■テポドン2号、発射するのだろうか。ミサイルというものは燃料注入してしまうと、ちょっとやそっとでは中止できないらしい。瀬戸際戦略かしらないが、自分で自分を追いつめているようにみえる。なにより、これまで陰なり日向なり、北朝鮮をかばい(ときには恫喝もして)国際社会とのパイプ役になろうと努力していた中国のメンツ、つぶしては、相当まずいんじゃないか。
■だから「北朝鮮のぼけ、かす、TMD(ターマーダの略、中国語特有のののしり言葉)!」と内心叫んでいる中国人は多いのでは、と思って、またまた、インターネットの掲示板を探ってみた。
ネットの掲示板の書き込みはもちろん、世論を代表するものではないが、日本の2チャンネルよりも、数倍、あるいは数十倍は中国当局者や既存メディアに対する影響力があるので、やはり、なにかイベントがあるたびのぞいてしまう。
■すると意外に、北朝鮮擁護論が多い!
「ポスト80年代(の戦争、闘争を知らない世代)に対し、私は深く遺憾に思う。艱難辛苦の月日を知らず、風霜の歳月を経験せず、政治的に極端に無知で、皮相な政治的観念の欺瞞のなかで、ただケンタッキーとマクドナルドだけ知っている世代よ。
もしミサイルがなければ、米国のミサイルが朝鮮の領土におちるのだよ。
もしミサイルがなければ、米国の鉄の軍靴が鴨緑江を超えるのだよ。
もしミサイルがなければ、中国もまだ、困難な時代に暮らしていかもしれない。
もしミサイルがなければ、我々の国家はもっと早くに崩壊していたかもしれない」
「北朝鮮同志、えらいぞ!中国をモデルに学んで、気骨を持って堂々と経済建設をすれば、20年後には中国を越え、30年後には日本を超え、40年後には米国を超えるのだ。米国の鼻息の下で調子にのる小日本など、まねしてはいけない。中国だって、40年まえにはなにはなくとも、ズボンをはかずとも核兵器を造ったのだ。で、今のように意気軒昂と世界民族の林の中で屹立しているわけだ。 朝鮮同志を支持するぞ。朝鮮人民軍に敬礼」。
■そうか、今の北朝鮮のやり方って、40年前の中国とまったく同じなのだ。北朝鮮の悪あがきに見えるこんな行動も中国の愛国者からみれば、昔の自分を見る思いで、応援したくなるらしい。
中国も大躍進で2、3000万人の餓死者を出そうが、国内がどんなに荒廃しようが、まず核抑止力をもつことに最大の国力を注いできた。最初の原爆実験を行う年の前年の1963年、ときの陳毅外相はこういっている。「中国はたとえズボンをはかなくとも核兵器を製造するだろう」。
で、結果としては、核をもっていたからこそ、ソ連に屈することなく、米国と国交正常化でき、国際社会の仲間入りを果たし、今では六カ国協議でホストを華々しくつとめ、国際社会からそれなりに一目おかれる大中国の地位に到達したのである。核ミサイルをもっていなかった東欧の国々が、ソ連にどのように牛耳られてきたかをみれば、その判断は正しかったのだ。
■北朝鮮が偉大な兄貴に倣って、今の瀬戸際戦略にでているのはわかったが、やはり今の時代にあっていないと思う。ちなみに、日本は、中国が貧困に耐え、歯を食いしばってミサイル開発に没頭している間、世界で一番すぐれた新幹線をつくり、五輪を開催し、万博を開催し、昭和イザナミ景気を満喫し、経済大国となり、あちこちODAしまくり、国際社会の地位を築いた。確かに、米国の鼻息の下で調子づいているように見られるかもしれない。しかし、石油資源もなく、食料自給もできない島国としては、そこそこのバランス感覚ではないか。北朝鮮も、日本を見習って腹をくくって、中国の鼻息の下で踊る覚悟でもあれば、もうちょっとうまく体制を維持したまま、ソフトランディングできるかもしれないというのに。
