環球時報記者と座談会?

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■更新滞っております。書くネタはことかかないのだが、台湾地震の影響だろうか、ネットがおそい。マイページがひらかない。でついつい更新をさぼってしまう。でも本日は、ちょっとイベントがあったので、ご報告。

■中国のリッチマンに明日はあるか?

■人民日報系国際時事問題紙「環球時報」から、非公式の座談会にでてくれないか、と頼まれて、参加してきた。そう、あの「環球時報」、「日本批判記事で部数を伸ばした」(と私が言ったわけではない、中国人メディア研究者の発言である)環球時報である。なんと今の発行部数180万部(産経は220万部?)。昨年だけで定期購読30%増、という今一番売れているノリノリの中国紙である。ちなみに環球時報記者からは「産経新聞、ああ中国のマイナス報道で知られている新聞ですね~」と言われてしまった。ということで、「日本バッシング報道で人気の環球時報記者」VS「中国マイナス報道で人気?の産経新聞記者」対決?

■というのは冗談で。テーマは日中関係でもなんでもなくて、結構あたりさわりのない「中国の富人(金持ち)」。環球時報の中面には外国人が中国の社会事象をどうみているか、を分析する「国際論壇」というページがあるのだが、そこで今度、「中国の富人」をテーマにするそうだ。で、韓国人企業家、米国人投資家、オーストラリア学者、日本人記者(私)からそれぞれ意見を聞きたい、と。最近の中国メディア、というか中国全体の傾向として、外国人から中国がどうみられているか、結構気にしている。しかし、産経新聞記者をゲストによぶとはイイ度胸だぜ。

■先方からは、①富人の概念、定義、②中国の富人の特徴、③日本の富人との違い ④自身が会ったことのある富人の描写、⑤庶民の富人に対する不満、恨み(仇富現象)など中国の現状をどうみているか、⑥富人は社会貢献をすべきか⑦中国の富人はどのように発展していくべきか…といった質問が出された。

■でも、この質問、よくよく考えてみると、中国の今の社会状況を考える上で、結構、おもしろい。私もまじめに考えて答えてみた。以下、発言要旨。

■中国も日本も富人(日本語でいえば富豪かな?)の概念は簡単にいえば、金持ち、あるいは金による権勢をもつ人、という定義でいいと思う。ただ、中国の富人と日本の富人の違いはある。05年末のメリルリンチの調査によれば、アジアの3000万ドル以上の金融資産を持つ大金持ちのうち、日本人が占める割合は30%、一方中国人が占める割合は29%とほとんど差がなかった。しかし100万ドル以上の金持ちになると、日本人は141万人いるのに、中国人は32万人しかいないのだという。つまり、中国の金持ちはとはスーパーリッチに偏っている。この背景にあるキーワードとして、「紅色富人」という言葉が思いうかぶ。中国のリッチマンは、共産党幹部、あるいは軍の幹部と関係が深い人が多く、必ずしも、ビジネスや金融の才覚だけでのし上がってきた人ばかりではないのだ。だから富人、と聞くと、腐敗、汚職のイメージがわく。上海第一の富豪とされた周正毅など、フォーブスの長者番付にのったあとで、汚職、脱税などで捕まる富人が少なくない。

■日本の富人にも、もちろん権力と結びついている人も脱税などしている人もいるだろう。だが、例えば05年の長者番付の1位だったのは、有名会社の社長でも有名人でもない、誰も名前のしらなかった金融会社の1顧問だった。推定年収100億円だった。

■日本の金持ちは、スーパーリッチはあまりいないかわりに、金持ちの層が厚い。それはつまり貧富の差が少ないということだが。どうして、そうなるかというと、ひとつには税制の問題がある。相続税の最高税率は03年まで70%だった。今でも50%ある。すくなくとも今までは、税制による富の再分配機能は結構たかい。(今後どうなるかしらんが。)

■あと中国人のリッチマンの特徴として、お金の使い方にスマートさがない(品位がない)気がする。私自身は、スーパーリッチには会ったことがないので、ひょっとするとスーパーリッチはヨーロッパのセレブのような品格があるかもしれないが、少なくとも私の知っているリッチマンは、品位、モラルが欠けている。

