中国「萌え」アートの台頭?

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  ■株よりも確実に儲かる、と友人らに言われて今、中国の若手現代美術を物色中だ。北京の現代美術作家のアトリエが集中する大山子芸術区ではいつも新人の展覧会が何かしら開かれており、よく足を運ぶ。ここにギャラリーを構える東京画廊(本社東京)によれば、1億円の値がつく作家はすでに中国で10人いるとか。値段がここ数年で倍になるなど、お買い得作家も100人はいる、らしい。
 

 ■「経済高度成長期には美術市場が拡大する」という原則は中国でも当てはまるらしく、中国現代美術市場は確かにかつての日本の絵画バブルに似た盛況を呈している。中央美術学院を卒業したての若者の絵や立体を買っておくと、10年後にはン倍になる、など言われ、芸術に縁遠そうな炭坑成金まで絵を買うご時世だ。

 ■中国の金持ちからみると、上海や深センの株式市場はがたがただし、不動産市場は政府の行政指導で圧力がかかってこれまでほど大きなのびはない。となると、残る投機先は美術市場、というわけだ。現代美術なら骨董市場ほど偽物に悩まされることもない。

 ■というわけで、私も、未来の巨匠を発掘するつもりで、日本や中国のキュレーターやコレクターに意見を聞きつつ、自分の気に入るような作品を探し始めている。そこで気がついたのは、なんか日本のサブカルチャーに影響を受けたような作品がけっこう多い、ということ。五月に、東京画廊が「ジャパニメーション展」という、日本サブカル風味の作品を集めた展覧会を開いたほか、上海でも一月に「虚擬@愛」という同様のテイストのかなり大規模な展覧会を開いて好評を博していた。

 

 

 ■私が結構すきな画家、劉野さん(44)もそんなひとりに数えられる。この人の絵は、売れっ子の日本人画家、奈良美智さんと雰囲気が似ている。マンガチックにデフォルメされた少女のモチーフが多いが、奈良さんの絵のように「可愛いけれど恐い」感じ。
 彼のアトリエにうかがって絵をよーく見せてもらったのだが、たしかに「かわいいだけでない陰影」が日本的。彼の絵には、ブルーナーの絵本のウサギのキャラクター「ミッフィー」が描き込まれることがあるのだが、このミッフィーが、可愛くも不気味なのだ。これって日本の女子高生らが好む「カワキモ(可愛いが気持ち悪い)」じゃない?
 と、劉さんにそう言うと、「奈良美智とは友達だよ。二人ともベルリンで絵を学んだ経験があるから、似たところもあるだろう」。ちなみに日本での代理店は奈良さんと同じTOMIO KOYAMAギャラリー。

 

(劉野さんと作品)

 

 ■話しているうちに、アトリエにおもしろいものを見つけた。片隅の棚に、ずらりと美少女フィギュア(人形)!
 劉さん、ひょっとしてオタクですか?と、内心思いつつ眺めていると、「私がこういうモノを好きなことを友達が知っていて、くれるんだよ」。さらに「自分の今の画風に影響を与えた?人のアーティストの上位に、アニメ映画監督の宮崎駿が入る」とアニメ好きであることも明かしてくれた。
 劉野はオタクだった、と言ってしまうと、語弊をまねきそうだが、その画風に多分に日本のサブカルチャー風味が入りこんでいるのは間違いない。

 

(劉野さんのフィギュアコレクション!)

 

 「いや、宮崎のアニメはもう普遍的でグローバル。日本、中国といった区別などなく、黒澤明の映画みたいに、国際的芸術の創造に影響を与える存在だと思うよ」と本人はいっていたが、私はやはり彼の作品の中に日本風の「萌え」を感じてしまったのだ。

 

(この項つづく)
 

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「中国「萌え」アートの台頭?」への2件のフィードバック

  1. >なんか日本のサブカルチャーに影響を受けたような作品がけっこう多い
     昔の日本人は何でも中国の真似をしたものだが、今の中国人は日本のサブカルチャーまで真似るのか。とてもアジアの盟主とは言えないね。

  2. 今の中国人は、日本のまねをしたがります。化粧、ファッションは日本がお手本。ベストセラーは村上春樹!

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