全人代おわり!温首相会見いってきました。

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■16日、全人代が終わり、午後、温家宝首相が会見しました。ええ、一応、顔みてきました。終わったあと、記者と握手するなど、結構社交的なヒトであります。ミーハーな私も、首相、あくしゅ~、と会見後はかけよるのでした。握手できなかったけど。

 ■さて、物権法の続きも書きたいところですが、ここで温家宝会見を速報。温首相、腐敗問題を経済の市場化と行政権力の過度集中に原因がある、と言い切って、民主、民主と連発しました。物権法も制定できたし、さ~て政治も改革開放だ!名実ともに、社会主義と決別だ!といいたいのでしょうか。しかし、共産党幹部が既得権益を手放すわけないでしょ?口ぱく?そこらへんをさぐりながら、おおざっぱに訳します。誤訳御免。

■社会主義市場経済とは、世界最悪の資本主義!(by趙紫陽)
なら、社会主義民主とは、きっと世界最悪の民主主義のことだろう!(byフクシマ)

■温家宝会見(16日)

まず、興味深い質問から。

■中央テレビ記者:最近、陳良宇(前上海市委書記)ら(腐敗官僚関連)事件が明らかになり反響が大きい。(中略)こういった行政領域の権力と銭の交易現象をどうやって抑制するのか?

温:市場経済の発展にともない、腐敗現象がたえず発生し、ますます深刻化し、ときに多くの高級官僚の指導者に及ぶことはみとめざるをえない。この問題を解決するには、まず制度上から手をいれなくてはならない。腐敗の原因は多方面にわたり、その中でも最重要の一点は、権力の過度手中、そしてそれを有効に制御、監督できないことだ。

温:つまるところわれわれの制度は改革が必要なのだ。われわれは行政許可法をすでに制定し、批准事項を減らした。政府部門が大量の行政資源と批准権力をもつと、権力と金の癒着を生みやすく、職権を利用して私欲をはかり、産官癒着の腐敗現象を産むのだ。

温:第二、政治体制改革を推進し、権力の過度集中現象を減少させ、人民の政府に対する監督を強化する。今後、多くの批准事項、特に人民大衆の利益にかかわるものは、公開、公正、透明に実行せねばならない。

温:第三に、教育と懲罰による矯正の方針を実行する。幹部、指導者は水があれば船は進むし、転覆もするということをわからねばならない。腐敗官僚には、どのような領域、どのような人物であっても、地位の高低にもかかわらず、法にしたがい厳罰に処さねばならない。
(政治改革やるぞ~、行政権力の集中を分散させ、人民に監視させるのだ!といいたいみたいです。しか~し、人民による監督ってどうするんですかね。報道統制、言論統制してちゃ、できませんよ)

■フランス・ルモンド記者:
最近、あなたは人民日報で論文を発表した。(2月27日、「社会主義初級段階的歴史任務と我国の対外政策のいくつか問題」)。きになるのは、あなたが社会主義制度と社会主義民主はけっして相排斥するものではない。さらに社会主義初級段階は建設に百年かかる、と言ったこと。これは中国が今後百年、民主はいらない、ということなのか?
もうひとつ、最近中国の元共産党書記、趙紫陽氏のインタビュー集が香港で出版され、本の中で、中国はどのように現代化を実現するか、台湾のように民主政治を実現するか、とのべていた。台湾は過去は独裁統治で現在は多党制だが、この本をどう評価しますか?

温:私が最近発表した文章が言っているひとつの道理、それは社会主義民主と法制は相反するものではない、ということだ。私は民主、法制、自由、人権、平等、博愛、これは資本主義特有のものではない、といっている。これは世界の長い長いの歴史の中で形成された文明の成果なのだ。人類が共通に追求する価値観なのだ。わたしは同時に強調したい。世界上、2000以上の民族、200以上の国家と地区、彼らの社会の歴史の発展は同じではなく、発展レベルも同じでなく、民主の形式もプロセスも同じではない。この種の文化の多様性は、人の意思によって転換
できない。(社会主義民主ってなによ?民主、法制、自由、人権、平等、博愛をみとめたら、それは民主主義ではないのか)

