食の安全学再び:日本政府調査団の説明きいてみる?②

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■春節快楽!みなさま、中国はきょう、新年初一です。昨日夜、中国人はギョーザを食べて年越しを祝っているはずです。そういえば、6日朝、北京に帰る前に「天洋食品」工場にたちよったら、複数の人が爆竹やら、お菓子やら果物やらを持ち込んでいました。工場内には、製造ラインにかかわった若干名の作業員や班長が外に出してもらえず缶詰状態らしいので、きっと工場内で爆竹ならして、ギョーザたべて、新年を祝ったのでしょう。工場内には回収されたギョーザが山のようにあったでしょうから、食べ放題ですね。あ、最後の一行、冗談ですよ。

■さて、6日夜、爆竹響く北京では、日本調査団は今回の訪中調査における最後のブリーフを行いました。会見、ときいていたのですが、カメラ取りは冒頭だけ、あとはブリーフになりました。要点はですね、工場の衛生管理上の問題で偶然農薬が混入した可能性は、小さくなった。可能性はゼロではないが。でも、人為的に何者かが混入したとなると、強制力のない私たちに調査は不可能、警察当局同士の司法協力をまつしかない、ということでありました。

■中国河北省石家荘市の警察当局は、すでに人事管理簿とかギョーザサンプルとか押収しているそうです。中国の警察は、本気で犯人をさがすとなると、早いですよ。ときどき、犯人でない人が無理矢理犯人にされてしまうこともあるみたいですが。(私の服役経験のある友人は、刑務所内で、兄が犯した犯罪によって、兄が外国に高飛びして逮捕できないから、その代わりに逮捕され服役している弟と仲良くなったそうですが、こういうえん罪はけっこうあるようです。中国で弱者に、いいわけはできません)。

■ただ、警察も政治的理由に左右されてしまう国なので、ひょっとしたら、真犯人はすでにヤミに葬られているかもしれません。この最後の2行は、冗談ですからね。え、冗談に聞こえない?冗談ですよ。最近は、いちいち冗談だといわないと、真に受けてクレームつけてくる人もいるので、記者ブロガーはつらいよ。

■というわけで、あまり事件の真相究明の参考にならないかもしれませんが、日本政府調査団の6日夜の記者ブリーフをご紹介しましょう。会見は完全オープンが原則ですが、ブリーフと言われると、逐語アップしていいのか迷います。でも、オンレコだし、国民の税金を使っての調査ですし、関心の高い問題だし、やっぱりほぼ全文アップします。

■春節の爆竹の音とともにブリーフだ
日本政府調査団、できることは全部やった!
でも、真相に近いことはわかりません。

調査団:昨日、国家品質検査検疫総局(質検総局)、河北省検査検疫局を訪れ、きょうは河北省石家荘市の公安局を訪問し意見交換し、午後北京にもどってきて、質検総局と再度意見交換を行いました。基本的に原因究明に関しては日中双方協力してあたっていくことは必要だろう、ということで、これからも協力していきましょうということになったかと思います。これで原因が究明されたわけではありませんので、引き続き、あらゆる可能性を念頭に、今後も調査分析をつづけていく必要があります。(冒頭カメラはここまで)

調査団:公安当局に初めて訪問したので、若干説明します。公安当局からは他の関係機関と同様に、他の機関と協力して調査を行っていくとの発言がありました。そうはいってもですね、捜査の関係があるので、細かい個別の事例についてはお話できないということでした。あまり立ち入った話はできなかったんですけれども、日本の警察当局とは協力してやっていきたい、国際警察ルールにのっとって日本から要請があれば、協力して捜査を進めていきたい、ということは言ってました。

■質疑応答はじめます。

共同:さきほど、中国側の国家品質検査検疫総局(質検総局)が記者向けにブリーフをしたさい、「今回の調査で日中双方は工場の加工から輸出までの過程で異物の混入、または人為的な破壊が行われる可能性は少ないという認識で一致した」と話していたのですが、本当に一致したんですか?
調査団:あの、一致した、ということはないです。工場を見た限りでは、清潔で特段の異常はなかったというだけです。それだけで可能性が全くなくなったとか、そういうことは申し上げたつもりはないです。

共同:生産過程から輸出まで、とはいっていない?
調査団:今回は輸出過程とかぜんぜんみてませんし。
調査団:日中双方がそういうことで一致したということは、最初からふくめてございません。工場の視察をつうじて、異物混入の可能性が少ない、ということで一致したということはありません。見た範囲では、印象としてきれいな工場だなあ、ということはいいましたが、一致したことはない。中国側が問題がなかった、というなら、どういう調査に基づいてそういうことが言えるのか、というところまで、調査団の方からいろんな資料を要求しまして、これから出てくる資料なども含めて、そういうものをすべて判断したうえでさらに必要があればこちらからまた、質問して確認していかなければならないので、今の時点で日本側がそういうことはありえない。

