■段ボール肉まんやらせ報道事件は、本来なら、吉例小ネタニュース!で取りあげるような、キワモノ、おもしろニュースの類だったと思うのですが、なぜか日本で大きな注目をあびてしまい、ついに中国当局が本格的な食の安全報道規制にでてしまいました。
■つまり、やらせ報道ゆるしません、と党中央宣伝部(中国の思想・宣伝工作を管轄する一番トップ)が通達を出してしまいました。
■確かにやらせは、報道に携わるものにとってはずべきこと、ゆるされるものではありません。しかし、ちょっとまてよ。それは報道の自由が保障されている国にいえることで、中国のような、やらせでも、党の指導にあってればOK、指導者の宣伝報道なんてほぼ100%やらせ、でも党の指導にそむけば真実でも拘束!といった国で、この通達は微妙です。
■党につごうの良いやらせは良いやらせ。でも、都合のわるいつまり、たとえ食品安全を啓発するような報道のやらせは、ぜったいダメ。これってふつうに報道統制強化では??という感じです。きっと中央では「食品安全啓発報道を奨励していてたけどさ、なんか変な方向につっぱしっているから、やっぱり規制かけよっと」ということではないでしょうか。
■このあたりは、じっくり考えたいところなのですが、実は福島はこれからチベット出張なのでした。で、本日付けフジサンケイビジネスアイ(FBi)に掲載した原稿の内容を紹介しておきます。ブログ読者と紙の読者はあまりだぶらないという前提で。
■やらせ防止?それとも報道統制強化?
もともとやらせ三昧の報道体質なのに
食の安全報道のやらせがダメなら、
政治報道のやらせもやめないと不公平!
■中国共産党中央宣伝部は23日、段ボール入り肉まんのやらせ報道事件をうけて、全国のメディア、報道機関に対し、やらせ・捏造(ねつぞう)報道防止を目的とした監督内容の監督強化をの徹底防止を通達した。しかし中国のフリーのテレビ関係者らによれば、「中国の報道はやらせが当たり前の世界。これは事実上、食の安全問題への報道統制ではないか」と反発が広がっている。
■通達は中央宣伝部、国家・ラジオ・映画・テレビ総局、中国新聞出版総署の連盟でおこなわれた。今回の虚偽報道から教訓をくみ取り、共産党の指示・規定を改めて確認するように求めた上で、①報道内容の批判を受け付ける専用電話の設置②記事に関連する読者のウェブサイト上の書き込み、論評については事実と確認されるまで(つまり当局がOKを出すまで)掲載を認めない③やらせ報道を転電したメディアも処罰対象となる(勝手に後追いするな)などといった内容が盛りこまれている。
■中国では国民の食の安全意識が高まっており、ここ数年、ヤミ食品・ニセ食品・危険食品の実態を隠し撮りした潜入ルポ番組が高視聴率を稼いでいる。こういった番組は、五輪前に零細食品加工企業、無許可の路上飲食品販売などを整理し取り締まっていこうという中国当局の方針と合致しており、これまでは「比較的自由に報道できる分野」(関係者)のひとつだった。
■この分野の番組制作を請け負ってきたのは主に契約スタッフ。中国ではテレビを含め公式メディアは当局の報道統制、管理下におかれ報道の自由には制限が設けられているが、契約スタッフは記者以外の身分で動くため、建前上、こうした縛りに引っかからないからだ。「一回3000~5000元の安い請負料で引き受け、当局から評価が得られればテレビ局記者の肩書で報道された」という。
■ヤミ食品加工業者の内幕取材は、取材相手も命がけで逃げるため、実際の映像をとるのは極めて困難な仕事。そこで再現フィルム風のやらせ映像をつくることは珍しくないという。このことは、「テレビ局、そしてその上層部も暗黙に了解していた」という。北京テレビで「段ボール肉まん」問題を取材した契約スタッフ、●(砦の石のかわりに言)北佳氏はこの業界ではやり手として知られ、今回も番組放送直後、高視聴率をはじき出したとして、北京テレビ上層部から「すぐれた番組をつくった。若い記者は見習うように」と称賛されていたという。
■しかし、この報道が海外で問題視され、中国の国家イメージを傷つけたとみると、当局の態度は一転、●氏は拘束され、「虚偽テロ情報を故意に流した容疑」に問われるとも指摘されている。テレビ局の番組責任者3人の免職され、番組主管編集局次長は引責辞任した。
■一方、別のフリーカメラマンによれば「中国のテレビ報道は、党の宣伝という目的に沿っていればやらせはかまわない」といい、中国の報道には、もともとやらせ体質があったという。たとえば「温家宝首相が春節で河南省の通称エイズ村と呼ばれる村を視察した(05年)とき、村には本当は医者や看護婦などいないのに、別の都市から大量の医師・看護婦を動員してカメラに写して、さも現地の医療が充実しているようなアピールしていた」。CCTVで、農民がさもありがたそうに、国家指導者を褒めそやすのも、農民の自分の言葉ではなく、発言内容を指導されるのが普通だ。