■そうそう、ネット掲示板では、北朝鮮への応援書き込みのほかに、こういうのもあった。
「朝鮮は今、地球を一周するミサイルを研究開発中。いずれ、朝鮮自身に着弾する」
興味深く読みました。北が中国に倣ったのなら,南の大統領の大言壮語は,60年前の日本に倣ったのかも知れません。
そうですか、ネットに出る言説には偏りはありましょうし、それがプロパガンダや教育に影響されているであろうことはあくとして、中華人民共和国では一般人にもそのように北朝鮮に対するシンパシーが存在しているのですね。
それは中国社会に暮らす人には常識の類なのでしょうけれど、普通の日本人にとっては通常のメディアからは得られない情報です。
たいへん良い記事、ありがとうございました。
ネットだけでは、北朝鮮へのシンパシーが本物なのか実はよく分かりません。中国当局が北朝鮮をいまいましく思っているのは確かなので、ひょっとすると中国のいやがることを堂々とする北朝鮮にシンパシーを感じているのかも、と思ったり。
福島香織さん
産経NetViewにて お名前を拝見しておりました(..)
>TMD
kwskと同じ表現方法だお(^ω^) ・・・(^-^;
この記事、非常に面白かったです! 確かに「日本」モデルも可能なんでしょうが やはり手っ取り早いのは「中国」モデルという事なんでしょうね…
>「朝鮮は今、地球を一周するミサイルを研究開発中。いずれ、朝鮮自身に着弾する」
おー 民度の高い発言ですね(^-^)
丹東の抗美戦争博物館を見学して思ったのですが、一緒にアメリカと戦い、血を流したという歴史は重いものがあるのでしょうね。今の北朝鮮にノスタルジアを感じる中国人は多いと思いますよ。
hiroさま:面白く読んで頂いたとのこと、うれしいです。
MAO@マチともの語りさま:やはり、血で固めた友誼とは重いのでしょうか。でも、このまま六カ国協議が再開しないと、中国外交史上の汚点として残りそうです。
福島さん
中国から見た北朝鮮というのはどのようなものなのか、もっと現地からのレポートをお願いします。朝鮮戦争で毛沢東が息子を喪わなかったら、その後の歴史も変わっていたかもしれませんね。アメリカと戦ったという記憶は今どのようなかたちで中国の人々の記憶の中に残っているのか。とても気になります。
MAO@マチともの語りさま:
中国からみた朝鮮戦争というのは、取材しがいのあるテーマだと思います。少々時間をください。
アメリカから朝鮮戦争を描いた映画が「MASH」ですよね。かなり苛烈な戦争だったようですが、日本ではあまり内実が知られていない。
朝鮮戦争を描いた中国映画特集なんてどうでしょうか?
MAO@マチともの語りさま:
「M*A*S*H」、まあ懐かしい。朝鮮戦争の野戦病院チームの話だったですよね。中国では最近も朝鮮戦争50周年記念で毛岸英を主人公にした感動巨編映画とか創っていたと思います。朝鮮戦争を描いた中国映画、けっこうありますよね。一度よく研究してみます。
>毛岸英を主人公にした感動巨編映画
これもう公開されたのでしょうか?
DVD入手してみてみたいのでタイトルがわかれば教えてください。彭徳海がどう描かれているか興味があります。
MAO@マチともの語りさま:
すみません、前回の記述、勘違いでした。毛岸英戦没55周年を記念した感動巨編映画「風雨上海灘」でした。朝鮮戦争の映画ではなく毛岸英の子供のころの物語のようです。
ちなみに、朝鮮戦争を舞台にした感動映画といえば「毛沢東とその息子」(1991年)が結構有名ですね、見てませんが、泣けて泣けて仕方ない映画とは聞いています。中国の朝鮮映画リストをみてたら、ざっと30本ぐらいありました。