共同:もう一点。日中双方は食品安全メカニズムを構築することで話し合いをしている、といっていますが、これは本当ですか?
調査団:先方から、そういうものをつくれたらいい、という話があったのは事実ですが。それについては、なかなか、難しい問題とか技術的な問題があって。
調査団:補足します。日本政府としては食品安全を守るということについては非常に重要な課題で、中国側に対してはいろいろな場面でこれまでも申し入れを行ってきました。日本のポジティブリストがたぶん、きっかけになっているんですけども、いろいろな場面で協力のメカニズムをつくりたい、といってきて、これまで農林水産省、経済産業省、厚生労働省などが質検総局との間で覚え書きのようなものをつくってきました。その延長上で、そういったものを含めながら、もう少しこういった問題に対応できるメカニズムを作りたい、という中国側の要請が今回も繰り返されたということです。日本側としては、今ある既存の枠組みをどうするかとか、新たな枠組みを作る必要があるのか、何をするのか、今後さらにつめていかなければならない、という段階だと思います。

朝日:質検総局副総局長との会談の中で、先方から、人為的な事件であり、極端な分子が日中友好の発展をみたくない、そういう人たちがやったのではないか、という見方を示されていましたが、日本側としては、どういう見解を?
調査団:日本側としては、まだすべての可能性が排除できない、という立場で特段、どこかに焦点が絞られたとか、そういう認識にはたっていない、とのべました。可能性としては、あるんですが、そこに絞られたような考え方はありません。
まだまだ、あらゆる可能性を調査し続けていかなければならない、と申しました。
調査団:補足します。本件について、日本側からの発言もありました。中国側の発言趣旨は、工場内の食品安全の調査の結果からみて、異物混入の可能性は非常に小さい、と。そうすると、それ以外の可能性が、大きくなっているのではないか、と考えている。そういうふうなことです。ですが、我々としては引き続き、ひとつの可能性として調査を続けていく、としました。

朝日:今の発言なんですが、中国側はなんらかの根拠、情報があっていっているんでしょうか。あくまでも、想像で話をしているのか、その辺の感触は?
調査団:われわれが話した中では、具体的な根拠はしめされていません。彼らは自分たちの調査に基づいて、そういう可能性がたかいんじゃないか、という認識をもっている、という感じでした。
調査団:たぶんですね、彼らの所管の範囲の中で、食の安全という面で調査をしてきて、そういう範囲内ではなんら異常は見つかっていないし、異物混入の可能性は低いでしょう、といいたいのだと思います。

日本テレ:中日の発展をみたくない少数分子の犯行、とあえてそういった背景は?
調査団:まあ、日中関係の流れからみると、中国側が意図をもって、日中関係を悪くしたいと思うことは可能性として低いと思いますから、発言はなんらかの意図をもってやったとは考えにくいと思います。メディアの報道とかに引きずられて言ったのか、なんら意図なく言ったのか、よくわかりませんが。深い意図はないと思う。

福島(産経):今回の協議の中で、この事件が日中関係にどういった影響を与えるか、たとえば、事件が長引けばどういった影響を与えるか、事件が迷宮入りになったら、どういった影響をあたえるか、そういうことに話し合われましたか。対策など?
調査団:特段、そのへんを強調して話し合ったことはありません。話し合いの中で、こういうことが起こると経済に影響が及ぶ、といったことをぽろっとおっしゃったことはありましたが。それについてつっこんだ議論をしたことはありません。

共同:きょうは公安当局とお会いになったということですが、中国の検疫当局と公安当局の協力はうまくいっているんでしょうか。中国は非常に縦割りだと、我々は思っているんですが、そういう事件で、部門同士が協調しあっているという状況はうかがえましたか。
調査団:きのう、河北省副秘書長とあったとき、こんな発言がありました。本件について、「省政府も非常に重視しており、ただちに関連の機関に対して明確な指示をだした。関連機関とは質検局と農業庁と国家資産管理委員会、公安当局などです。公安も含めて省長の指示のもとにいろんな調査をやっているということです。ひとつのチームとして調査をやっているのではないか、ということです」

共同:調査の方向について、検疫当局が調査をしきるのか、公安当局がしきるのか、そのへんはきいてますか?
調査団:質検総局の立場としては、自分たちはやることはやったという認識なのだと思います。公安当局が着手すべき問題点の方が可能性としては大きい、というような発言もございました。

朝日:きょうの公安訪問時に、事情聴取をどのくらいしているとか、そういう話はしてませんか?
調査団:公安の方からは具体的に話はきいてませんが、工場視察時に、かなりのものが警察に押収されている、とききました。本気で捜査しているということは事実かと思います。