■たとえば、知人の知人の山西省の炭坑主の息子は、愛車が200万元の外国輸入車(一台ではない)、北京に別荘など不動産を2つもっていて、それがひとつ5000万元。腕にはダイヤモンドでデコデコの高級スイス時計、プロ使用の輸入一眼レフデジカメラ(プロのカメラマンがオレのカメラよりいい!と驚いていた)などをこれ見よがしみせ、「これは××万元だった、あれは●●万元だった。君に買えるかい??」みたいな自慢をする。実際、ケタ違いの高級品をすきなだけ買えるのだからリッチマンには違いないが、言動がリッチマンらしくない。ちなみに彼のお父さんの山西省の実家は普通の農家で、そんな金を持っているとは絶対思えないそうだ。山西省で金持ちぶると、隣近所の恨みをかって何されるかわからない、といのが質素な生活の理由だそうだ。

■また、知人の仕事のパートナーである北京在住の親子2代の芸術家が、知人をナイトクラブに招待した。そのクラブの中には小さな部屋がいくつもあり、部屋ごとにモデルのような美女が5,6人、素っ裸で酒をつ具などのサービスをしてくれた、と驚いていた。芸術家が帰り際に女性たちに与えたチップがそれぞれに1000元。ちなみに、「お持ち帰り」もできるそうだが、私の知る限り、その手の女性の最高級クラスは1回5000元から1万元ときいている。ちなみに、その芸術家の愛車はマセラッティ(輸入車、いくらぐらいするんだろう??)

■炭坑主の息子にしろ、親子二代の芸術家金持ちにしろ、やることに品がないとおもわないか?とにかく、見た目、金持ちらしくないけど、ものすごいお金持ち、という人が多い。この意見については、米国投資家が「金を使ってみせることでしか、金持ちであることを表現できない。ニューリッチの特徴」と指摘していた。

■こういうニューリッチの下品さ、といのは、おそらく日本のヒルズ族などにも共通し、中国特有の問題ではないかもしれない。ただ、個人的には日本の伝統的思想として、金で買えないものがある。金がすべてではない、という価値観がまだあり、それが拝金主義の拡大を食い止めていると思う。(環球時報記者によれば、中国の伝統的価値観もそうだというが)。あと、関西人の立場でいえば、お金は大事だ、だから大切につかおう、という価値観が大阪の商人(つまり実業)に伝統的にある。お金を無造作につかって見せびらかしてみせるのは、汗水流して稼いだ金、実のある金ではないからであって、中国の場合、コネと汚職のとかわけのわからない収入が圧倒的に多いから、金に対するありがたみがマヒするのではないか。私はこういう、守るべき日本の伝統的価値観だとかモラルを発信し続けることは、メディアの役割ではないかと思う。もちろん、日本の場合、多様な価値観があってよいので、すべてのメディアが同じ価値観を共有するわけではないが。

■こういう見せびらかしタイプの富人に対し、庶民は不満を募らせていて、「仇富」とよばれる富人への攻撃、憎しみ表現(強盗、人質などの犯罪も含む)といった事象もおきている。(こういう状況を変えるには、やはり富人は社会に貢献する責任感を持つべきだ、というのが米国、韓国、オーストラリア人ゲストが強く主張していた。米国人は中国の金持ちに、そういう社会への責任感がかけていることが、宗教の不在によるモラル不足と指摘していたが、確かに欧米の金持ちの社会貢献って、キリスト教的博愛主義や慈善事業の歴史が関係があるかもしれない。)

■私も、金持ちが社会貢献することは重要だ問い思う。社会貢献すれば税制が優遇されるとか、そういうシステムを中国でも導入すべきだと思う。

■だが、それよりも重要なことは、やはりこのいびつな金持ちを生む社会のシステム、構造をなんとかしなければならないと思う。具体的にいえば、法治化だ。法治とは、金持ちも貧乏人も法のもとで平等だということだが、中国の場合、平等ではない。法の裁きは、金持ちをよけてとおる。それは、法の上に共産党があり、共産党と金持ちが結びついているという構造が原因だ。

■また、中国共産党は本質的に、私有財産権を完全に保障していない。もちろん憲法改選のときに私有財産権保護の条項が入ったが、それをうらづける民法が完成していない。(こんど物権法ができるが)。そのことが、リッチマンにとっては大きな不安材料になっているのも確か。だから、稼ぎだした資産を外国に移転したり、湯水のごとく使い急いだり、共産党幹部と癒着して情報収集と保身にはしるのではないか、と思う。

