵をかいているそうだ。なんで虎の絵をかくようになったかというと、実はたいしたいわれはない。1985年ごろ、いわゆる工芸芸術品製造の企業に出稼ぎにっていた村民の王培双という人が、人を介して自分の描いた絵を画廊に置いてもらったところ、よく売れたという。で、そうか、絵って金になるんだ、と気付いた王氏は、独学で絵を真剣に勉強しはじめ、それをみた肖彦卿、王建民、王培振といった村民が、よし俺も俺もと絵を描き始めた。

 

 

■描いているうちに、虎の絵が一番よく売れることに気づいて、だんだん虎の絵ばかり書くようになり、そうするとますます売れるようになり、それをみたより多くの農民が俺も俺も、と絵を描くようになった。気がつけば6,7歳の子供から60歳のおばあさんまで、村民全員自称画家状態。

 

 

■田畑は誰が耕しているんだろうという疑問はさておき、いつの間にやら虎の絵を描く村として有名になり、ここで描かれる毛皮の毛一本一本までを細かく描く作風の虎は「民権虎」とも呼ばれるようになった。

 

■この画虎村で、王建民さんら初期の画家4人は「四大虎王」とよばれ、だいたい1幅5000元から1万元、紙幅5~6メートルの大作なら10万元くらいの値段で売れるそうだ。もちろん描くのに1カ月くらいかかるそうだけれど。

 

■地元報道によると、虎の絵による2004年のこの村の一人当たりの平均年収は3000元だったが06年にはそれが7600元となった。「四大虎王」の絵による平均収入は2005年のときは年収2万元を超えなかったが今は毎月2万元以上を稼いでいる。昨年の村全体の売上は3000万元だと。ばかばかしくって農業なんかやってられない?

 

■彼らにつづく「八大小虎王」とい呼ばれる売れっ子作家も出てきている。絵だけで村おこしがこれほど成功したのは中国広しといえどもここだけで、「奇跡の画虎村」とも呼ばれ、その成功談自体にご利益がありそうだと、国内はもとより海外からも絵を買い付けに来る人が続々。特に今年(中国の場合は春節以降)は寅年だということで、空前の売れ行きだとか。河南省政府も文化は金になると息巻いており、この成功例をもとに、文化立村政策を他の村に広げていく方針だとか。

 

■ちなみに、本当に彼らの絵は、そんなにうまいのか、とプロ(まだ駆け出しだが)のみかえちゃんに聞いてみると、「少なくとも王建民さんら四大虎王と呼ばれる方々はホンモノ」だそうだ。

 

 

■しかし、芸術の才能ってなんだろう。この村にはたまたま才能ある人たちが多く生まれついただけなのか。画虎村は芸術家村というよりは、むしろ、同じ技術と構図の絵を大量生産する職人集団の雰囲気があるけれど、それでもやっぱりこんなに絵のセンスのある村民が偶然集まっているのは奇跡的といっていい。

 

■なんか、久しぶりに友好っぽいネタかいたな。たまにはいいでしょ。

 

 

 

 

  四大虎王のひとり王建民さんの作品。確かに夜中に絵から出て歩き回りそうな迫力。

 

 大きさを比べるため横に寝てみるみかえちゃん。

 

 

 

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「トラ年のおめでたい小ネタ。」への4件のフィードバック

  1. 「地球アゴラ」見ましたよ。中国&虎の絵っつーと、ついつい
    幻の周老虎(あれは写真か?)を思い浮かべる私ですが、画虎村
    のみなさんは真面目に虎の絵を描いていたので、安心しました。
    しかし、虎の絵が金になるのが分かると、村民も地方政府も一斉
    に飛び付くところが、何ともあの国らしい話ですな。

  2. 話は違いますが、中国の広西チワン自治区桂林郊外で起きた暴動、今年最大だとの事ですが何か情報は有りませんか?

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