温;あなたが尋ねたのは核心問題であって、社会主義民主はなにか、ということだ。私は明確にいうことができる。社会主義民主の根っ子は人民を主人公すること、つまり人民の民主選挙を保証し、民主による政策決定、民主管理と民主監督の権利が必要だということに帰結する。そしてそのために作らねばならない条件とは、人民に政府を監督させ、批判させることである。これは平等、公正、自由の環境のもと、それぞれの人が全面的に発展し、創造的精神と独立思考の力を十分に発揮せねばならないのだ。(人民に政府を批判させたいのなら、インターネット統制をやめればすむことではないか?

温:われわれの社会主義建設、つまり社会主義政治建設と民主建設は、経験が不足している。だから開放政策を実行し、世界上の先進的文明の成果のすべてを生日、われわれの実際に合った、中国の民主路線を行きたいと願う。あなたの言うところの100年変わらない、というのは、民主がいらない、ということではない、これは誤解だ。私は社会主義は未成熟から成熟へと、不完全から完全へと、未発達から発達へと、まだ長い道のりがあるということだ。この段階で、われわれは2つの大きな任務があり、2つの大きな改革を推進せねばならない。
(社会主義の初級段階は民主主義をめざしていいのだ)

温:2つの任務、それは①社会の生産力を発展させることに集中し
、②社会の構成と正義、特に正義を社会主義制度の主要な価値とすることだ。2つの大改革、それは市場化を目標とする経済体制改革を推進し、民主政治の発展を目標とした政治体制改革を推進することだ。
(正義って、強い者が正しい、という価値観だよね、確か)

温:民主制度はどのような真理も同じ、実践にたった考慮が必要だ。どの地域、国家も民主制度の状況、優劣については、すべて実践を持った標準が必要なのだ。香港で出版されてた本については、私が語った見解とは何の関係もないと思う、私はその本は読んでいないし。
(読んでいないくせに、作者の宋鳳鳴氏を軟禁しているのか?しかし、以前のエントリーでも紹介したが、俗称・新西山会議では、台湾モデルの民主化を主張する学者がいっぱいいるのは事実。そしてこの会議開催が、政府のまったく預かり知らぬものとは、私は思えないのだが)

■ドイツ記者:ダライ・ラマは中国への里帰りを望んでいる。ダライラマはすでにチベットの独立を求めない表明しているのに、なぜ中国政府はいつまでも彼を民族分裂分子とみなすのか?五輪のときに里帰りを認めることはあるのか?

温:ダライラマに対する政策は明確的で一貫している。つまりダライラマがチベットが中国不可分の領土の一部だとみとめ、台湾も不可分だとみとめ、分裂活動を放棄すれば、彼の前途について協議と対話を行っていい。大門は常に開かれているのだ。(どこに大門が??それは、違う。中国にとって宗教、そして魅力のある宗教指導者は本当に脅威なのだ。帰ってきてもらっちゃこまるのだ)

温:チベットは中国のひとつの自治区であり、65年にチベット自治区ができたさい、14世ダライラマは当時の委員会主任だった。しかし、現在ダライラマは外国に臨時政府をつくり、チベットの高度の自治をもとめ、中国の軍隊の撤退をもとめ、チベット在住の漢族と多民族がでていくことを求めている。彼がこころから祖国統一を望んでいるのか、あるいは祖国統一を破壊しようとしているのか、わからない。

温:ダライラマにたいし、彼がなにをいうかだけでなく、何をしているかを見なければならない。われわれはダライラマに対し、祖国統一とチベットの発展に有益なことをより多くしてほしいとねがう。
(いくら、民主、民主と叫んでも、ほらね、結局、本当の民主の意味はわかってないみたいだ。チベット自治区はチベット族が何を望んでいるか、ということで政策を決定することが民主なのよ。でも、ダライラマ、とちゃんと敬称つきで呼んだことは、さすが一国の首相。外務省の孔泉元報道官はダライと呼び捨てだった。)

