■更新が滞り、申し訳ございません。先週はウイルスでパニックだったのだ。今北京で、コンピューターウイルスが猛威をふるっている。我が中国総局でも私以外の記者2人のパソコンがダウン。特定のサイトにアクセスしたとか、メールを受け取ったというわけではなく、ブロードバンドに接続したとたん、十も二十もウイルスがダーっと流れ込んでくる。
■一応、ウイルス消毒ソフトをいれているが、それでも防御できない量。そうこうしているうちに、インストールしていたいろんなファイルが画面かr忽然と消えていく。これって、消毒ソフトが感染ファイルを自動的に削除したのか、それともウイルスがファイルを食うのか。パソコン音痴の私には、しくみがわからずうろたえるだけ。
■で、きょうやっと復旧。本社のパソコン室に調べてもらったところ、TOR?Jなんとか、という3種類のウイルスが入り込み、約800のファイルに感染していたとか。中国には、SARSだとか、狂犬病とか、破傷風菌とにかく恐ろしいウイルスや病原菌が、実はものすごく普通に普遍的に存在している。これはサイバー世界でも同じ。
■で、なんでこんなウイルスが大量発生したのか。うちの記者が全員、被害にあったので、産経の記者が狙いうちされたのか、という疑いも(他社の人からの被害は聞いていない)。ウイルス消毒ソフトの開発会社が、自分の社の新製品を売るために、意図的にウイルスをばらまいた、というまことしやかな噂もある。実際、地元のパソコン屋にいくと、このソフトを入れれば一発解決、とものすごくしつこく、新型ウイルス消毒ソフトをすすめられる。なにがあってもおかしかくない、陰謀うずまく北京である。
■というわけで、今後、中国に仕事に来る方に、パソコン、インターネットに関しては最低限、これだけは、心の準備をしてほしい、という点をアドバイス。(パソコン音痴の私がいうのもなんだが)
①プロキシサーバーやトールの利用の仕方をマスターしておく。あるいは、ネット検閲を突破できるソフトをダウンロードしておく。中国のネット検閲は、思っている以上に厳しい。とくにIPアドレス別の、アクセス禁止も行われているから、自分のパソコンだけ、特定のページにアクセスできないなどの問題に直面する。現にわたしは自分のブログに普通にはアクセスできず、書き込みに苦労した時期があった。
②中国国内にサーバーのあるメールは、メール検閲の対象で、内容によっては送れないこと、受け取れないことがある。外国のメール・サーバーを利用すると、中国で受け取れないメールも、ウェブメールで内容を確認することができるので、メールはやはり、外国の有料メールサーバー、しかもまだ中国市場に進出してない会社のものがいい。
③ウイルス対策に万全を期しておく。ウイルス消毒ソフトを毎日更新しても、感染する可能性はある。自力で手動でウイルスを駆除したり、ファイルを削除したり、復旧したりできる知識をもつことが望ましい。あるいは、真夜中でも、相談にのってくれるパソコンに詳しい親切な友人をつかまえておく。
④日系企業会社あいてのパソコン・コンサルタント会社みたいなのがあるが、はっきりいってぼったくりで、社員の態度は悪いし、ライバル会社がいないからか、土日は休みという大名商売。ちょっとした故障、ウイルス駆除なら、中国地場のパソコンショップにたのめば、手軽に安くで治してくれる。しかし、あずかりの修理の場合、情報もれやパソコンの部品やソフトの勝手な入れ替えに注意する必要がある。また、自社の消毒ソフトなどの売り込みなどが激しい。(ほんとうはそんなソフトがなくても修理できるのに)。やっぱり自力でなおすのが一番なのだ。まあ、未開の地にいったら、自分で抗生物質の注射ぐらい打てるようにならないとダメ、というのと似ている。