■そういう「やらせ体質」の中で、「食の安全報道」にだけブレーキをかけるのは、国際社会の非難が集中するこの問題を沈静化するのが目的の報道統制強化と、受け取る記者もいる。
■中国の食の安全問題を長年取材し『民以何食為天(民は何を食べて天と為すか)』(中国工人出版社)などの著書がある北京のフリージャーナリスト、周★(京へんに力)氏は「食品安全の問題の本質は、報道がやらせかやらせでないかという点ではない。500㌘?元の豚肉を使って一個1元以下の安価な肉まんは絶対作れないというのは事実であり、それに紙が混じっているのか、病死の豚のリンパ液などもっと危険なものが混じっているか、それを取材し解明する方が大切」と訴えている。
(以上)
■周さんによれば、かれが数年前に取材したときは、「紙入り肉まん」は見なかったが、病死の豚の首(リンパ液)の入った肉まんはあったそうです。病死の豚のリンパ液、つまり病原菌、ウイルスがつまった肉まんであり、加熱が万が一たりなかったりすると、人間に感染する可能性が大だと、たいそう危険におもったそうです。周さんは、段ボール肉まんをみたとき、「紙ならまあ食べられるか、リンパ液入り肉まんのほうが危険だな」とおもったそうです(おいおい)。まあ、水酸化ナトリウムという化学物質が入っていても、酢をつけてたべれば中和される?ということでしょうか。
■おお、タイムリミットです。しばらくチベットにいってきます。出張先で更新できない可能性大なので、ご了解くださいませ。
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こんにちは。
「報道の自由」という言葉には、何時も考えさせられます。それが内容に関してであれ、形式に関してであれ、「自由」という言葉が「無法」と同一視され、メディアが理性と倫理を忘れ暴走する可能性が否定できないからです。
ただ誤解なきよう願いたいのは、福島記者や産経新聞の報道を念頭において言っているのではないということです。むしろ産経新聞においては、パリの山口昌子支局長のように深い教養と聡明な知性をもった優れた記者が少なくありません。
チベットは文化的にも政治的にも地政学的にも非常に興味深い土地ですので、福島記者のお帰りと新たなエントリーを楽しみにしております。
北京の山口昌子がチベットで何を見て何を書いてくれるか、わたしも楽しみにしています。
>村には本当は医者や看護婦などいないのに、別の都市から・・・
やっぱり北朝鮮の親分だけありますねぃ。
チベットの報告楽しみだけど、あんまり予定をバラさない方がいいかも。
だって、殺し屋とかに狙われたら、どーするの? 。・゚・(ノД`)・゚・。
ホントにホントに気を付けて…。
福島記者
> やらせ報道ゆるしません、と党中央宣伝部(中国の思想・宣伝工作を管轄する一番トップ)が通達を出してしまいました。
民主主義国に於ける報道は軸が事実の公表なのに対し、独裁国に於ける報道は軸が宣伝(プロパガンダって言う方がしっくりくるな?)であると定義すれば、「やらせ(報道)」がどちらに増えるかは明確である。 と言う事を我々は再認識せねばなりませんね。 とはいえ、北京テレビから放送許認可を取り上げないのは日本同様電波利権が華の国でもガチガチだからなのでしょうか? あえて「しない」ところに興味を覚えます。
福島かをりん版「チベット旅行記」期待してますよ♪ (河口慧海も関西人だな)
高山地帯だけに呉々も御自愛下さい。
行ってらっしゃいませ、お土産期待してますw
個人的な感想を言わせて貰えば、あらゆる政治形態は官僚主義が跋扈し始めると共に政治は自縄自縛に陥るということでしょうか。日本にしても一番成功した社会主義国と言われてたわけですしw
やらせ報道について言えば多かれ少なかれどこにも存在します、欧米や日本では、より洗練された形で…だからと言ってそれが許されるはずはありませんが、政治的な正しさと報道的な正しさは別のものなのでしょう。
世界新聞大会でしたっけ?で日本の報道機関に対し、いくつか勧告が出てますよね。記事に執筆者の名前入れなさいとか、あとジャーナリズムを専攻した記者が日本にはほとんどいないとか言われてますね。それが実際どのような問題を提起するのかが今ひとつ良く解りませんが・・・。ただ欧米の日本に対する報道を観察していると、お前が言うなって感じはありますw
例えば、「核兵器が、第三次世界大戦の勃発を食い止めた、ゆえに、核兵器とアメリカ国防総省はペニシリンよりも多くの人命を救った」なんて言う訳です、欧米の科学者が広島に落とした原爆が正当なものであったと言う理由はこの辺りにあります。
話がとっ散らかってしまいましたが、福島記者には中国人の考え方などの掘り下げた記事を期待します。
P.S.