クォート、とりあえず以上

 ■温首相の今回の会見は結構、大胆な発言もあった。またいつか抄訳をのせようとおもうが2月27日論文も興味深い。ただ、民主、民主、民主と連呼しても、その方法論を提示できていない。

本当に温首相が民主政治をもとめ、政治の腐敗を人民の監督によってただそうと思うなら、簡単だ。言論統制、報道統制を解禁すればいいのだ。しかし、経済の市場化とプロレタリア専制は両立しない、と主張する趙紫陽氏のインタビュー集の著者、宋鳳鳴氏を軟禁したりする。

 結局、社会主義民主とか、社会主義市場経済だとか、そんな造語ばっかりつくって、拡大するひずみを、ごまかそうとしているだけではないか?

 趙紫陽氏は、中国の社会主義市場経済を世界最悪の資本主義と評したが、社会主義民主って、世界最悪の民主主義になる気がする、と思ってしまうのだ。

■その他の質問をあげておきます
■ウォールストリート・ジャーナル記者:国際投資家は中国株式市場に非常に注目しているが、過去二年、中国株式市場の上昇と発展は早すぎる、激しすぎるとは思わないか?一般投資家は現在大きすぎるリスクに晒されているとは思わないか?もうひとつ質問。中国の外貨準備投資の問題。中国は新投資機構を創設し、外貨準備の多元化をもとめるというが、どの方面に投資するつもりか?

温:昨年以来、資本市場の基礎制度建設に努力してきた。われわれの目標は成熟した資本市場の確立で、上場企業の質のレベルアップ、公開、公正、透明の市場体系確立、資本市場の監督強化、法制の完成だ。最後に、株式市場状況の情報の適時の公開、と一般投資家のリスク意識の強化。

温:中国の外貨準備高の使い方については大きな問題に直面している。過去の歴史をふりかえると、外貨がすくないときは難しことは少なかった。90年代は、外貨が不足し、国際貨幣基金組織に借りていたくらいだ。そのとき借りたのわずか8億㌦。今中国は一兆ドルをこえている。

温:中国が外貨準備の多元化を実施するなら、まず安全の考慮が基本だ。この外貨投資機構はいかなる部門も超越し、国家の法律に従って外貨を管理、使用、監督をうけ、価値をあげる。

温:中国の対外投資の経験はまだとぼしい。非金融類の対外投資は05年末で、733億㌦、昨年一年で160億㌦増えただけだ。だから、この外貨投資企業ができて、対外投資を展開した場合、ドル資産に影響を与えるかどうか、という問題だが、中国が米ドル資産を購入するのは互恵互利であり、米ドル資産には影響をあたえない。

(実は、中国の一般投資家って、一点買いのばくち打ちみたいな株の買い方をする。だから、こないだのような、急乱高下みたいな株価の動きのときは、本当に〝死人〝つまり自殺者とかでるくらい、追いつめられるひとが結構いる。いやあ、インサイダーが当たり前の中国の株式市場なんて、私には恐くて手がだせませんよ)

■NHK:日中関係について。日中関係は改善のタイミングにきているが、まだ解決すべきもんだいがいっぱいだ。現在の日中関係に何がたりないとおもうか。もうひとつ、日本の拉致問題について、中国はどのような影響力を発揮できるか?

温:日中は一衣帯水の隣国。古語にもある。遠くを招き近くを修復する。禍を閉じて恨みの除する。管子の言葉だ。日中両政府は共同動力のもと、両国関係に影響を与える政治的障害をとりのけば、共通認識をえられる。このけっか、安倍首相の10月訪中が実現したのだ。

温:日中関係の三つの政治文書が、政治上、法律上、事実上、両国関係の過去を総括しており、長期的戦略上、両国の未来をさだめた。われわれは三つの文書の精神をけんじし、歴史を鑑に、未来に向かう。もし安倍首相の昨年の訪中が、氷をやぶる旅であれば、私の4月の日本訪問は氷を溶かすた旅だ。私は安倍首相と日中戦略互恵関係が内包する共通認識通を打ち立て、両国の経済協力メカニズムをうちたて、科技教育分野の交流、人員往来、特に青少年の往来を促進したい。