⑤パソコンで、海賊版のDVDやCDを使うと、それでウイルスに感染することがある。正規版の売り場でどうどうと売られている海賊版もあるから、いずれにしてもパソコンでDVD、CDを使うのはやめた方がいい。
⑥民族活動、民主化活動、反日愛国主義、ハッカー関係のサイト、およびアダルトサイトにアクセスするとウイルスに感染する可能性が高い。日本よりずっと高い。パソコンを開くたびに義勇行進曲が自動的に流れ、「南京大虐殺犠牲者30万人」と書かれた画面が現れるという、うっとおしいウイルスに感染したことがあった。
■中国では、金盾工程とよばれるネット検閲、アクセス禁止システムのほか、20万人以上のネチズンブラックリスト、サイバーポリス、メール検閲、ブログ完全登録制度などさまざまなかたちでインターネット統制、監視がしかれている。当局がそのきになれば、パソコンの中は丸見えだし、パソコンを自在にダウンさせたりすることもできるとか。
■その一方で、(自称)ハッカーもやたら多い。かれらは特定のサイトで、どこそこのHPを攻撃したとか、誰それにウイルスを送り込んでやったとかハッキングのしかたなど報告しあい、無法の限りをつくしている。また違法ダウンロードに著作権無視、パスワードや銀行のキャッシュカード情報の抜き取り、盗品のネット売買、ネット売春など、ネット犯罪もとっても多い。
■つまり、中国のネット環境は官憲の横暴(当局のネット統制)と、ならず者(ハッカーやウイルスばらまき野郎)が跋扈する「江湖」(中国語でアウトロー社会の意)なのだ。秩序の国、日本からやってきて、このネット江湖で生き抜き、なおかつ仕事をするのは、とっても大変なのである。というわけで、中国のネットを使ってお仕事をされる方、されている方、お互い、官憲におもねらず、悪にそまらず、がんばっていきましょう。
>「南京大虐殺犠牲者30万人」と書かれた画面が
すいません。これはちょっと感染してみたいかも(笑)
実に貴重な報告だと思います。
ネットにつないだとたんにウィルスに感染するなんて。それも記者全員同時なんて想像できません。イザの応答が遅い度、すわっサーバ攻撃か?と心配してます。
PCもお身体もお大事に。
福島香織様:貴重な中国のnet事情レポート、面白く拝見しました。でもご当人は大変な目に合われたわけで、同情してしまいます。
福島さん。
中国ネットユーザーとしては切実な問題ですね。私もブラックリストに入っているのでしょうか。この春「金盾工程」導入の際に、中国電信にクレームを入れたら「日中間の問題」だと一蹴されました。日本の経団連もこういうところにクレームをつけるべきだと思うのですが…。
うわーすごいですね。そんなときどうして良いやらわからんな。全く無茶苦茶やな。あらゆるところでそういう感じの国なんでしょうか。おそろしや。
ところで、sakurtouさん、「金盾工程」って、なんですか。
なるほど、予防注射も打たずに毒蛇と未知の病原体だらけのジャングルに、半そで+半ズボンにサンダル履きでは行ってはダメですよと、貴重な経験談をありがとうございます。ジャングルだから“金”や“ダイヤモンド”が転がってるかも知れないと出かける人が多いのですね。オッチャンが引っかかる小姐の罠も、ある種のウィルスなんでしょうね。
お絵かきじいさんさま。
>■中国では、金盾工程とよばれるネット検閲、アクセス禁止システムほか、
一種の全中国イントラネットでも言いましょうか、海外との出入り口のところでアク禁したり、検閲したりするものです。この春バージョンアップの際、海外のサーバーのメールが受信できないとか、かなりの影響がでました。
sakuratouさま、
有り難うございました!
要するに検閲のシステムのことですね。なかなかっこういい名前を付けるものですね!!