個人的要観察記事・・・米国ブロンクスの高校生11人が2週間の中国ホームステイを現地から報告中。
「N.Y. high schoolers blog from China 」
http://www.nydailynews.com/news/2007/07/23/2007-07-23_ny_high_schoolers_blog_from_china-1.html
福島香織様: こんばんは
2番目の投稿をされた方が『北京の山口昌子』と書かれていますが、私は山口支局長が『20世紀特派員』に書かれた『皆殺しのシャネル』の文章が好きです。
私は「福島香織は福島香織だ」と思います、他の誰もマネできない筆致で私たちに、中国の現実を伝えてくれていますから・・・山口支局長に匹敵する大物になる(今でもかなりの影響力ですが)ことを願っています。
To yaginumaさん
>「報道の自由」という言葉には、何時も考えさせられます。それが内容に関してであれ、形式に関してであれ、「自由」という言葉が「無法」と同一視され、メディアが理性と倫理を忘れ暴走する可能性が否定できないからです。
「どの国民も、国民のレベルに応じた政府しか持つことはできない」という言葉がありますが、これはメディアにもあてはまると思います。 中国政府が汚いのも、ほっとくとメディアが暴走しがちなのも、中国国民の民度がそれを求めているのでしょう。
国民の民度が高ければ、そのような暴走メディアは淘汰されるはずです。 この点では、日本も大きな口を叩けませんが。
福島さん
チベットですか、いいですね。気を付けてください。
昨日は忙しくて書き込みできませんでした。
早速、死鶏の処理方法ですが
先般、友人と食事している時この件が話題になり、彼が言うには彼の家及びその地区では93年ころまで死鶏の処理販売を生業にしていたそうです。
彼の話では、夏には暑さのためにコロコロと死に、冬には今で言う「禽流感」に似た症状で大量の死鶏がでたそうです。
それを、近辺及び遠くから買い集めて処理販売します。
死鶏は生きた鶏のように血抜きが簡単ではなく、すでに体内で血が凝固強います。その凝固した血を取り除かなければ商品価値はありません。
まず、買い集めた鶏の羽毛を取り除きます。次に咽喉を切り、夏場であれば冷たい井戸水に約1日漬け込みます。(その間水は絶えず交換する。)
そうすると、凝固した血は大方抜けるそうです。それを、地方に売り飛ばすそうです。(書いてみれば、なーんだそんなもんか・・・・)
彼曰く、「中国人が食べないものはない。」「高温処理(油で炒めるとか)すればたいていのものは食べれる。」「だけど死鶏だけは家では食べなかった。みんな売り飛ばした。」
中国人の挨拶は「?好」より「吃?了?」のほうが一般的ですよね。彼らにとってこの三千年間生きることすなわち食べ物に有りつくこと。
中国人の基本的思考方法の一端を垣間見る思いがしますね。
>国民の民度が高ければ、そのような暴走メディアは淘汰されるはずです。 この点では、日本も大きな口を叩けませんが。
いや、それはちょと違うアル。日本の場合は、マスコミは、一般人から言われたくらいでは、ヘのカッパで、独自路線を頑強に歩んでいて、人の言うことは聞きゃしないというところに問題があると思います。国民の民度ではなくて、マスコミの民度の問題です。
ふっと思いついたんですが、
日本の民放あたりで公開実験をやって、やらせかどうか、実在の可能性ありか無しか、確認したら面白いのでは?
