仁義なき戦い 兄弟編

Pocket
LINEで送る

スポンサードリンク

 ■1950年10月19日夜、中国人民義勇軍は毛沢東の命をうけて、ひそやかに鴨緑江を渡った。「朝鮮を侵略した米国ら連合国軍」相手に、北朝鮮と肩を並べて戦うためである。やがて10月25日、世にいう朝鮮戦争がはじまる。中国と北朝鮮の鮮血でかためた兄弟の絆をうんだ、歴史の幕開けであった。

 ■あれから、56年。この兄弟の仲が険悪である。弟が兄の言うことを聞かずに禁断の武器に手を出してしまった。兄も黒社会出身で、若いころにはかなりやばい橋をわたった経験があるが、今は一応、実業家風のエリートヤクザとして、表経済の一員でもある。とりあえず武闘派からは卒業、したつもり。

 ■弟よ、これからはハジキやヤッパふりまわす時代じゃねぇ。頭つかえよ、世の中は金に従うのさ。といくらいっても、いうことを聞かない弟。「なんだよ、昔のアニキはかっこよかったぜ。アメリカがこわいのかよ、もう腰抜けになっちまった。みてろよ、オレを、国際社会をあっといわせてやるぜ」といったかどうかはしらないが。かくて、兄は、もてあましぎみの弟を、自分の手で始末せざるを得なくなってきたのであった(ほんとう?いえ、妄想です)

 ■中朝兄弟関係に異変
  つっぱっても地獄、ひいても地獄
  同じ地獄なら、兄から引導を渡してやれ
   

 ■北朝鮮は核実験は1回じゃない、と中国にすでに予告していた。安倍晋三首相が訪韓した際に「礼砲」代わりにうったのが最初の実験だとすれば、ライス国務長官訪中の明日、あさってあたりが二回目の実験びより。唐家セン国務委員が胡錦濤の特使としてこの2回目の実験を阻止すべく、平壌に飛び、今日、金正日と会談、胡錦濤の伝言を伝えた。何をいったのか。どすをきかせて、「仏の顔も三度まで」、と最後通告したのか。おねがい、実験しないで、とすがったのか。

 
 ■しかし、北朝鮮はもうあとには引けない、との観測がつよい。なぜなら、ここで引いたら、軍部を抑えきれない。金正日政権は少なくとも今までに3回クーデター未遂を経験した、とされている。3年前には夫人が、不審な交通事故で重体となったとか。龍泉の列車爆発事故、などというのもあった。いつクーデターが起こってもおかしくないくらい不安定、というのだ。

 ■しかし、中国の特使の訪問をうけてなお二回目の実験を行ったら、それこそ中国は黙っていられない。これまでのようにハッタリではすまない様相なのだ。

 ■お~、兄は怒っているぜ、と感じたのは17日の胡錦濤国家主席と扇千景参院議長との会談。せっかく字数制限のないブログなので、胡錦濤の北朝鮮に関する発言部分を全部紹介する。

 ■ 胡錦濤発言:
 中国は北朝鮮の近隣として、半島情勢の発展に一貫して注目(関注)してきた。核実験について、中国は一貫して厳粛な態度でのぞみ、多くのチャネルを通じて働きかけ、北朝鮮にたいし実験を行わないように求めた。残念(遺憾)なことに、北朝鮮は我々の話(勧言)を聞かなかった。

 ■北朝鮮による実験発表後、中国政府はただちに断固たる反対を表明し、日本を含む関係方面と適時に意志疎通をはかった。また、内部のルートを通じて北朝鮮に対し
非核化の承諾を遵守し、状勢の悪化につながるいかなる行動もとらず、六者会合の軌道にもどるように求めた。

 ■北朝鮮の実験発表後、国際社会は普遍的に憂慮を示している。中国は国連安保理が必要で適当な反応を示すことを支持し、決議の採択も支持している。一方において、北朝鮮に対しては国際社会の強烈な反応を知らしめる必要がある。

 ■また同時に、関係各方面も冷静に対応し、状勢をエスカレートさせ、コントロールしえない状況を回避すべく、この地域の平和と安全をともに維持にすることを主張している。
 中国は日本を含む関係諸国とともに、早期の六者会合回復をめざし、半島の非核化実現のために関係諸国と努力していきたい。(以上)