福島様、こんにちは。
今の時代はPCが使えなくなると仕事を進める上でも致命的な影響を受けてしまいます。大変だったんですね~
私も先月はウイルスではないのですがPCがいかれてしまって、仕方なく新しいものを購入したのですが環境全体を復旧するのに苦労しました。
それにしても中国という国はやはり異質な国だと思います。ここまで自由な活動を規制してしまっては、いくら日本のアニメはダメだ、中国製のコンテンツを充実させると力んでも画餅になってしまうのではないかと思います。
トリCさま:じっさいに感染するとうっとおしいですよ。(これをウイルスというのか、どうかしりませんが。)結局、これはどうしても復旧できなくて、パソコンの中味をぜんぶ入れ替えました。
やまかんむり さま:私もイザにつながらないとき、中国のしわざ、と疑ってかかるのがくせになりました。ほんとうは、アクセスが集中したためだったらしい。
aqua2020 さま:ありがとうございます。きょうも、ウイルスがたくさんやってきましたが、ソフトが全部防御してくれました。
sakuratou さま:日中間の問題って、むちゃくちゃな言い分ですね。
お絵かきじいさん さま:あと恐いのが、突然、画面に「外部から攻撃をうけました」と現れるんです。これって、誰かが私のパソコンの中をのぞこうとしたのを防御してセキュリティシステムが警告を発しているそうです。日本ではそんな経験ありませんでしたから、中国ネット世界には空き巣ものぞきも、日本より多いみたいです。おそろしや~。
香織姉さん 何時もロムしてます。初コメントです。
>インストールしていたいろんなファイルが画面が忽然と消えていく
>TOR Jなんとか、という3種類のウイルスが入り込み、約800のファイルに感染していた
これって読者に警告を促す冗談ですよね。天下の産経新聞北京総支局の記者が使う「个人??」ってそんなに無防備なはずないし。僕はネットのプロではないけれど、ウィルス対抗ソフトは最高のものを、ルーターも出来るだけセキュリティーの高い物を、ブラウザーも複数種類入れてTPOに合わせて使います。尚且つセキュリティーは高めに設定。ネット接続用のパソコンのHDDには重要なデータは保存しません。
中国のネット状況は知らないので、あくまで推測ですが、「金盾プロジェクト」の現状下では当然ネット版「私服警官」が総局の全てのネット経由の遣り取りをリアルタイムで監視しているはずで、いくら「変装」してもIPアドレスが判っているので、当局にはアクセスの履歴が丸見えでしょう。メールサーバーも丸見えかも。因みに「消毒」ってのは事後処理なので、やっぱり「ワクチン」ほうが正確でしょう。まあ中共は魑魅魍魎の隠れ家なので、当然ネット界も同様。当局が故意に創ったのウィルスやスパムやポップアップなんかも山ほど棲息してるんですかね。あな、恐ろしや。
<お絵かきじいさん>へ
金貨極上ならあり難いですが、金盾工程(Golden Shield Project)は一寸怖いです。以下参照を
ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E7%9B%BE
jp.epochtimes.com/jp/2006/02/html/d25160.html
chinafile.blog66.fc2.com/blog-entry-21.html
13の“金”を頭文字とした情報化プロジェクトのうちの一つが金盾プロジェクトのようです。
en.wikipedia.org/wiki/Internet_censorship_in_mainland_China
nhac-toyotaさま:ウイルスを手動で駆除できないようなパソコン音痴は、中国のネットジャングルをゆく資格なし、ですか~。そういえば、サハララリーに参加するようなドライバーさんも、えんこした車を自分で修理するのは当たり前らしいですね。サバイバル能力は必要です。
showgee さま:私、ひょっとして、またうっかり言ってはいけないことを、言ってしまったのかも。ああ、でも手遅れですね。だから私のことを、産経のパソコンのセキュリティレベルの低さを暴露した、と機密漏洩罪に問う前に、今後のためにも、記者パソコンのウイルス対策は改善してほしいです。「消毒」は、中国の「殺毒」の和訳がとっさに思い浮かばなくて。そうだった、日本語ではワクチンというんだった。どうして中国語で「疫苗」といわないのかなあ。うーん。