料理の専門家の指導のもとで、pHの変化なども測定しつつ、段ボール肉まんを作って、ゲストに食べてもらうわけです。胃の中に入れなくて、吐き出せば無問題でしょう。むろん、事前に安全性などを十分に確認しておき、世の批判を浴びないように注意しなければなりませんが。
結構視聴率をかせげるかも。
To venomさん
>「どの国民も、国民のレベルに応じた政府しか持つことはできない」という言葉がありますが、これはメディアにもあてはまると思います。 中国政府が汚いのも、ほっとくとメディアが暴走しがちなのも、中国国民の民度がそれを求めているのでしょう。
>
>国民の民度が高ければ、そのような暴走メディアは淘汰されるはずです。 この点では、日本も大きな口を叩けませんが。
聡明なコメントをありがとうございます。勉強になります。
仰ること、その通りなのですよね。米国の『ワシントン・ポスト』誌でも、時々彼らの教養を疑ってしまうような記事が載るようですし。長野オリンピックの開催が決定した際に、「緯度の低い土地で何故冬季オリンピックが開催されるのか」などという社説がありました。ロンドンは北海道より緯度が高いのですけれどね。
話が逸れてしまいましたが、マスメディアに踊らされないように自分から気をつけて行きたいと思います。まずは自戒の念をこめて。
ありがとうございました。
福島香織様、新聞紙上での中国レポートいつも「うん、うん、そう、そう」と
頷きながら拝読しております。
『ヤラセのヤラセ』
(私の推測)
段ボール肉まんは絶対に存在した。ヤラセ報道をして、ろくに調査もせずに
「あれはヤラセであった、関係者(トカゲの尻尾)は逮捕した」と世界に向けて
発表した。中国政府中央の狙いは一連の報道で『段ボール肉まん』などと言う代物は最初から存在しなかった、食品疑惑に対しては徹底的に対処しています。
だから誇り高く無謬の中国共産党が自分達が発した情報を恥を忍んで否定したのであるから、一般人は、これは間違い無いだろうと信じるものと勘違いしている。
現在では世界的には勿論のこと、中国の一般大衆も腹の中では中国政府の発表など全く信用していないのではないか?
段ぼーる肉まんは初めから無かったし、これで世界の国々は五輪でも自国の食材
を使ってくれると、一石二鳥を狙ったつもりだろう。一般大衆と乖離した場所で
生活している脳天気な一部の中央役人が描いた猿芝居。
どこかの友好国と同じですね。国の上層部が誤りを認めて、下っ端を処分すればそれでお終い、みたいな。おれ様がこう言ってんだ、もうがたがた言うな。
ってとこでしょうか?
チベットですか。次のエントリも注目してます。いってらっしゃい。お身体に気を付けて。
こんばんは、中国で日本の「安全」な米が好評だそうですね。
福島さんの口に入りそうですか?
いずれは日本米の袋が出回るかと思うと今回の米輸出は素直に喜べないです。
こんばんは、中国で日本の「安全」な米が好評だそうですね。
福島さんの口に入りそうですか?
いずれは日本米の袋が出回るかと思うと今回の米輸出は素直に喜べないです。
To yaginumaさん
報道の自由と報道の無法・暴走は、記者にとって最も自覚すべきことだと思います。
To ブリオッシュ或いは出べその親方さん
北京の山口特派員だなんて、そんなおそれおおい。
To ぷぅさん
外交部のプレス・ツアーですから、世界一安心。
To 一閑さん
中国メディアとある日本外交官の懇談の場で、中国メディア記者が「私たちジャーナリストは…」と発言したとき、その外交官は「君たちはジャーナリストじゃないでしょう?君たちのやっているのは、ジャーナリズムじゃなくて政治宣伝だから」と切り返したそうです。ぐうの根もでなかったそうです。
To wonder123さん
>話がとっ散らかってしまいましたが、福島記者には中国人の考え方などの掘り下げた記事を期待します。
ご期待のそえるよう、鋭意努力いたします。
ところで、たしかに、ジャーナリズムを専攻した記者って、少ないですよね。でも個人的には、大学でジャーナリズムなんか勉強しても、あまり役にたたないのではないか、という気がします。ちなみに私は大学では演劇学専攻でした。
To aqua2020さん
山口特派員の文章、私も大好きです。皆殺しのシャネルも、今のパリの屋根の下で、もお気に入りです。あの境地にいければいいんですけどね~。
To shimajyoさん
細かくおしえてくださって、ありがとうございます。病気の鶏くらいなら、私もどこかで食べているかもしれません。
To kokuさん
いちおう、マスコミも市場原理で動いているので、読者に必要とされなければ、報道数もへってくると思うのですが。ただ、記者がすごい執念とか信念をもっていて、人が見向きもしないようなテーマをこつこつ取材しつづけているというケースはありますが。
To stopchinaさん
やっていたテレビがあったような気がしますが。
To boyakijijiiさん
ありがとうございます。いつか、この推測があたっているかどうか判明できるよう、がんばります。
To paraisoさん
もう帰ってきています。エントリーもう少しお待ちください。
To mutimsaさん
日本の米、高いですね~。試食した日本人によると、値段差ほどおいしくないそうで。大連産のこしひかりの方がお得感があるとか。私は、最近家でお米たいてませんので。