温:日中が長期的安定的な健全なる発展的友好関係を構築することを願う。、2番目の質問については、何度もいっているが、日本の公民の拉致事件については、同情と理解をしめしている。ただ、日本と朝鮮の間の問題であり、日朝が話し合いで順調にこの問題を解決できることを願う。(温首相の訪日って、4月15-17日だったけ?まだ調整中?
4月11ー13日らしいっす。中国メディアには、中国の対日外交の障害になるような報道は禁ず、というお触れがでている。一応、安倍首相の慰安婦発言報道も低調だった。訪日して、講演しても聴衆から拍手もでないようなしらけたムードだけは、避けたいと、必死に下工作中である。日本側から、拉致問題で同情を示せば、日本人に喜ばれるヨ、と耳打ちされたという話しもきいた。だから、皆さん温首相の訪日はあたたかく迎えてあげてください。でも、たとえ日中関係改善のためでも、報道統制は民主的でないな。)

■ああ、もう時間がないや。ほかにもいろいろ、質問があったが、このあたりで、今日はおわります。仕事、いってきます。

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「全人代おわり!温首相会見いってきました。」への11件のフィードバック

  1. 福島香織様:こんばんは、連続で「1get」かな?そうなら何か良いことが起きそうな予感がします。

  2. 福島様、こんばんは。
    >(政治改革やるぞ~、行政権力の集中を分散させ、人民に監視させるのだ!といいたいみたいです。しか~し、人民による監督ってどうするんですかね。報道統制、言論統制してちゃ、できませんよ)
    つ一揆
    いつもながら、長文のエントリ、お疲れ様です。

  3.  福島様,
    いつも素晴らしい 記事を読まさせていただき感謝しています。
    内容が明快で詳細な記事でよく理解できます。
    社会主義民主は素晴らしい造語です。
    中国人のああいえば/こうゆうの応対の中頑張ってください。

  4. To aqua2020さん
    >連続1ゲット、ありがとうございます。次エントリーもよろしく!

  5. To ブリオッシュ或いは出べその親方さん
    >社会主義民主ってなーに?
    エセプロレタリア専制のもと、人民に、これが民主主義なんだ、と疑いもたずに信じこませる洗脳機能をともなった世界最悪の民主主義。またの名を「鳥籠民主主義」といいます。ちなみに「鳥籠民主」「鳥籠市場経済」という言葉、中国人の知識人の間で普通につかわれています。これが本当に実現できれば、確かに「独裁50年」は現実のものとなるでしょう。私は無理と思いますが。

  6. To kuniさん
    「中国ってさあ、結局、修辞学の世界なんだよね~。社会主義民主って、一昔は修正主義って呼ばれて弾圧されていたよね」(友人)
    「そうそう、温家宝同志は修正主義だって!産経新聞にそう書いてやろうかな」(私)
    「そしたら、あいつらはきっと、修正のどこがわるい。過ちを修正するのは良いことだって、開きなおるんだ」(友人)
    「これは中国の特色ある社会主義修正主義だ。正しい修正主義。ビバ修正主義!」(私)
    …という話を、きのう友人と交わしましたが、まったくもってその通りだと思いました。

  7. ドイツの記者の方、いい仕事されてますね。日本でダライラマさんやチベットについての報道が少ないことは非常に残念です(産経さん含めて)。報道の少なさが日本国民の無関心につながっているのではないでしょうか。
    福島さんの硬派コラムでも是非取り上げてください。

  8. To sakuratouさん
    EXの「中国を読む」では昨年11月に一度取りあげましたが、そうですね、おりをみてまた。

  9. 大変有意義な会見記と解説、感心仕る。突然読みながら思い出した事は、会見記事の要旨が、そのまま二百有余年前のフランス革命の理念と、そっくりな事。フランス革命は、シナの革命思想を真似したのではなかったのでは?

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