朝日:中国側のいいぶんをきいていますと、工場はきれいだ、だから中国側に問題はない、という論理の飛躍を感じるのですが、工場内の話だけでなくて、それ以外の話はしてますか?
調査団:なかなか、輸送のところまでは、具体的に話がおよんでいません。先方は自分たちで調べたところ、特段問題はなかった。シールされたコンテナがそのまま日本にいくので、そのあたりは問題ないだろう、という説明でした。
調査団:補足します。きのう、程方・河北省検査検疫局長からの話では、原料仕入れから輸送までの記録が工場にあり、10月20日の商品については輸送したドライバーについても、聞き取り調査をしたということです。このリポートについては外交ルートで提供するとのことです。

福島:日本側としては、あらゆる可能性があるということですが、工場の中で昼ご飯を食べるときはどうするか、とか国慶節などの休みのときの給料はどうなっているのか、とかそいう話はきかれていますか?ちょっと興味があるんで。
あと、テレビニュースでみたんですけど、過去に工場の蒸し器の中に女性が閉じこめられて亡くなったとか、そいう事件があったとか、工場にまつわるトラブルの話は出ませんでしたか。
調査団:昼を食べるときは、どうするか。出るときはいいんですが、入るときはきめられた入室の手順を守ります。入り口はひとつしかありませんから、それ以外の手段で工場に入ることはできません。
調査団:公安関係の方とお話したとき、この天洋の工場では、この過去数年の間にトラブルがあったかということはお聞きしましたが、即座に何もない、とのことでした。
福島:トイレのときもそういう手順を踏むんですよね。ものを持ち込むのもありえない、ということですね。
調査団:トイレの使用手順というのも決まりがあります。製造室から出てトイレにいくと、手を洗い、ローラがけなど、一連のことをします。また手洗い場を通過するときに、チェックする人がいて、一名一名、チェックをして入室します。給料のことについてはきいてません。

朝日:川嶋団長はこられるとき、現地にいってみなければ分からない、とおっしゃっていましたが、現地にきて、何か前進があったとお考えですか?見たところ、問題はないということですが、現時点で問題の発生源が工場でない可能性、というのは深まったのですか?
調査団:今までは現地にいかなくて、メディアで情報をえていたわけで、実際に現地にいって話をきいた、ということで認識は深かまったということはいえるかと思います。ただ、すぐに把握できたかというと、やはりいろんなデータをもらって今後しらべてみないと、ということかと思います。可能性がしぼられたか、ということですが、確かに工場は、それなりに日本の基準にも従っていることは、見た目には言えると思いますので、そういう意味では、小さくなったか、ということは言えるかと思います。が、どの程度、可能性が小さくなったかというと、程度の問題で、いままで90%だったのが20%になったとか、それだけ大きく可能性が減ったという印象は、私は個人的には持っていません。

記者(どこだっけ?):今の可能性が小さくなった、というのは衛生管理上で異物が混入する、可能性が小さくなった、ということですね。
調査団:あくまで衛生管理上の観点で、それなりの施設であるという確認ができたということですけれども。ものが乱雑なっていて、どうしようもないところではない、ということは確認できた、ということです。

TBS:どのあたりのデータ、情報に関心をもって、提供を求めていかれるのですか。きょうの質検総局との会議後の中国側ブリーフでも、やるべきことはやった、春節は休むぞ、というのがありありと感じたのですが、今後しばらくの間、単にデータを持ち帰って分析するのか、今後の見通しを。
調査団:まだ事態も流動的で、日々変化しているので、今の段階ではっきり申し上げることは難しいのですが、原因究明にあたっては、事実に基づいて証拠から判断しなければならないので、やはり、そうだろう、というのではなく、データからみて確認する作業は必要になってくる。ただ、日々いろんな新しい情報がはいってきますので、再度また中国にいくこともありうるし、それだけですむ問題ではないんじゃないかな、という印象はもっています。(提供を求めたデータは)衛生管理の関係では、原材料が搬入され生産され出荷されるまでのプロセス、どういう形で処理されたのかがわかるデータが中心になると思います。

「食の安全学再び:日本政府調査団の説明きいてみる?②」への3件のフィードバック

  1. 中国側は「~可能性は少ないという認識で一致した」とか相変わらず事実と違うことを平気で発言しますね。
    それに蒸し器で亡くなった従業員がいたことも否定してますし。
    日中並べて会見すれば面白いけど。
    あ、面白い、というのは失言ですよ、失言。

  2. こんにちは。
    まぁ、事件とはあまり関係ないでしょうが、
    >基本的に原因究明に関しては日中双方協力してあたっていくことは必要だろう、ということで、これからも協力していきましょうということになったかと思います。<
    こういう持って回ったような回りくどい役人言葉は何とかならないものでしょうかね。
    それともそれほど曖昧な、合意も得られないような会合だったのでしょうかね?
    個人的な感想では、この調査団の発言者には、真剣に解決しようと言う意気込みが感じられません。

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