 ■「国際社会の強烈な反応を知らしめる」とは、中国共産党トップの発言としてはなかな、激しい表現だ。中国国内では一応報じられていないが、こんなに明確に非難の言葉を口にしたのは、朝鮮戦争後の中朝関係史上、はじめてといってもいい。

 ■この怒りが、ハッタリでないことの証明に、実際に中国銀行などで、北朝鮮への送金を停止がはじまっている。関係者の間では、、次ぎの段階として、中国国内の朝鮮人の預金封鎖まで行う準備が進んでいるとの噂が飛んでいる。また中国南方航空が、北京-平壌便の運行を28日から停止するとしている。南方航空の営業部は、「11月から価格調整するため」といった説明をしているが、普通に考えれば違うだろう。

 ■国境貿易のトラックの貨物検査も強化され、貨物量もへっているそうだ。国境の鉄条網建設は当局も確認している。予備軍の南済軍区のオートバイ歩兵師団が13日から、河南省の確山付近で1万8000人規模の軍事演習をやっていたが、香港の人権団体、中国民主化運動情報センターにいわせれば、この師団(第162師団)は2003年から北朝鮮防衛の切り札として準備されていたそうだ。いざ有事となれば、河南から国境にすぐ配備する準備だとか。「緩慢だが確実な」制裁(By朝鮮日報)を中国はすでに始めているのだった。

 ■中国はこれまで食料から燃料から投資から何から何までめんどうみて、養ってきた。もちろん、そこには、北朝鮮の地政学的、資源的、国際パワーバランス的にみた利用価値を見込んでいたからだった。北朝鮮は中国にとって絶対必要な国であり、現体制維持は一番ののぞみだからだ。
 

 ■しかし、今や中国国内学者の間でも、この無法者の弟について「中国は狼をやしなってしまった」「体制崩壊もやむなし」といった論調が、匿名でだがオンラインニュースなどにでてきている。さらに、気になるのは、次の記事。

 ■The Austrarian(http://www.theaustralian.news.com.au/printpage/0,5942,20587473,00.html)というネットニュースを引用したかたちで、田中宇氏のメルマガ(http://tanakanews.com/)でも紹介されていたが、中国外務省オフィサーが、北朝鮮人民と北朝鮮政府と、区別して言い始めたというのだ。中国が北朝鮮に冷たくできない理由のひとつは、庶民レベルの北朝鮮のシンパシーの強さが指摘されてきたが、金正日政権が人民を代表していない、という建前があれば、体制崩壊を容認してもかまわない、といえる。ちなみに、北京において、オーストラリア情報は重要。かの国は英国など島国のならいどおり、きわめて優秀な情報収集能力&分析力があるのだ。島国で日本が情報収集能力が劣るという噂。

 ■一昔前なら、兄の中国が本気でおこりはじめると、いとこのロシア(旧ソ連)がしゃしゃりでてきて、オレに頼れ、といってきた。こうされると中国も心おだやかでない。北朝鮮としては、この二国を天秤にかけ、競わせておいしい思いをしてきたわけだ。しかし、今やロシアも国連安保理の制裁決議の枠でしばらているわけだがら、この手は使えない。

 ■北朝鮮、絶対絶命。中国からの援助がほんとうに完全にたたれれば国内はほぼ日干しだ。やがて寒い冬。ミサイル打ち上げる燃料どころか、ボイラーたく燃料もないぞ。地下資源はいっぱいだが、それを採掘する技術は中国(や韓国)の投資に頼ってきたのだ。やがて、飢えに耐えかねた北朝鮮の国境警備隊から組織的に中国国境に略奪に押し寄せてくるのだ?そして、国境での軍事衝突??体制崩壊???平和維持軍(人民解放軍)出動????

 ■というシナリオを、吉林省延辺の国境ふきん出身の知人に話すと「ありえな~い」と一蹴された。香港報道などをみると国境はいかにもビンビンに緊張しているようだが、彼のふるさとは「いつもとかわらず平穏」だそうだ。親戚の貿易の仕事も目下、影響ないとか(どうせ密輸だろうけど)。「いいかい、兄弟は兄弟げんかもするけど、絶対ほんとうに殺し合ったりしないんだ」

 ■いや、私はやはり、兄弟だからこそ、いったん関係がこじれれば、恨み骨髄に達し、最後の最後までつぶし合わねばならないはめになるのではないかと思う。愛憎とはそういうものである。だから、中国は弟分の北朝鮮に引導を渡してやるのが、兄としてのさだめ、いやつとめなのだ。どっちにしても、体制崩壊なのだから。