■金持ちが安心して金持ちでいられること、法治化、くわえて税制の改善による富の再分配システム、そういうことが「仇富」現象をやわらげ、貧富の格差を縮小し、中国経済の発展につながると思うが、どうだろう。

■といったことを、座談会形式でたらたら話したわけだ。さすがに、共産党一党独裁をやめなきゃダメだ、とまでは言わなかったが、法治化しようと思えば独裁やめなきゃいけないし、私有財産保護と民法の完成は、社会主義の特徴である公有経済との決別を意味するわけだから、環球時報記者も苦笑いしていることだろう。

■一応、非公式座談会、ということなので、産経新聞の名前は出さないで、といっておいた。編集権先方にまかせてあるから、どう脚色されるかわからないし、産経新聞の名前を利用されてもこまる。でも、こんな風に、中国大手新聞の記者と意見交換できる場はうれしい。こちらも、今度は何かのテーマで環球時報記者に発言してほしいものだ。

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「環球時報記者と座談会?」への14件のフィードバック

  1. 福島様、おはようございます。
    中国一の人気新聞から御指名を受けたとのこと、おめでとうございます。
    実のある意見は産経新聞、という認識の結果だと思います。
    中国の金持ちは、金使いが荒いですね。江戸っ子じゃないけど、宵越しの銭は持たないという感じでしょうか。そういえば江戸も、このように言われた頃は火事が多くて、お金を持っていても、どうなるか分からなかったとか。金使いの荒さの裏には、中国の未来に対する不安があるのかも知れないと感じました。
    法治化の件、一文、「共産党ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」を入れれば実現しますよ。でも今と変わらないか。
    福島さんの言ったことが、どう記事に反映されるのか、興味があります。記事になったら、また紹介して下さい。

  2. さすがアナクロな「階級闘争史観」の国ですね(笑)。大いに結構なことです。
    >先方からは、①富人の概念、定義、②中国の富人の特徴、③日本の富人との違い ④自身が会ったことのある富人の描写、⑤庶民の富人に対する不満、恨み(仇富現象)など中国の現状をどうみているか、⑥富人は社会貢献をすべきか⑦中国の富人はどのように発展していくべきか…といった質問が出された。
    で、ナニゲに思わず、『金魂巻』を思い出してしまいました(笑)。
    http://www.amazon.co.jp/dp/448002283X
    日本の金持ちは、つくづくかわいいものです。言論、報道の自由が担保されている日本では、よい意味でも悪い意味でも、羽目を外すことへの抑制がよ~く効いているのだなと、安心してしまいます。
    http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/18c42bb98cd76b1cefd70ad652f0e491

  3. すごい!環球時報って「日本の右翼思想を代表する産経新聞の古森記者」と一面トップで書いてたとこですよね。TBしときます。

  4. 日本だと金持ちでも普段は生活は質素というのは尊敬?されたり、一攫千金で金持ちになって急に金遣いが荒くなると成金とさげすんだりします。中国や韓国は金持ちはとにかくハデに、日本でいう成金のような振る舞いこそ理想で、金持ちだけど普段は質素なんてのが全然評価されないみたいですが、これって儒教にも関係しているのかな
    それにしても、産経は日本の主要紙の中では中国に対して一番毅然としていると思いますが、それでも中国メディアの過激さにくらべれば可愛いもんですが・・・それでもマイナス報道で有名なんですか

  5. 台湾地震で海底ケーブルが損傷受けたのですってね。すぐには復旧できないと思いますが、こんなエントリを拝読すると、そこをナントカ頑張ってくださいと言いたくなりますです。