ところで、ほんとうに、デスクトップにおいていた無線ソフトのショートカットアイコンが忽然ときえて、ファイルに保存しておいた全く関係ない資料写真に置き換わるんです。びっくりしました。どういう仕組みになっているんでしょう。
ご苦労さまです。
無線LANですか? 有線にしといたほうが、無線を通じて入られる心配はないですが。
金盾プロジェクトの主体は欧米の会社などですが、まあ、そういう企業を通じて米政府などは中国の情報を入手してるんでしょうねえ。
セキュリティにはやはり専門要員がいるんじゃないでしょうか。
sakuratou さま:金盾工程の解説ありがとうございます。
小龍景光 さま:私のパソコンなんて、たいしたものは入ってませんが、完全に中味を入れ替えてしまうと、ほんとうに大変ですよね。
koku さま:監視社会の中国にいて、もうセキュリティもくそもないかもしれませんね。パソコンにはあまり、見られてこまるもの、機密のたぐいは入れておかない、というのが一番かしこいのかもしれません。
福島様
中国怖いなあという感じになる、気弱な自分は中国に住めなさそうな…。
よって福島様期待してます。
香織姉さんへ 再びお邪魔します。
>TOR Jなんとか、という3種類のウイルスが入り込み
Trojan Horse(トロイの木馬)と呼ばれる代表的なウィルスですね。下記で”Trojan”で検索すると何と数百の亜種が存在します。数年前はこんなに多く無かったのに。何たる繁殖(適応)力。
http://www.symantec.com/region/jp/avcenter/vinfodb.html#threat_list
下記のwikiの英語版の説明が一番詳しいです。最近はWEB閲覧だけ(FlashやJava)で罹患するものもあるようです。くわばら、くわばら。
en.wikipedia.org/wiki/Trojan_horse_%28computing%29
>①プロキシサーバーやトールの利用の仕方をマスターしておく ってご自分でも説明されているので、多分Proxy Server(代理サーバー)を経由してNetにアクセスされていると思います。そうなら下記のサイトでご自分の本来の「ユーザー情報=IPアドレスほか」が表示されないはずです。
http://www.cybersyndrome.net/evc.html
また、トール(The Onion Router)の場合は自分のものでない任意のIPアドレス情報が表示されるはずです。いづれの場合もフィルターを余分に掛けますので当然アクセススピードは多少犠牲になります。
最後に無線LANは便利ですが、当然無線電波がある範囲まで飛び交うので、セキュリティー設定に細心の注意を払わないと危険です。オフィスビル内でファイル共有設定などしていればなお更です。
再三同様な事が起こるようであれば、本社のパソコン室にネット環境の再導入(構築)をしてもらった方がいいかもしれません。プロキシサーバー(もし利用していれば)の残存キャッシュあたりも悪さに関係しているかも。中国って汚染されているのは河川と工場周辺土壌だけかと思ったら、ネット網もなんですね。困ったもんです。こんなトラブルに負けずにユニークな観点の記事を発信してください。それが貴女の仕事です。待ってますぞ。
福島様
「サファリラリー」、誠に適切な比喩ですね。セキュリティーの専門家も最初から専門家ではないと思います。対抗する過程でその道の達人になれるわけで。ラリーのようにサポートカーとスタッフを用意できる状況ではないでしょうから、情報収集して“支那ネットサバイバルにはコレとコレ!”という最小限のツールを持参するのも、支那出張者の責任なんでしょうかねぇ。これだけでビジネスになるような気もしますが。
以前『ぺきん日記(pandanokuniさん)』さんのブログで知ったのですが、金盾工程に使用されているシステムはアメリカのメーカーが売ったものだそうですね。
ハイテクシステムですから当然米国政府の輸出許可を得た上でのものだと思います。
産経でこのあたりのバックグラウンドを取材されたこと有りますか? “国益のためなら何でも有り”の二枚舌、三枚舌を注意深くウォッチしておかねば、気が付いたら日本だけ置いてけぼり、なんてことになりかねません。
ネット売春ってなんですか?
風俗嬢の広告サイトなら日本にもありますが?
たんに広告とは違うのですか?
石光真清が『城下の人』以下四部作で描いた中国社会の胡散臭さ、うっかりしてると人の命を平気で取りに来る抜け目なさは何にも変ってないんですね。それが今やインターネットの世界にまで広がってるということかな。