 ■しかし、兄はふと冷静にかえって、思うだろう。今の北朝鮮は、昔の自分にそっくりだと。国際社会すべてを敵にまわし、国民を暮らしを犠牲にしてつっぱりとおしていた大躍進や文革時代の中国に。あの時代、少なからぬ東北部の中国人(特に朝鮮族)が、飢餓や紅衛兵の暴力から逃れるために国境をこえて北朝鮮に入ったり、北朝鮮の親族から食料や物資の援助を受けた。その歴史を中国が少しでも記憶にとどめているのなら、とどめをさす手は少しだけ狂って、こんなことを口走ってしまうかもしれない。「キムよ、北京にくるかい?シアヌーク邸がまもなくあくし」。

 ■あ、この結末は嫌だな。こんなことになったら、北京特派員は(張り番)地獄である。将軍、亡命するならソウルにして。先のみえない緊張感が続くと、へんな妄想に陥ってばかりである。お目汚しでした。

「仁義なき戦い 兄弟編」への12件のフィードバック

  1. 正男は「浦安に亡命したい!」と言い出すか。 
    あのオッサン、何やら憎めぬキャラで、(節操の無い?)フジのバラエティあたりで使えるぞ。 

  2. 福島さん。
    >将軍、亡命するならソウルにして。
    韓国の大統領は、田中邦衛キャラですから、心配です。

  3. 私も悪のりして…
    ハリウッドはどうでしょう。スペクタクル映画のディレクターとしての演出力は超一流のような気がしますが…。
    マイケル・Mと共同制作で「アメリカの落日」なんかどうでしょうか。

  4. 北鮮の暴発となるのか支那の介入による政権交代となるのかいずれにしても目が離せない緊張感が良く伝わってきます。 共に血を流して米帝と戦ったと言えども手のひら返すのは支那共産党のお家芸。歴史なぞなんとでも書き換えれば良いから。 半島の属国化をいかに国際社会に認めさせるよう実施していくかに腐心しているようですね。でもアソコに手を突っ込むと高くつくと思いますがねー。更地にしといたほうが無難なのに・・・。

  5. アングロサクソン系国家の中で、今一番親中なのがオーストラリアじゃないでしょうか。オーストラリアは中国とFTA交渉をやっていますし(確か・・・)、以前、ブッシュ大統領と温家宝首相が相次いでオーストラリアを訪れたのですが、温家宝首相のほうがより歓迎されたそうです。オーストラリア情報が重要視されるのは、その様な親中姿勢のために、より内部に分け入ることができるからではないでしょうか。もともと、中国は対英感情がいいですし、中国にとってはオーストラリアもイギリスと同じようなものとして、「中立的」と受け止められている可能性もあります。
    安倍首相は日豪印の3ヵ国の連携を唱えていますが、そのうち、日豪、日印の2国間関係はまあ良しとして、豪印の関係が薄いような気がします。インドは、ブラジル、南アと自由貿易市場交渉を進めていますが、その中に同じ南半球の大国としてのオーストラリアがなぜか入っていません。対中戦略の違いかな、と思ってしまいます。それとも、オーストラリアは先進国だから俺達の仲間ではない、とインドが思っているからかもしれませんが。
    長々とまとまりのないコメントで恐縮です。

  6. こんな力技の争いを、ずーとやってきたんですね。
    なんだか「想わぬ弾み」なんて事が起きそうな気配です。
    モメゴトを起こして存在感を顕すのは「ヤ〇ザ」の得意技だから、「仁義無き戦い」という事ですね。

  7. riceshower さま:まさおは、北京のくんるん飯店付近によく出没するそうです。そのまま北京にいついちゃうかも。

  8. weirdo31 さま:私はツイ・ハークあたりにお願いして、はでな黒社会映画にしてほしいと思います。

  9. nhac-toyota さま:更地にしたら、あらたな陣取り合戦がはじまりまるのでしょうか。

  10. horin さま:確かに、そうですね。私のまわりにも、オーストラリア国籍を取得している人が多いです。

  11. kikuti-zinnさま:そしてこの力わざの争いを傍観するしかない、日本。あるいは、ヤクザの闘争に巻き込まれる善良な市民?

horin にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">