  6. ■北京:インフルエンザ大流行、日平均5千人超【大紀元日本1月11日】
    http://jp.epochtimes.com/jp/2007/01/html/d66774.html
    「春節」(のシナ民族大移動)を目前にして、この記事が本当であれば、正直すこし脅威に感じます。せめて、今期のワクチンがあたってるのかはずれてるのかあらかじめわかって、心の準備をしておけるよう、“型”を公表してくれればいいのですが…。まあどうせムリか? 日本にもその時期、相当の旅行者が渡航してくるのですがね。渡航禁止は不可能ですので、感染防止まん延防止も不可能、せめて、罹ったときの重篤化をさける工夫(生活態度)を心がけるよう、いまから構えておいたほうがよさそうです。いまのところ嵐の前の静けさかも。
    http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html
    これは、大した感染力はないので気にしたものではありませんが。
    http://www.melma.com/backnumber_45206_3501115/
    これもどうでもいいことですが、こんな数字の嘘っぱちとか…。
    http://www.melma.com/backnumber_45206_3503695/

  7. 日本の場合も社会にどれだけ貢献したかが金持ちへの評価基準だと思いますが、
    素晴らしい製品を世に出すとか、工場を建てて雇用を増やすとかだけで、
    十分に社会貢献していると見なされるのだと思います。
    これが稼いだお金を再投資することに繋がっているのではないでしょうか。
    日本で慈善事業の評価が低いのは再投資にならないためかもしれません。
    中国や朝鮮の場合、昔から散財することが周辺の人々に還元するという意味での
    一種の社会貢献(慈善事業)だったのではないかなと思うことがあります。
    これを再投資型にするには、福島さんの書かれているように、法治化して私有財産権
    を保証することで、社会全体の将来への信頼性を高くするしかないと思います。

  8. To seedsさん
    環球時報、記事かされるのですかね。報道があれば、またお知らせします。

  9. To ニッポニア・ニッポンさん
    >で、ナニゲに思わず、『金魂巻』を思い出してしまいました(笑)。
    >http://www.amazon.co.jp/dp/448002283X
    この本、おもしろそうですね。
    >日本の金持ちは、つくづくかわいいものです。言論、報道の自由が担保されている日本では、よい意味でも悪い意味でも、羽目を外すことへの抑制がよ~く効いているのだなと、安心してしまいます。
    >http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/18c42bb98cd76b1cefd70ad652f0e491
    日本の金持ち、とくに有名人は、あまり、はめをはずすとメディアでバッシングにあっちゃいますからね。かつてのホリエモンさんみたいに。もちろん、擁護するメディアもあるから、バランスはとれるのですが。

  10. To sakuratouさん
    環球時報は、古森記者の大ファンみたいです。
    冗談抜きで、なかなか読者の志向を意識したイイ新聞だと思います。面白いですよ。
    >すごい!環球時報って「日本の右翼思想を代表する産経新聞の古森記者」と一面トップで書いてたとこですよね。TBしときます。

  11. To hiroponさん
    韓国の企業家の発言では、韓国でも成金はさげすまれ、「富人」扱いされないそうです。金持ちらしく、社会貢献するのが重要なポイントらしですね。
    >それにしても、産経は日本の主要紙の中では中国に対して一番毅然としていると思いますが、それでも中国メディアの過激さにくらべれば可愛いもんですが・・・それでもマイナス報道で有名なんですか
    名詞を出すたびに、「ああ、中国のマイナス報道が多い新聞」と誉められてしまうのは困ってしまいます。で、「できるだけ中国の肯定的な記事を書こうと努力しているんですが、事実に沿ってかくと、どうしてもこうなっちゃうんですよねぇ~」といいわけするのですが。

  12. To やまかんむりさん
    ありがとうございます。がんばります!台湾地震の影響は、香港のサーバーを直撃しているみたいで、香港サーバー経由の人たちはいまだメールがまったく受け取れないとか。

  13. To ニッポニア・ニッポンさん
    1日五千人のインフルエンザ感染は、本紙コラム「北京春秋」でも取りあげましたが、今のところ、死者がばんばん出て大変、という感じではなさそうです。でも、春節移動は要注意ですね。

  14. To yigossoさん
    社会貢献というと、中国や韓国では学校をつくるとか、基金をつくるとかのイメージが強いですが、企業としては従業員の福利厚生をよくするとかも、ある意味、社会貢献でと思います。ところで、たんなる金持ちとは違う「セレブリティ」は、米国でも韓国でも社会に対する責任感が問われるみたいです。日本には、べらぼうな金持ちも、セレブもあまりいないので、個人としての金持ち、セレブの社会貢献について、あまり論議されていないかもしれませんね。

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